山椒魚戦争 (岩波文庫)

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制作 : Karel Capek  栗栖 継 
  • 岩波書店 (2003年6月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003277416

山椒魚戦争 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 日本では『家畜人ヤプー』なんかにも影響を与えたといわれる一種のユートピア(あるいはディストピア)SF。(本筋とは関係ないですが「ヴィーナスレガッタ」とか、ヤプーでもまんま同じことしてましたね)

    同じチャペックの『R.U.R.(ロボット)』では人間の造ったロボットたちが人間に反旗を翻しましたが、こちらで人間の脅威となるのは、タイトル通り「山椒魚」。進化の気まぐれで二足歩行するようになった知能の高いサンショウウオたちが偶然人間に発見され、道具を与えられ、言葉を教えられることによって、やがては人間を脅かす存在となってしまいます。最初のうちは人間にとっての安価な労働力として重宝されてるあたりは、サンショウウオもロボットと同じですね。(最初にサンショウウオにナイフを与えたヴァントフ船長は、さながら人類に火を与えたとされる神話のプロメテウスのよう。あっさり出番なくなりましたが;)

    二本足で歩き人間の言葉を話すサンショウウオの存在は、ファンタスティックであると同時にグロテスクで、彼らに対する人間の対応は、SFの姿を借りつつ、現実社会に対する辛辣な皮肉でありパロディでもあります。時代背景として1936年当時台頭してきていたナチスドイツへの批判的部分もあり、たとえばジョージ・オーウェルの「1984年」しかり、一見フィクション色の濃いSFというジャンルのほうが、社会に対する痛烈な批判を孕んでいるというのは興味深いですね。

  • 自分の世界が危うくなるたびに優しい者に甘えつつ理屈を振りかざす私個人のように、社会も弱い労働力や、教育や、法律で、いつも何かをねじ伏せようとするけれど、結局どうにもならない。山椒魚に支配されてゆく現実を前に、哲学者が書き始める人間のエピローグに「そもそも人間には、幸福になる能力があるのか」(一個の人間ではなく人類には)という一文があり、数年ぶりにその言葉を思い出したような気分になる。架空の新聞記事を辿るような奇妙な構成と、あいまに出てくる市井の人たちの慎ましい生活描写もよかった。

  • 資料ID:C0000929
    配架場所:2F文庫書架

  • 読んで損はしない。

    以下内容含む。



    『山椒魚戦争』と聞いてまず思い出したのは、映画『猿の惑星』シリーズだ。猿対人間のように、山椒魚対人間という話なのだろうと予測した。それと同時に、『猿の惑星』がそうであったように、『山椒魚戦争』もまた現実の社会への風刺を含んでいるのだろうということだ。実際そうだったし、これは作者が明確に「作者の言葉」のなかで述べている。曰く「私がこの作品で描いたのは、ユートピアではなく、現代なのです。それは未来の事態についての憶測ではなく、現代の世界、いまわれわれが生きている世界を、鏡に映し出したものなのです。私にとって問題なのは、空想ではありませんでした。そんなものなら、私にはいつでも好きなだけ、タダどころか、お添え物をつけてさしあげます。私にとって問題なのは、現実だったのです。」(11-12頁)。ここで作者のチャペックは彼自身が生きている現代を念頭に置いているが、本書で映し出されている「現代」あるいは「現実」は、今生きる私たちの現代や現実の映しともなり得ることは、本書を読めば誰もが身につまされることだろう。
     本書は不思議な構成になっている。一貫した主人公や視点があるわけではない。インタビューや新聞・雑誌の記事、学術論文など。ある人物に焦点を当てた物語の短編形式もある(ただしこれも書き方がおかしくて、地の文の語り手が変わったり、とにかく主人公らしきものは立てられない)が、全体的には上記した様々な形式の雑多な資料集といった具合。もっと精確に言えば、山椒魚と人間の出会いから山椒魚戦争で世界が破滅するまでの数十年の歴史を描いた歴史物という印象。それゆえ、一人の主人公から語られるお話よりも、一層リアリティのある読み物になっていて、それはチャペックがこの本をたんなる娯楽作品にとどめたくはなかったという意図から来るのだろう。そのように第三者が著した歴史物という体裁をとっておりながら、しかし人間の心理描写は木目が細かい(例えば第一部6から始まるエイブのお話は青少年の甘酸っぱい様を見事に描いていて、ここだけ読むと別の作品かとおもえるほど。)。これもチャペックの人間に対する関心の深さからくるのだろう。だからこそ、人間という生き物がどうしようもなく行きついてしまう「ユートピア」(今の言葉で言えば「ディストピア」)を描くことができたに違いない。この本は山椒魚の話でもあるわけだが、実のところ人間への深い愛に根ざした人間への遣る瀬ない思いが全体を貫いている。

  • 恐ろしい想像力。

  • いかにも奇妙な本

    ビジネス書ガイドブックにかなりの確率で載っている本書
    いつも気になりながら、スルーしていなたのだが、思い切って購入

    タイトル通り、本書を読み終える頃には頭から山椒魚が離れないのだが、本書のメインのテーマは決して山椒魚についてではない。

    人間のおろかしさ

    それがいたたまれない程に記されている。

    インパクト大

  • 日本人には書けないような、独特の作風。当時の各民族の典型的な偏見がまた面白い。SF好きも、歴史好きも楽しめる良作。

  • 京都市水族館で見た山椒魚が気持ち悪くて印象に残ったので検索したのがきっかけ。内容的にはストレートな風刺だけど、創りこみ方が細かくてリアルで面白かった。山椒魚に人間と同じ教育を施そうとするシーンの醜悪さが良い。最近レイ・ブラッドベリの「火星年代記」も読んだんだけど、人外の生き物に善意で人間の基準をおしつけるというネタがこちらにもあって、考えることは同じだなと思った。

  • 最初はやや浮いた存在に感じ、いかにも空想の産物にしか思えなかった「人類に近い能力を持った山椒魚」が、読み進めるうちに恐ろしいまでの現実味を持っていく感覚は、もはや快感です。別の惑星、宇宙を翔ける船、格好良いガジェットが登場する作品も好きですが、やはりこういった「すこしフシギ」なSFはイメージが湧きやすく入り込めます。綿密な設定が説得力を生む、やけにリアルなホラ話(明らかに起きているはずの生態系破壊に関しての描写がないのは少し残念)ですが、あの終わらせ方がかえって痛烈で、現実に目を向けさせてくれます。

  • 山椒魚が世界を侵略するSFものである。
    クトゥルフは関係ない

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山椒魚戦争 (岩波文庫)の作品紹介

赤道直下のタナ・マサ島の「魔の入江」には二本足で子供のような手をもった真黒な怪物がたくさん棲んでいた。無気味な姿に似ずおとなしい性質で、やがて人間の指図のままにさまざまな労働を肩替りしはじめるが…。この作品を通じてチャペックは人類の愚行を鋭くつき、科学技術の発達が人類に何をもたらすか、と問いかける。現代SFの古典的傑作。

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