千一夜物語 7(完訳) (岩波文庫 赤 780-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003278079

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  • 「黒檀の馬奇談」三人の美しい姫と、一人の王子カマララクマールがいるペルシャの王様に、三人の学者がそれぞれ貢物をする。一人目は、敵が来ると喇叭を吹いて知らせる、宝石で飾られ黄金で造られた人形、二人目は、24羽の雌孔雀と1羽の雄孔雀が時間を知らせる時計、三人目は、空を飛ぶ黒檀の馬。すべてお気に召した王様は学者たちの求めるとおり褒美として三人の美しい姫をそれぞれと結婚させることに。

    ところが、末の一番美しい姫は、自分の相手である黒檀の馬を造った学者が世にも醜い老人であることにショックを受け、兄であるカマララクマールにその悲運を訴える。カマララクマールは可愛い妹のために父王に物申すも、邪悪な学者は王子を陥れようと画策、乗り方を教えないまま王子を黒檀の馬に乗せ、飛ばせてしまう。ところが賢い王子は馬の操縦方法を自ら会得、辿り着いた先で美しい姫と恋に落ち・・・。

    姫と王子の恋愛ドタバタはこの際置いといて(物語を波乱万丈にするためだろうけど王子の行動が大変マヌケでイライラするので・苦笑)興味深いのは冒頭で王に献上される三人の学者の制作物。学者というより科学者なのだろうか。どれも魔法ではな一種の機械仕掛けの、現代的に言うならロボットの原形みたいなものなのが凄い。空を飛ぶ木馬はさすがに魔法じみているけれど、一応操縦レバーみたいなものがあって、メカっぽいのが面白い。

    「女ぺてん師ダリラ」~は、いろんな悪党が出てくる悪漢物語で、どいつもこいつも悪党なんだけど、悪党同志で陥れあったり、なんやかんやで恋に一途だったりで面白く読めました。

    「漁師ジゥデルの物語または魔法の袋」は古い民話に世界共通の、三人兄弟、末っ子最強説がベースにありつつ、宝物を手に入れるための冒険や、食料がどんどん出てくる魔法の袋、こすると魔神が出てきて願いを叶えてくれる指輪など、魔法アイテムも豊富で波乱万丈。ただ現代人的にみると、一切改心せず何度でも末弟を陥れるクズ兄二人を、それでも甘やかしてしまう母の存在というのに複雑な心境にさせられてしまった。あと何でも願いを叶えてくれる魔神に、たとえば美しい女奴隷を40人と頼むと、魔法の力で出してくれるわけじゃなくて、あっちこっちから攫ってくるので、ちょっとそれはどうかと思う…。

    下ネタ小話「匂える園」~を挟んで「陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラー」は、なんと男の人魚が登場する!(※海のアブドゥッラーというのがそれ)漁師の網にかかって恩返しする系ですが、男性の人魚というのは珍しいパターンかも。


    ※収録
    第414-432夜:黒檀の馬奇談
    第432-465夜:「女ぺてん師ダリラ」とその娘の「女いかさま師ザイナブ」とが、「蛾のアフマード」や「ペストのハサン」や「水銀のアリ」とだましあいをした物語
    第465-487夜:漁師ジゥデルの物語または魔法の袋
    第487-501夜:アブ-・キールとアブ-・シールの物語
    第502-505夜:「匂える園」の道話(三つの願いごと/若者と風呂屋のあんま/白にもいろいろ)
    第505-515夜:陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語

  • 黒檀の馬奇談
    「女ぺてん師ダリラ」とその娘の「女いかさま師ザイナブ」とが「蛾のアフマード」や「ペストのハサン」や「水銀のアリ」とだましあいをした物語
    漁師ジゥデルの物語または魔法の袋
    アブー・キールとアブー・シールの物語
    「匂える園」の道話
    陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語

  • 三つの願い事、やっぱりあちらこちらにこの手の話はあるのね~と。
    魔法の袋もどっかで読んだことあったかも。
    でも終わりは切ない。

  • 2008/01/31

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著者プロフィール

とよしま・よしお
1890(明治23年)~1955(昭和30年)。
日本の小説家、翻訳家、仏文学者。
久米正雄、菊池寛、芥川龍之介らとともに
第三次「新思潮」の同人として世に出る。
代表作に、
短編小説集『生あらば』(1917年)、
中編小説『野ざらし』(1923年)、
随筆集『書かれざる作品』(1933年)、
長編小説『白い朝』(1938年)、
短編小説集『山吹の花』(1954年)など。
当時ベストセラーになった『レ・ミゼラブル』の翻訳で知られる。
太宰治の葬儀の際には、葬儀委員長を務めた。

「2018年 『丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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