まっぷたつの子爵 (岩波文庫)

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制作 : 河島 英昭 
  • 岩波書店 (2017年5月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003270967

まっぷたつの子爵 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • トルコとの戦争で砲弾を受け、体が半分になってしまった若きメダルド子爵。右半分だけになってなんとか生還した彼は、かつてとは別人のように邪悪な人間になっていた。罪なき人々を拷問・虐殺し、最後まで自分を心配してくれていた乳母ですら迫害、甥である少年(彼が語り手)の命も何度も奪おうとする。しかしある日、戦場で失われたと思っていた左側の善良な半分が帰還し・・・。

    縦に半分になってしまった人間が実際に生きていられるわけではないのであくまで基本は童話的ファンタジー。表面的なあらすじだけ追えば子供でも楽しめる内容なのだけど、いくらでも深読み、いろんな解釈をできるのがすごい。

    序盤、戦争の描写は結構残酷だし、なぜ戦場に鳥がいるのかという理由も怖い。子爵の父親はあるきっかけで鳥籠の中で暮らすようになってしまったこれまた一種の奇人。同じくカルヴィーノの「木のぼり男爵」もそうだったけど、一見キテレツファンタジー設定のようでいて、少し見方を変えればグロテスクでもある。

    隔離されていながら堕落したユートピアのようでもある瀬患者たちの暮らす場所、異端迫害から逃げてきたもののすでに祈るべき神を持たないユグノー教徒たち等の存在も象徴的。

    半分になった子爵はもとより、他の登場人物も個性的で楽しい。語り手の少年が師匠のように慕う医者だけど胡散臭い研究ばかりしてるトレロニー博士、まるで大阪のオカンのように愛情深くも小言の多い乳母セバスティアーナ、そして半分の子爵の両方に恋される少女パメーラと、彼女がいつも連れている山羊とあひるも可愛い。

    善良なほうの半分は、そのような身となったことで、不完全であることのつらさを知り、すべての欠如した存在に対する連帯感をおぼえるようになったとパメーラに語る。プラトンの饗宴では、かつて人間には四本の手と四本の足と二つの顔があり完全な球体だったが、神の怒りを買いまっぷたつにされた、だから人間はその引き裂かれた半分を探し求めているのだという挿話が出てきますが、半分の子爵の言い分と通ずるものがあるかも。

  • 1971年、1997年に晶文社より刊行された単行本を文庫化。
    『メルヘン』ではあるのだが、なかなか『黒い』。その『黒さ』がカルヴィーノの魅力のひとつでもある。
    一見すると子供でも楽しめそうではあるが、大人が読むとけっこう刺さるんじゃないかなぁ。

  • 単行本で既読。

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まっぷたつの子爵 (岩波文庫)の作品紹介

ぼくの叔父さんテッラルバのメダルド子爵は、トルコ軍の大砲の前に、剣を抜いて立ちはだかり、左右まっぷたつに吹き飛ばされた。奇跡的に助かった子爵の右半身と左半身はそれぞれ極端な"悪"と"善"となって故郷に帰り、幸せに暮らす人びとの生活をひっくりかえす-。イタリアの国民的作家カルヴィーノによる、傑作メルヘン。

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