カラマーゾフの兄弟 4 (岩波文庫 赤 615-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003261521

感想・レビュー・書評

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  • なんなんでしょうね、この小説。全体を通してワンセンテンスごとは決して難しくないのだけど、1ページ単位の密度の濃さに加えて、理知的かつ感情的な登場人物の多さや、それらが絡み合う人間関係から難解なイメージを与えます。まあ実際、要所要所では神学や聖書の知識がないと100%理解するのは難しいのですが、ミステリーっぽい要素や裁判のシーンなどから小説としての面白さもしっかり携えていて、娯楽小説として見てもちゃあんと面白い。人間が人間であるために備えているあらゆる情動や欲望がそれぞれの登場人物に、そして物語そのものに宿っており、150年近く経ったいまなお強度も存在感も圧倒的です。主要人物のフョードルと兄弟たち以外にも様々な登場人物がおり、対話に対話を積み重ねながら「神とは」「信仰とは」「宗教とは」というテーマを扱い、「人間とは何か」という文学の根本的な部分を追求していく。「読む」ということは「小説を書く」ことにも繋がっている、そんなことまでも内容に組み込み、読書というものの最も純粋な欲求を体現しています。

  • 意味深な遺書を残して首を縊った人物と、その相互作用で気が触れた人物。その2人と干渉して、真理の光とすべての人への復讐と憎悪の中に滅びることを自覚しながら、ひたすら祈る人物。裁判にかけられ、やいのやいの言われる人物とともに、カラマーゾフの兄弟たちの物語は一先ず終わる。裁判で振りかざされるロシアの正義なる茶番。そんなカラマーゾフの末っ子を慕う子供による、僕たちはみんな死から甦って命を得て、またお互いに見ることが出来る、という叫び。一粒の麦が確かに大地に実りをもたらしたように見える。X'masに読む最高の物語。

  • 読了した。4度目の挑戦でやっと読めた。長かった。
    西川先生の勧めで読んだ。これは若いうちに読んでおく本。フョードルの生き方に共感し、ゾシマの生き方に憧れた。でもまだ消化しきれていない。新潮版でもう一度読んでみる、感想はその時に。

  • 長いし、人間関係が複雑だし、随分前に端役だと思っていた人物が突然現れるし、キリスト教の倫理観と歴史が理解しづらいし、唐突に愛称で呼ぶし…というなかなかハードな本だった。人物一覧表を作りながら読んだ。
    ただ、名作と呼ばれるだけあって人間の心理描写力が非常に優れていると感じた。
    カチェリーナの、ミーチャやグルージェンカへの愛憎渦巻く複雑な心境。コーリャ少年の背伸びと自尊心。ラキーチンの世の中を小馬鹿にしたような皮肉。スメルヂャコフの嫉妬など…枚挙にいとまがない。
    また、(当時の)キリスト教の考え方と倫理観について、微量ながら理解することができたと思う。
    本書で取り上げられている問題はキリスト教だけの問題ではないし、過去の問題でもないと思う。
    科学の発達によって薄れた信仰心。ヒトは「神からの赦し」を捨てて生きることができるのか?
    人間がどこまで行っても捨て去ることのできない問題と人間臭さがこれでもかと凝縮された本だった。

  • 無罪になりそうな人が結局有罪になったり、登場人物の一人の葬儀があったりと客観的に見れば救いようのない終わり方です。ですが、何でしょう、どうにも最後でハッピーエンドに見えてしまうんですよね。

  • テンポの良い物語構成ではない。ひたすらひとりで自分の考えをぶち撒けまくる場面が多く、正直読んでいて何度かグッタリする。ただ、それを踰えたところに毎回なにかが見える。

  • これを先に読むか、『悪霊』の方を先に読むかで大きく印象が変わってくるような気がします。
    私は『悪霊』の方を先に読んだので、イワン兄さんの思想にはあまり驚きはありませんでしたが、この小説には『白痴』『悪霊』のテーマがまとめてとりあげられており、まさにドストエフスキーの集大成という感じです。
    ものすごい長いですが、それを読むだけの値打ちは充分あります。必読と思います!
    1フントの胡桃の話が泣ける!!

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/TW00023334

  • ドストエフスキーが生涯をかけて構築した世界最高峰の文学作品、カラマーゾフの兄弟は小説というよりもむしろ思想書に近いかもしれない。19世紀後半の思想的動乱期のロシアを舞台とするこの小説は当時の複雑な社会状況、イデオロギーの対立を描写している。彼の著作の多くはこのような状況におけるロシアの無神論、ニヒリズムと対置して信仰による救済を説くものであるが、その問いは単にイデオロギーとしてだけではなく、人間の心理的本質に投げかけられたのである。今日、思想なき時代において人生の問いは単純な質量的欲求という意味での幸福、不幸にカテゴライズされてしまう傾向にあるが、それは一つのニヒリズムであると言えよう。形而上学的、超越的な概念は必然であるというよりは「必要」であるということを登場人物の心理描写とともに痛感することができる。個人的な観点ではあるが、そうしたことを考えさせてくれる思想書であると言えよう。

  • 私たちに遺された『カラマーゾフの兄弟』は、ドストエフスキーが想定していた物語の第一部に過ぎなかったと言われています。長男ドミートリイが選択した運命はどうだったのか、イワンはどうなったか、アリョーシャはどのように成長していくのか、数々の余韻を残したまま物語は終わりを告げます。

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