- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003257814
感想・レビュー・書評
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<amazonからの転記>大学の授業で何年か前に読みました。
象徴的な意味で、死ぬことなしには永遠という行為が得にくいこと、
永遠であり続けるには、死に続けるしかないということが感じられます。
死に続けるとは、時間を止めることなのか。
無彩色のまち、黒い塔、鳴り響く教会の鐘、死したキリストを賛美する祭り。
動いているはずのお話の中のまちが、時間を止めるように描かれているのは、
まちを穏やかに死に続けさせるためなのかと思われます。
そして死に続けるまちは、ずっとユーグのものとなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベルギー、ブリュージュ、フランドル……、私にとっては霧に包まれたような不思議な響きだ。ローデンバック(永井荷風によればロオダンバック)という名も(彼の同輩は、メーテルリンク、それともメーテルランク?)。歴史的・文化的にも複雑だから、と説明することもできるけれど、まずもって私には、この『死都ブリュージュ』のイメージが鮮明だから、かもしれない。"BRUGES-LA-MORTE" を『死都ブリュージュ』とするのは間違いだ、と、森茉莉が熱弁をふるっているけれど、私には、これでいい。この物語の主人公は(本書解説にもあるように)ブリュージュという「灰色の都」だから。そのためにも、30葉余の写真が「書割」として必要だったのだから。宿命とか、(本人たちもあずかり知らぬ)深い血のつながりによる恋の物語、どうしてこのように心をとらえて放さないのだろう、私は幾度、この本を開いては溜息とともに閉じただろう。「解説」によれば、荷風は、ロオダンバックとレニエを愛したとのこと、宜なるかな。同じく荷風先生による、掘割の都としての、ヴェネツィア、ブリュージュ、そして島原…、ああ、なるほど。