ペドロ・パラモ (岩波文庫)

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制作 : 杉山 晃  増田 義郎 
  • 岩波書店 (1992年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279113

ペドロ・パラモ (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 雨が降った後の湿った土の匂いのする小説だった。その土の下にみんな眠っているのだけど、わりと自由に?出歩いているようで…。
    人口密集地に住んでいるとちょっと想像しにくいのだが、日本でも過疎地で暮らしたことがある人にはわかる感覚じゃないかなと思う。以前は人々の生活の音が響いていた集落からだんだんと人が離れて行き、かつての気配だけが残っている。過疎の山里でたくさんのかかしを作っている人がいるけれど、その人もやはり気配の残響を追っているのだと思う。
    メキシコの死者のお祭りってすごく明るいイメージがあるのだが、この小説の死者はなんだかみんな辛かった現世に囚われて死んだ後も成仏できてない感がひしひしと…。「生きるってことだけで、もういいかげん苦しいんだから、死んだら別の世界に行けると思うからこそ、足を動かす力も湧いてくるってもんだろう。」しかし死んでも別の世界には行けないんだな…。そして亡者の街が出来上がっている。
    雰囲気としては「アブサロム!アブサロム!」×「ペドロ・パラモ」≒「百年の孤独」+「予告された殺人の記録」という感じかな?降り続く雨や、口に土を含む、不眠症、近親相姦などなど、共通のモチーフがたくさん見つかって面白かった。
    完結しない堂々巡りのマゾ文学。人は永遠に苦しみ続けるのか。

  • 埃と雨の匂いに満ちた長い詩のような小説。ひとつひとつのエピソードが閉じ込められた、いくつもの透明なガラス板を透かし見て浮かび上がってくる映像から、コマラの町とひとびとの面影を知るような読書体験だった。世界は悲しみと暴力にあふれていて、だからこそ物理的につなぎ合わされてしまっているかのようなつよい思いを人を持たずにはいられないのに、その気持ちのたどり着く場所がどこにもない。ただそこに置き放しになって、乾いて崩れていってしまうさまが痛ましくてうつくしい。

  • ★★★
    顔も知らない父親、ペドロ・パラモを探しに来たファン・プレシアドがたどり着いたのは生者と死者の交わる町だった。町をさ迷ううちにファン・プレシアドも息絶え、墓の中で死者たちは囁き続ける。
    ペドロは冷酷な地主だった。町は発展するが、ペドロが唯一欲したのは、幼馴染のスサナだけだった。30年ぶりに再会したスサナは精神に異常をきたし、父親とは近親相姦にあった。スサナを手に入れたペドロだが、二人はまともに言葉を交わすことも出来ない。スサナの死後ペドロは町を荒むに任せる。数年後、ペドロの私生児の一人がペドロを殺す。ペドロは乾いた石の様に大地に倒れ、その数年後、ファン・プレシアドがペドロを探しに町へやってくる…
    ★★★

    文学の凄さが伝わってくる傑作です。過去と現在が交わり死者と生者が語らう幻想的な筆運びの中にメキシコ社会が見えてくる作品。作者のルルフォはメキシコ革命の混乱で土地と家族を焼かれ、生涯2冊の本しか残していませんが、その2冊をして史上最高の作家。

  • 奥深い、底知れぬ物語。
    死んだ男をめぐる噂話が、死んだ人間たちの間で語られ、死んだペドロ・パラモの人物像がうすぼんやりと形作られていく。伝え聞きの集合体として物語が建設されており、それらを細胞に、町の盛衰が語られる。鮮やかな小説。
    ガルシア=マルケスに「百年の孤独」を書かせた小説という、ある意味で究極の評価を得ているようだが、そういう文学史的注釈を抜きにして面白い。

  •  1955年発表。メキシコの小説家、フアン・ルルフォ著。父ペドロ・パラモを探しに母の故郷コマラを訪れた主人公は、死者達のささめきに呑まれていく。七十の断片で構成され、時系列が激しく前後し、死者の会話が入り乱れる。
     不思議な小説だった。まずストーリーは、はっきり言って一回読んだだけではよく分からない。解説と照らし合わせながらもう一度読み返してみると大体の内容は掴める。しかしむしろ、この小説はストーリーではない部分に核がある気がする。淡々とした断片の配置が生み出す浮遊感、まるで当然のことのように交わされる死者との会話、簡潔で不可思議な詩的表現などから醸される雰囲気。円環的なストーリーのせいでもあるのだろう。たどたどしくて不安定というか、切ないというより寂しげというか、まさに幽霊的な感じがする。
     ラテンアメリカの小説・架空の町という設定・前衛的手法という点でガルシア=マルケスの「百年の孤独」と比較されることもあるようだが、コマラが死者の町ということだけあって、「ペドロ・パラモ」はだいぶ静的で淡々としている印象受ける。

  • 渇望の書をやっと読めた。ばらばらのパズルのピースを戸惑い弄びながら埋めていくと突然ハッと視界が開ける瞬間が訪れる。濃密に生と死が混濁し、時空は歪められ、終わりのない物語の渦の中に閉じ込められる。遠心力の外壁に囚われた閉塞だ。土地に縛られ幾筋もの血を大地に染み込ませ、死者たちがささめきとなって甦る。幽玄な死者の世界に荒くれどもの闊達で活き活きとした会話が谺する。この瑞々しい生気と崩れ腐りゆく肉体とのアンバランスなコントラストが眩く美しい。再読してもっともっと奥行きを探りたい。

  • 面白かった!!読み終わってすぐに、もう1回最初から読み直してしまいました。全貌を知ってから読み直すと、なるほどこの人物が言っていたのはそういうことか、とわかるところがたくさんあります。

    母親が死ぬ間際に言い残した父親の名前(ペドロ・パラモ)だけを頼りに母の故郷へ父に会いに出かけた青年フアン・プレシアド。しかし彼が出会う人、出会う人、常に次にあった人物から「○○はとうに死んでるよ」と聞かされ(怖すぎる!)、どうやら彼の訪れた父の街は亡霊ばかりが住む死者の街と化してるらしい。馬の亡霊まで走り回ってるし、誰が生きてて誰が死んでるのかわからずちょっとノイローゼ気味になってきちゃったフアンくん、ついにうっかり自分自身も死んでしまい、気づいたときには土の中というびっくり展開。それでも一緒に埋められたドロテア婆さんとおしゃべりしたり、他の死者たちの独り言を聞いたりしながら、少しづつ父親ペドロ・パラモについて知っていきます。

    このフアンの旅を主軸にしつつも、ペドロ・パラモ自身の回想や、別の人物のエピソード(時間軸ばらばら)がランダムに挿入されるので、いっそう世界はシュールなことに。だんだんわかってくる稀代の悪党ペドロ・パラモのさまざまな悪行と、フアンの母との結婚の経緯や、別の女性に産ませた息子の死、そして、そんな悪党のペドロがただ一人愛した初恋の女性スサナとの報われない一方通行の恋。そしてペドロを殺したのは・・・

    この独特の死生観、なんともラテンアメリカらしく独特だなあと思います。ばらばらの断片から全体を組み立てる面白さもあり、それぞれのキャラクター(死者たち)の言い分も共感できたり滑稽だったりとんでもなかったりで悪党も憎めない。作者は寡作だったようですが、これ1作でガルシア=マルケスと並び称される理由も納得。何度でも読み返したい傑作でした。

  • 何度読んでも心が震える。この物語が終わってしまうのがもったいなくて、ゆーっくり、ゆーっくり読む。訳も素晴らしいと思います。映画化されているそうですが、この世界をどのように映像化しているのかという興味はあるものの、こわくて観られません(恐怖ではなく)。

  • ラテンアメリカ文学は癖が強くて何度も挫折していたんですが、これは比較的読みやすかったです。
    一見バラバラに散らばる記憶の断片が少しずつ束ねられて、ぶっとい縄のように大きな物語になるんですよ、こいつはすっげぇや。
    最後まで読んで、もう一度読むと更に話の流れが鮮明になり、細部に気づいて新たな感情も湧き上がってきます。それは不快感だったり、瑞々しさだったり、やるせなさだったり。
    メキシコって本当に死者に親しい文化なんですね。競馬場のおっちゃんレベルで話しかけてきますよ。

  • すごい!ただただ、すごい!

    一読して衝撃を受け、ただいま再読中。また新たな感動に包まれている。この少ないページ数でこの濃密感は、ほかではなかなかお目にかかれない。ラテンアメリカ文学に弱いな、わたし(汗)

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ペドロ・パラモ (岩波文庫)の作品紹介

ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。

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