休戦 (岩波文庫)

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制作 : 竹山 博英 
  • 岩波書店 (2010年9月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003271711

休戦 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 怒涛のレーヴィ第三弾。
    大戦。アウシュヴィッツ。そして「書くこと」。
    「悲惨な」体験であったアウシュヴィッツを「悲惨な」という言葉の中に閉じ込めないようにするには、血の滲む努力と自制心が必要だろう。それをレーヴィは『アウシュヴィッツは終わらない』と本書の中で成し遂げている。単なるセンチメンタリズムではない、本当の記録文学がここにある。

  • プリーモ・レーヴィの「見る」という行為は実に静かで淡々としたものだ。それは彼が化学者であったことに起因するのであろうか? わかならない。ただその視線が自分の人生をも突き放して見つめることを可能にしたことだけは確かだ。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/07/3.html

  • これは、故郷トリノから遠く離れたアウシュヴィッツ絶滅収容所で終戦を迎えたユダヤ系イタリア人レーヴィが、ふつうの生活、 “故郷”、じぶん、へと生還する遠い道のりを描いた記録である。

    戦争が終わったというのに、レーヴィは帰還を果たせない。不効率な官僚主義の手はずにより、ポーランドからソ連、ルーマニアやらをぐるぐるまわらされる。レーヴィはこの旅路を「最後に付け加えられた冒険」(P.117)と呼んでいる。トロイ戦争後、故郷イタケーへの長い旅路がそのまま艱難の放浪となった、狡知の王オデュッセウスの冒険譚に重ね合わせるように。

    しかし故郷に帰り着いてオデュッセウスは、自分の生の輝きはその旅の中にこそあったことに気づく。それと同じように、レーヴィのこの一見無駄に見える旅の過程は、戦争の終結や平和の到来を祝福するムードだけでなく生命を謳歌するシーンにあふれており、レーヴィの作品としては例外的な様相を呈している。

    しかし、そんな躍動と喜びに満ちた「旅」=「休戦」も、儚く終わる。彼が故郷に帰り着き、安眠できるはずの寝床で、悪夢(トラウマ)にうなされることで。夜中か白昼か、にかかわらず、彼はその後おそらくは死ぬまでナチス看守の声を聞き、汗にまみれてがばっと跳ね起きた。

    「フスターヴァチ!さあ、起きるのだ!」

  • [ 内容 ]
    人間の肉体だけでなく、魂をも破壊した“アウシュヴィッツ”という死の世界を体験した者が、いかにして普通の世界に戻っていくのか、いかにして一度失った生を新たに獲得していくのか―。
    絶滅収容所を奇跡的に生き延びた主人公=作者レーヴィ(1919‐87)が、故郷イタリア・トリーノに生還するまでの約9カ月の旅の記録。

    [ 目次 ]
    雪解け
    大収容所
    ギリシア人
    カトヴィーツェ
    チェーザレ
    ヴィクトリー・デイ
    夢見るものたち
    南に向かって
    北に向かって
    クーリツァ
    古い道
    森と道
    ヴァカンス
    演劇
    スターリエ・ダローギからヤーシへ
    ヤーシからリネアへ
    目覚め

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 同著者の「アウシュヴィッツは終わらない」が収容所から解放された瞬間で終わっているとするならば、まさにその瞬間から、イタリアの我が家に帰り着くまでを描いた作品だ。

    収容され人間らしさを剥奪された状態から、辛く厳しい道のりではありながら、自由・交換・栄養を得て人間らしさを回復していく過程が描かれている。
    国民性を思わず嘆きたくなるくらいの明るさだ。

    例をとるなら「食事の配給用に配られた皿-これは次の配給には必ず必要になるもの-を鶏が食べたいと交換してしまう」そんな彼らは間違いなくラテン気質だ。
    今が暑いからといってシャツまで脱いで交換してしまう、その『何とかなる』という姿勢は、他の収容所文学では見たことがない。

    しかし、一見明るさに満ち溢れたこの作品も、著者が87年に自死した事実を知ると単純に見ることができなくなる。
    映画監督エミール・クストリッツァと同じく、「明るさと苦味」が共通しているように感じた。

  • 著者はアウシュビッツを生き延びたイタリア系ユダヤ人。解放後、イタリアに戻るまでの8ヶ月の記録を記した本著は『遥かなる帰郷』として映画化されました。

  • 岩波文庫(赤) 080/I
    資料ID 20102004487

  •  ドイツ軍に捨てられたアウシュヴィッツ収容所から著者の故郷であるトリノに帰るまでの、長い旅がこの話の舞台となる。終戦間際(直後)の混乱期、著者は長旅の中でギリシア人をはじめとする多くの、様々な国の人たちと関わり合う。時には助け合い。時には騙し合いながら、幾多の苦難をひたすら耐え凌いでゆく。
     話の舞台とは対照的に、ところどころで以外にも笑いを誘うような場面があり、読んでいて楽しくなるところも少なくない。特に終盤で見られるユーモア溢れる場面は、前半に書かれている多くの悲劇を一瞬ではあるが忘れさせてくれるほどであり、旅を続ける中で著者がだんだんと生を回復しつつあるのだな、と読者を和やかな気分にさせてくれる。だが、このユーモアこそが収容所で一度生を奪われた著者が渇望していた喜びであり、生なのだと思うと、改めて著者が置かれていた状況に震え上がる。
     そして、物語は突然灯りが消されたかのように暗く静かに幕を閉じる。この部分に関しては、訳者により非常に丁寧な解説が付いているので割愛する。戦争について語ることすらできなくなるほどの、底の知れない恐ろしい闇が広がっている、とだけここでは書いておきたい。

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人間の肉体だけでなく、魂をも破壊した"アウシュヴィッツ"という死の世界を体験した者が、いかにして普通の世界に戻っていくのか、いかにして一度失った生を新たに獲得していくのか-。絶滅収容所を奇跡的に生き延びた主人公=作者レーヴィ(1919‐87)が、故郷イタリア・トリーノに生還するまでの約9カ月の旅の記録。

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