兵士シュヴェイクの冒険 4 (岩波文庫 赤 773-4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277348

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  • この巻に収められている「捕虜になった兵士シュヴェイク」はオーストリー批判がストレートに書かれていてその点は「兵士シュヴェイクの冒険」よりわかりやすかった。誰も好んで戦争などしたくはないのだから、ましてやそれが他人の国の命令だとしたら、やる気が起きなくて当然だよね。ヨーロッパという陸でつながった、様々な民族、国、文化。それはとっても複雑で、数字や記号で割り切れるものではないから、今でも民族間、国家間で色々な感情が渦巻いているのだろう。
    作品の中で語られる数え切れないくらいの一見くだらない一口話の中に、チェコの人々の生活が生き生きと描かれている。そして民族意識って、敵を前にして初めて高まるものなんだな、とあらためて感じた。現代日本人の民族意識が薄いのは幸いなのかも。

  • 「兵士シュベイクの冒険(四)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
    472p C0197 (2017.12.04読了)(2017.11.23借入)
    以下読書メモです。

    第4巻を読み始めました。
    第四部を読み終わったところです。
    第4巻の152頁で「兵士シュベイクの冒険」は終わっています。著者が亡くなったために未完のままです。
    ロシア兵と間違えられて、味方の捕虜となったシュヴェイクは、ロシアのスパイとみなされ絞首刑になる寸前に助かり元の部隊に戻されました。戦闘に加わる予定だったのでしょうか?

    「戦前の兵士シュヴェイク」を読み終わりました。
    5つの短編が収録されています。
    イタリア軍の武器を運んでいた馬を奪ってきたり、葡萄酒を買うために長い旅をしたり、兵役免除に抵抗したり、火薬を詰める部門に回されタバコを吸いながら作業したり、飛行機を操縦してモロッコまで飛んだり、相変わらずの大活躍です。

    第4巻を読み終わりました。
    「捕虜になった兵士シュヴェイク」は、「兵士シュヴェイクの冒険」の習作版という感じです。
    頼まれたものを求めてどこまでも行く、上官に頼まれた手紙をもって人妻のところに行きトラブルになる、犬が欲しいという上官の求めに合う犬を盗んできてトラブルになる、というようなエピソードが含まれています。
    「兵士シュヴェイクの冒険」に比べて、読みにくくまだこなれていない感じです。ロシア兵の捕虜になるまでが書かれていますので、「兵士シュベイクの冒険」も書き進められていればロシア軍の捕虜になるまでは書かれただろうと思われます。
    「付録」には、著者の手紙や手記などが収録されています。著者のことが少しわかるようになっています。
    風刺小説ということで楽しませてもらいました。

    【目次】
    第四部 続・目の覚めるような平手打ち
    一 ロシア人捕虜護送部隊のシュヴェイク
    二 魂の慰安
    三 シュヴェイク もとの中隊に帰る
    戦前の兵士シュヴェイク
     シュヴェイク イタリア軍を向こうにまわす
     シュヴェイク ミサ用ブドウ酒を調達する
     シュヴェイク 兵役免除となる
     シュヴェイク 火薬の処理を学ぶ
     シュヴェイク 飛行機に乗る
    捕虜になった兵士シュヴェイク
    付録
    1 サラートへの手紙
    2 ヤルミラとリーシャへの手紙
    3 記念日の回想
    4 靴の埃を打ち払い……
    5 私がシュヴェイクの挿絵を描いたいきさつ……  ヨゼフ・ラダ
    訳注
    訳者あとがき  栗栖継

    ●大隊史編纂係(112頁)
    事務室には一年志願兵のマレクのほかだれもいなかった。大隊史編纂係のマレクは大隊がズルタンカでぐずぐずしているのを利用して、未来に残ると思われるような勝ちいくさの記事をいくつか予備に書いていたのである。
    ●十五年(129頁)
    「シュヴェイク、お前は戦争がまだどのくらい続くと思う?」
    「十五年さ」とシュヴェイクは答えた。「むかし三十年戦争ってのがあったろう? われわれは今じゃむかしの人より半分がとこかしこくなっているから、三十を二で割って十五ってわけなのさ」
    ●精神病(241頁)
    戦争がおこるとかならず大きなパーセントの精神病が発生する。戦争のおそろしさ、死に対する個々の人びとの恐怖、あとに残して来た家族に対する心づかい、その他この血だらけの手工業から派生するさまざまの原因が呼びおこした当然の帰結なのである。
    ●歴史(255頁)
    歴史のページに登場するのは大きな悪党や強盗や放火犯や殺人犯ばかりで、彼らは殺す人の数が多ければ多いほど、侯爵だとか王様だとかいう称号を持つことが多いのである。
    ●第一次世界大戦(397頁)
    第一次世界大戦は1914年6月28日、サラエヴォでオーストリーの皇位継承者フェルジナント大公夫妻がセルビアの愛国学生プリンツィプによって射殺されたことが導火線になり、まず7月28日にオーストリー・ハンガリーがセルビアに宣戦布告したことによってはじまったのであった。
    ●チェコスロヴァキア(439頁)
    1918年10月28日、オーストリーに従属していたチェコ人と、ハンガリーに従属していたスロヴァキア人とは、スラヴ族の中でも最も近いいわば兄弟の間柄だったので、手を結んで共同のチェコスロヴァキア共和国を創った。

    ☆関連図書(既読)
    「兵士シュベイクの冒険(一)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
    「兵士シュベイクの冒険(二)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
    「兵士シュベイクの冒険(三)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
    「世界の歴史(13) 帝国主義の時代」中山治一著、中公文庫、1975.05.10
    「世界の歴史(14) 第一次大戦後の世界」江口朴郎著、中公文庫、1975.05.10
    ・チェコ関連書
    「ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ」黒沼ユリ子著、リブリオ出版、1982.11.10
    「スメタナ、ドヴォルジャーク」渡鏡子著、音楽之友社、1966.01.31
    「長い長いお医者さんの話」カレル・チャペック著、岩波少年文庫、1952.09.15
    「変身・他一篇」カフカ著・山下肇訳、岩波文庫、1958.01.07
    「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ著・千野栄一訳、集英社文庫、1998.11.25
    (2017年12月5日・記)
    (岩波文庫解説目録より)
    馬鹿なのかみせかけなのか、おだやかな目をした一見愚直そのものの一人の男。チェコ民衆の抵抗精神が生んだこの一人の男には、オーストリー・ハンガリー帝国の権力も権威も、 遂に歯が立たなかった。年移り社会は変わっても、この権力に対する抵抗精神のシンボルは民衆の心に生き続けている。本文庫版は最も挿画の多い版になった。

  • 作者の死亡により,まさかの途中終了。
    残念極まりない。
    でも,まだまだシュベイクの冒険は続くのだろうな,とその後のシュベイクに想像が膨らむ
    代わりにというか,長編の元になった?中編も収録されていたが,やはりシュベイクの個性が発揮できていない印象。

  • シュヴェイクのキャラクターの半分はヨゼフ・ラダが生み出したと言っていいでしょう。
    彼の絵本等で邦訳は
    「おおきくなったら -チェコのわらべうた-」「きつねものがたり」福音館書店
    「どうぶつだいすき」平凡社
    「黒ねこミケシュのぼうけん」岩波書店 等があります。

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