アドルフ (岩波文庫 赤 525-1)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003252512

作品紹介・あらすじ

これをしも恋愛小説というべきであろうか。発端の1章を別とすれば続く2章だけが恋と誘惑にあてられ、残る7章はすべて男が恋を獲たあとの倦怠と、断とうとして断てぬ恋のくびきの下でのもがきを描いている。いわば恋愛という「人生の花」の花弁の一つ一つを引きむしり、精細に解剖しようというのだ。近代心理小説の先駆をなす作。

感想・レビュー・書評

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  • 巷に溢れる恋愛物語は、恋愛の最も美味しい部分だけを、さらに美化した形で描いていて、それによって読者は決して現実のものとして現れない恋そのものに恋するようになりがちである。一方この本はそれらとは真逆で、そういった人間が実際に経験する現実の恋愛について描かれている。すなわち、恋愛の最初の局面におけるあの他では得難い幸福とそれを得るためにその瞬間では安いものと信じさえする犠牲、そしてそれが薄れたときに彼らが直面する恋愛の苦悩の面そのものである。前述した数々の恋愛物語がこの幸福の部分のみを描き、読者はそれらを読んで自ら現実世界でその続きを演じようとする一方、この本の読者は読んでいる瞬間に恋愛の一通りを体験し、ついには当分恋愛に対する意欲を欠いてしまうだろう。

  • 恋愛を単に希望、美しい、その目覚めにおいてのみ描写したものではなく、全閲歴を叙述している。-恋愛の成長、凋落、および死
    (解説より)

    恋愛小説に関しても、古典の作品は衝撃を受けます。

  • 正直完全にこの小説を理解できているかと聞かれれば、いいえと答えるだろう。内気な少年が本気である女性に恋に落ちる話であるが、求められれば求められるほど、少年の心は離れていくと言う恋愛の生々しさを表現する小説である。人間の恋愛とはなぜここまでも面倒くさいのかと考えさせられる物語であった。

  • これを読めば悲恋とか許されない恋愛とかの他の小説を読む必要はないかな。ロマンスと純情さと薄情さと後悔と最悪のエンディングすべてが詰まっている
    ーーーーー
    これをしも恋愛小説というべきであろうか。発端の1章を別とすれば続く2章だけが恋と誘惑にあてられ、残る7章はすべて男が恋を獲たあとの倦怠と、断とうとして断てぬ恋のくびきの下でのもがきを描いている。いわば恋愛という「人生の花」の花弁の一つ一つを引きむしり、精細に解剖しようというのだ。近代心理小説の先駆をなす作。

  • コンスタンはアドルフという主人公に自分を投影し、自分の愚かなところを本書で言葉を尽くす限りに裁いていた。
    心情の変化が複雑で、エレノールが一概に悪いけでも、アドルフが一概に悪いわけでもない気もする。
    もちろん、優柔不断なアドルフが結末を大きく左右していたことには変わりないが。
    少々自分には難しい小説であると感じた。
    また数年後に再読してみたい。
    その時どう思うか楽しみ。

  • 恋に恋し続けた男の悲劇/喜劇、とわたしには思えた。人一倍孤独や独立を欲していながら優柔不断で弱い性格が一見優しさのようで実際はただナヨってるだけという。白黒つけられないところが政治には向いてるのかもね。自覚も反省もしてるけど変えられない部分は誰と出逢っても一生変わらないのだろう。

    しかしエレノール視点の物語があったとしたら、彼女にとってはハッピーエンドとも言えないか?好きでもない男爵に囲われて嫌々社交界に居させられるよりは、自身以上に愛する男と一緒に暮らし、その腕の中で死を迎えることは本望だったとも言える。もちろんそれが彼女の思い描く幸福ではなかったろうが、苦しめば苦しむほど以前のつまらない日々より生の実感も得ていたと思う。いわゆるダメンズ製造機かもしれないが、彼女の心が清いからこそどんなに複雑でも見捨てられない部分があったんじゃないかな。

    お互いにお互いを不幸へと追いやる関係は破綻しているがコンスタンは所帯を持とうが持たまいがそういう恋しかできなさそう。でも良い恋愛小説。令和になって従来の恋愛至上主義へのアンチテーゼ作品が増えてきた気がするけど、これはその先駆けの先駆けだったのであろう。

  • 2020/07/16 読了

  • 久々の文学。
    前半はアドルフの恋心に激しく共感するも、後半は恋に翻弄されるアドルフとエレノールそれぞれの運命を中立者として自分は眺めていた。

    読んでいて印象的だったのは3つ。

    ①「恋が生まれ、恋が実り、恋が枯れ、恋が破滅する」という恋をした人が何れかのポイントで共感するであろうことが、豊かに鋭く表現(あるいは言語化)されていること。

    中でも、「恋は輝かしい一点にすぎない、にもかかわらず全時間を占領してしまうかに見える」
    「常に今にも失われそうな気がする幸福、不完全な乱されがちの幸福」
    「恋はすべての感情の中で最も利己的なものであり、したがって傷つけられた暁には最も不親切な感情である」

    ②恋心は人を支配してしまうこと。
    アドルフは、「自分は決して打算から行動したことはない」と厳粛に示しているのにも関わらず、別れたいと思いながらもエレノールを労り、人生を投げ捨てるという自己矛盾を抱えている。
    一方でエレノールはアドルフが生活の全てになるまでに、彼を愛している。

    ③エレノールと別れ、恋の楔から逃れても、自由は手にすることはできないこと。なぜならアドルフ自身もその存在理由はエレノールありきであったから。まさに、一難去ってまた一難。



    おすすめの恋愛小説を聞かれたらコレですかねぇ〜

  • 訳:大塚幸男、原書名:ADOLPHE(Constant,Benjamin)

  • 悲劇。素晴らしい小説。

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