- Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003256039
感想・レビュー・書評
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詩人の残したただ一冊の連作小説ですね。
作家の向かい合わせにしたようなムッシュー・テストを観察する文体で綴られています。
ヴァレリーは自身の内面的危機から内省的断片を書き連ねた一冊の帳面(カイエ)に帰結する。生涯に二万数千ページにもおよぶ神話的な(カイエ)から導きだされた小説との事でした。
詩人の詩人としての成功とは裏腹に、模索する内省のゆえに、難解な内容に成っています。とは言うものの訳者さんが苦心して読みやすく、訳注と解説がしっかりしているので、ヴァレリーと対話しているかのように読み進めました。
哲学的でもあり、詩的でもあり、恣意的な文章、会話、様々な断編の構成ですが、語られている事から得られるものは読み手しだいなのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
記録
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津村の読み直し世界文学の1冊。タイトルもわかりにくいが、内容も分かりにくい。解説を読んでもわかりにくい。これをどのように学生に薦めることが出来るか迷う。
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今のところ難解
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人間や自身に対する思索が、テスト氏を通して語られます。抽象化された表現を理解しようとして、具象に落とし込みながら読んだため、時間を要しました。そうしたものの、やはり難解すぎました。
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京都弁なら「おつむはん」だと解説(清水徹)に
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ヴァレリーの序文が僕にとっての全てだった。中盤での「マダム・エミリー・テストの手紙」でエドモン・テストに溺愛する彼女の姿を投影して愛とはという命題を掴んだ気がした。中盤から最終部にかけて、アフォリズムが展開される。僕にとって難解な小説集だった。
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文学
古典 -
「出発が決まった途端に、まだ身体のほうはすこしも動きだしていないうちに、やがてまわりのすべてが一変すると考えるだけで、わたしたちの隠れたシステムに、あるふしぎな変更が通達されることになる。ここからやがて立ち去る、そう感じるだけで、まだ手で触れる一切のものが、いわばつい隣にあったその実在性をほとんどたちまちのうちに失ってしまうのです。まるで、それらの現前性の能力が打ちのめされたとでもいうようで、能力のいくつかが消え失せてしまう。
昨日はまだ、きみはまだわたしのそばにいたのに、それでもわたしの内部には、もはやきみとは長いあいだ会うこともあるまいという気持にすっかりなっている秘密の人間がひとり生まれていた。すこし経てば、もうきみの姿は見あたらないというのに、わたしはきみと握手など交わしていたのです。そのときのきみは不在の色に染められ、まるで目前の未来などまったくもっていない身というふうに、わたしには見えた。すぐそばから見ていたきみが、遠くに見えたのです。きみの眼差は同じだったのに、もう持続を含んではいなかった。きみとわたしのあいだには、『ふたつの距離』があるかのように思えました、まだ感じとれぬ距離と、はや途方もないものとなっている距離のふたつが。そして、ふたつの距離のどちらをより現実的と見なすべきか、わたしにはわからなかった……」 -
統合失調症患者の精神分析みたいなものか