谷間のゆり 改版 (岩波文庫 赤 530-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253021

作品紹介・あらすじ

不幸な少年時代を送った青年フェリックスは、はるかに年上の伯爵夫人に熱烈な恋心を抱く。夫人はみたされぬ結婚生活に悩みながらも、あくまで母のような、精神的な愛をもって応えようとする。しかしその心の奥底には、はげしい愛欲が秘められていた…。霊肉の相克に苦しむ人間の姿を、非情な筆致で描きだす恋愛小説の古典。

感想・レビュー・書評

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  • 愛は明るいハッピーなものか?

     この小説は、エロス、フィリア、アガペーといった多くの愛について描いている。それぞれが複雑に絡み合うことによって、憎しみや、後悔、懺悔といった、愛の暗い部分も同時に描写する。
     本書を読むと、愛は時としてその人の人生に暗い影を刻印することがわかる。それが良いとか悪いとかではなく、そういうものなのだということがわかる。最愛の人との別れや、取り返しのつかない失敗などはわかりやすい例である。
     そんな中で、人は生きて行かなければならない。自分だけが知っている死んだあの人が持つ愛。それを内包すると、もはやどうしようもない、生きて行かなければならない。
     「生きている意味なんてない、死ねないから生きているんだ」という言葉をどこかで見たが、死ねないから生きているという部分の意味がよりはっきりとわかった。自らは死ねないのだ。
     一度でもこの道を進み始めるともう元には戻れないのだろう。死ぬ時が来るまで歩き続けるしかない。

  • 主人公フェリックスから、現在の恋人ナタリーへの手紙という形式で語られる、過去の恋の模様。
    伯爵夫人アンリエットとの最初の出会いはいかにも「ビビッときた」というように運命的に描かれているけれど、結局この女性に魅かれた理由は、少年時代に親から愛情を受けられなかったという境遇から母親のような愛情で包んでくれる年上の女性への憧れが大きかったのではないかと思う。
    アンリエットは病弱な2人の子供を抱えている上、旦那のモルソーフ伯爵はものすごい困った君。
    夫の機嫌次第で理不尽な八つ当たりを受けながらも、完全に愛想を尽かすことができず、子供が3人いるようなもの、と思いながら世話をする姿に心打たれた。
    こんな境遇で悩みを相談できる相手ができたら、頼ってしまうよなぁと思う。
    アンリエットが家庭とフェリックスの間で身も心も引き裂かれんばかりに苦悩しているのに、フェリックスときたらパリでちゃっかり別の恋人作ってて、でも一番好きなのはアンリエットなんです、とか言っちゃう。
    小説はフェリックス視点で書かれているのだけど、女性の視点で読むとフェリックスほんと頭にきます。なんなのこいつ。
    アンリエットの最期は途中から予測できるのだけど、やっぱり気の毒。
    確かに心の中でフェリックスのこと愛したけれど、夫や子供にもたくさん愛情注いだじゃない?
    報われなさが読んでいてしんどかった。
    ただ、これで終わらないのがバルザックのすごいところ。
    フェリックスの手紙を読みながら読者が感じていたことを、最期のナタリーの手紙がすべて代弁してくれる。
    一刀両断とはまさにこのこと。超スカッとしました。
    フェリックスがなよっちくて好きになれないので、この作品苦手かも…と思いながら読んでいたけど、オチまで含めたら結構好きかもしれない。

  • デヴィ夫人が読んだそうで。
    逗子図書館にあり

  • 小難しい

  • 純愛小説っていうけど、結局男って身勝手だな…と正直思った。

  • トリュフォーのドワネルもの三部作を見てから読んだ派

  • 2007/12/18

  • あれはもうあの人じゃありませんよ。

  • 頑固だなぁと思うけど、あそこまで貫かれるともう何も言えない。

  • フェリックスにはイマイチ感情移入できず。ところどころに心揺り動かされる表現はあるんだけど。

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著者プロフィール

オノレ・ド・バルザック
1799-1850年。フランスの小説家。『幻滅』、『ゴリオ爺さん』、『谷間の百合』ほか91篇から成る「人間喜劇」を執筆。ジャーナリストとしても活動した。

「2014年 『ジャーナリストの生理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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