人はなんで生きるか 他四篇(民話集) (岩波文庫 赤 619-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003261910

感想・レビュー・書評

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  • トルストイさん、愛だろ、愛!

  • 表題作「人はなんで生きるか」
    トルストイが「民衆自身の言葉で、民衆自身の表現で、単純に、簡素に、わかり易く」をモットーに1年を費やした作品。
    キリスト教のことはよく分からないし、聖書のことも知らない私でも非常に心が洗われる作品でした。
    ラストにかけて光り輝く壮大な光景を目の当たりにしたような気持ちになれました。

    「二老人」は形式的キリスト教徒と、真のキリスト教徒とを対立させているということですが、表題作よりも慈悲の精神、惜しみなく与える、の度が過ぎていてちょっとびっくり。
    幾度となく禿頭が光り輝く、というシーンが出てくるんだけどその度シュール過ぎて、、、
    何せトルストイの絵画的色彩描写がそれだけ凄かったのです。

    「火を粗末にすると―消せなくなる」
    「ろうそく」では悪をもって悪に抗するな、の思想の具現化。
    説教的な内容ですがやり合う内容や言葉がなかなか大レベル。
    消えないロウソクや、管理人の最後の理由がよく分からず何度か読み返した。
    「愛のあるところに神あり」靴屋のマルツィンが、神のために生き、最後には彼の元へ救世主が来られたのだと悟る、という話。

  • 100分で名著をみて、読みたくなって購入した。テレビで見た内容より、本で読む方がリアリティがあり想像が掻き立てられ、面白く感じた。人はなんで生きるのか、本当に知りたくて色々な本を読んだけど、ここにも1つの答えがのっていた。哲学的な考えの答えがここにはのっていた。わたしは、人に裏切られ人を信じれなくなり、心を病んだときにこの本を手にとった。それは、神さまがわたしの心の中にいたからかもしれない。人の心の中には愛があり、愛は神さまである。自分の中に住んでいる神様を死なせてはいけないという事なのだろうか…。

  • 副題に「トルストイ民話集」とある。だが岩波文庫「 イワンのばか 」と同様で、民話に材を採ったものもあるが、多くはトルストイが民話風に仕上げたものらしい。物語が寓話として読み応えあり。

    ・「ニ老人 」が面白い。ロシアの村からふたりの男が連れだってエルサレム目指して旅立つ。聖地巡礼の道行きである。老人エリセイは道中で飢饉と飢餓に見舞われた村に出くわし、瀕死の家族に出会う。エリセイは飢餓の一家を救うためその地に留まり救援を続ける。旅の費用を使ってしまった彼は聖地への旅をやめ道中を引き返す。一方老人エフィームは一人で旅を進めエルサレム巡礼の旅を全うし帰郷する。
    巡礼は断念したものの眼前の隣人救済を実践したエリセイ。そしてエフィームは巡礼を全うしたものの、巡礼の模様は聖蹟や名所旧跡巡りで物見遊山のようで虚しさを感じさせる。
    帰郷後エリセイは神々しいほどの好好爺となり幸せな日々を迎える。一方のエフィームの家勢は傾いてゆく。形式的な信仰よりも、実人生での愛の実践こそ大事である、という教訓がテーマだとされる。
    この短編、巡礼旅の道行きが興味深い。19世紀頃の旅なため、徒歩や船での往復半年がかりの旅。陸路を歩いてオデッサまで。オデッサから船でコンスタンチノープルへ。さらに、スミルナ、アレクサンドリアへ。そしてヤッファから徒歩でエルサレムへ。という道中。農村の狭い世界での話が多い中で本作は、物語世界が広くて面白い。( コンスタンチノープルではアヤソフィアを見学した…なんていう一節があり、僕も見に行ったな〜と嬉しかったりする。)

    ・「 人はなんで生きるか 」〜 靴屋のセミョーンはある日、裸同然で行き倒れていた青年を家に連れ帰る。青年はミハイルといい美しい面立ちをしていた。ミハイルは靴屋の弟子職人として働き始める。セミョーンの暮らしは少しづつ好転してゆく。そして終幕ミハイルは告白する。自分は天使である。人間の徳性を知るために地上に降りていたのだ。人間は他者へのいたわりの心、愛を持つ。そして、その「愛」は、人間の内にある神だ、と知ったのだという。

    「 火を粗末にするとー消せなくなる 」は農村の隣家同士が些細なトラブルから喧嘩、紛争を激化させる様を描き、争いの無益であること、虚しさを説く。教訓臭が強いというか、道徳的なねらいが濃厚で、これは文学作品なのかなという疑念も浮かんだ。

  • はっきり言いますと、ここに書かれている話は現実と比べれば綺麗事なのかもしれません。ですが、それに対する嫌悪感は全くなく、むしろ大人の私でもストンと心に落ちるような話が多かったですね。

  •  私はキリスト教徒ではないが、心に響くものがあった。善について考えさせてくれる良い短篇集。
     私は最後の話が好き。

  • 45年ぶりのトルストイ、読みやすい。

  • 安易な道徳的民話と思うことなかれ。
    人生が如何に空漠な物かを悟れば悟るほど、この作品に描かれている人間の高潔さが理解できるようになってくる。

  • 道徳の教科書。日本の宗教観に置き換えて読むこともできるので、とても読みやすい。「お天道様が見ている」「八百万の神」「人を敬う」というなじみの感覚と近いものを感じる。トルストイの作品は恥ずかしながら本書が初めて。他の作品も読みたい。

  • 簡素な文だがしっかりとしたメッセージが込められてる作品。人は生きてく上で大切なことを見失っていく。それは愛や憐み、贈与の精神などである。現代に必要なのは宗教なのかもしれない。それは形式的な意味でなく、精神的な意味で。

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