作り上げた利害 (岩波文庫)

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著者 : ベナベンテ
制作 : 永田 寛定 
  • 岩波書店 (1928年1月5日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (106ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003272817

作り上げた利害 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 人形劇での社会風刺。面白い。

  • はじめてのスペイン文学(スペイン戯曲)。ベナベンテは現代スペイン劇の代表的作家で、本作は彼の「思はれぐされ」とともに「最も当った狂言である」。二幕ものでみじかいうえに、筋もわかりやすいからすらすら読める。訳がそうとう古いが、慣れてきたら江戸時代に行ったような気になってきて、それはそれでおもしろい。

    善人のレアンドロと悪党のクリスピンが知らない町にのりこんでくる。ふたりはそこで悪事をはたらいて一財産儲けようとしている。クリスピンは実に口が達者な男で、自分たちが名士だといって宿屋の亭主を言いくるめてしまうと、そこにやってきた詩人のアルレキンと大尉も仲間にくわえ、あっという間に園遊会の席でレアンドロを町の名家ポリチネーラの娘であるシルビアとくっつけてしまう。父のポリチネーラはもちろん激怒するが、じつは彼もまた悪事をはたらいて成りあがった男だ。ラストはクリスピンとポリチネーラのやりあいになるのだが、結局はポリチネーラの「利害」よりも、クリスピンの「利害」のほうがまわりの登場人物を満足させたために勝負はクリスピンの勝利となる。

    「あとがき」で訳者は以下のように述べる。

    ベナベンテは利害関係によって彩られる世相を一概に醜人世と認めてこれを摘発嘲笑し、もしくは、嫌悪呪詛するという行き方をとらなかった。彼は、利害関係そのものこそは、情けなくともどうとも、社会の枢軸であって、一切の世相はこの枢軸の持つ絶大な回転力に引きずられて巻する憐れむべき人間の蠢動円に過ぎないとする、自家の哲学を演繹して、これを劇に盛った。(p. 104)

    物語で悪者どうしが対決したあたりが、この引用文に説得力をもたせている。

    ただ、善人のレアンドロとシルビアの恋愛まで計算された「利害」にふくめてよいものかは、作者もまよったのではないか。最後にクリスピンは「理想も勘定に入れた」と豪語する。でも、つづいてシルビアは「さて、わたくし共に訓えて申しまするに、この狂言必ずしもみな狂言でないぞ、人形の人生にも神聖なあるもの[恋愛]があって、それだけは真実、それだけは永遠であるぞ……」といっている。この意見がわかれそうな問題は、疑問として読者に投げられているわけだ。

  • 人間は慾得でコントロールされる生き物だということをテーマにした喜劇。

    一言でいえばコテコテである。
    今となっては、漫画でもこんなコテコテの展開は寒すぎてやらないであろうくらいコテコテ。

    クリスピンなる一人の悪党の狂言回しに、あれよあれよと巻き込まれていく登場人物たち。ほんでもってそのまま最後まで突っ走ってしまう。おいおい、そんな馬鹿な。という視聴者の突っ込みは覚悟の上だろう。

    非常に生き生きとしたテンポの良い展開に加え、最近の文学では味わえない痛快さがあり、露骨すぎないくらいの程よいユーモアと皮肉にもしてやられ、こんな本につけちゃっていいのかなと思いつつも、とかく楽しめたので★5つ。
    1時間もあれば読めます。オススメ。

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