続審問 (岩波文庫 赤 792-3)

  • 岩波書店
3.93
  • (8)
  • (12)
  • (7)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 235
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279236

作品紹介・あらすじ

ボルヘスのエッセイの極北。古今東西の作家や文学作品を思いも及ばぬ驚異的な連想力で結びつけ、作家をつうじて現れた文学表現の総体性もしくは伝統を論じる文学論の奇観。短篇小説と同じよろこびを感じながら読むことができる。底知れぬ奥行きをもつ評論集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 文庫で読めるボルヘスは大体読んだつもりでいたのだけどこれをスルーしていたことに気付いて今更。小説じゃなくて小難しいめのエッセイだから回避した記憶がうっすら。案の定、かなり難解で苦戦しつつもなんとか読了。

    大半が文学論なのだけど、気軽な文学エッセイと違ってとにかく哲学的。解説で翻訳者が「形而上学的傾向の文学論集」と書いていたけれどまさにそれ。出てくる用語が、文学じゃなくて哲学のそれなので馴染みのない単語も多く、ちょっと翻訳者を恨みかけたけれど多分ボルヘスの言葉使いがもともとこういう感じで、忠実に翻訳するとこうなるんだろう。

    同じく解説に「ボルヘスの作品でエッセイとフィクションの境界が曖昧なように、エッセイの場合も文学論なのか哲学論なのか、その性格はしばしば判然としない」とあって、顎が埋まるほど頷く。ゆえに、よく知っている作家や詩人の名前が出てきても、気軽に共感できないし、知らない作家の話であっても「わあ!面白そう、読みたい!」みたいな感じにはほぼならない。

    とはいえ、なんとなく機会がなく読まずにきたコールリッジや、大昔に『緋文字』を読んだきりのホーソーンあたりは、改めて読んでみようかな、くらいは思いました。全体的には自分にもう少し哲学的な予備知識というか哲学的思考回路を強化しないと完全には理解できないのが心苦しかったです。

    ※収録
    城壁と書物/パスカルの球体/コウルリッジの花/コウルリッジの夢/時間とJ・W・ダン/天地創造とP・H・ゴス/アメリコ・カストロ博士の警告/カリエゴ覚書/アルゼンチン国民の不幸な個人主義/ケベード/『ドン・キホーテ』の部分的魔術/ナサニエル・ホーソン/ウォールト・ホイットマン覚書/象徴としてのヴァレリー/エドワード・フィッツジェラルドの謎/オスカー・ワイルドについて/チェスタトンについて/初期のウェルズ/ジョン・ダンの『ピアタナトス』/パスカル/夢の邂逅/ジョン・ウィルキンズの分析言語/カフカとその先駆者たち/亀の化身たち/書物崇拝について/キーツの小夜鳴鳥/謎の鏡/二冊の本/一九四四年八月二十三日に対する註解/ウィリアム・ベックフォードの『ヴァセック』について/『深紅の大地』について/有人から無人へ/伝説の諸型/アレゴリーから小説へ/ラーヤモンの無知/バーナード・ショーに関する(に向けての)覚書/歴史の謙虚さ/新時間否認論/エピローグ

  • ボルヘスが30代後半から50代前半にかけて執筆されたエッセイ集。ここでは小説や詩作で用いられる意匠=衣装は剥ぎ取られ、工匠者としてのルーツを考証可能とする裸の知性そのものに触れることが出来る。言及し研究された書物は西洋史を縦断しつつもスペイン語圏の作家まで無数に上り、そのテーマも文学論から神学論、哲学的命題と横断的である。バベルの図書館の元ネタとなる作品が存在していたのは驚きであった。しかしボルヘス的なものは言及すればするほど遠ざかる、まるで彼の作品の主題となる無限後退性そのものの様な気がしてしまうのだ。

  • エッセイというよりは論文に近い印象を受けるし、小説かもと思う瞬間もある。特に、一番最初の『城壁と書物』は読み進めてしばらくは「エッセイなんだよなぁ?」と疑ってしまった。

    まぁ、それは『伝奇集』読了後すぐに読んだせいかもしれないけれど。

    中身は世界中(と言っても差し支えないと思う)の文学、思想がぎっしり。南米や作家に関するものならある程度の知識があれば理解できる。しかしその他になると全くのお手上げ。分析言語だとか、新時間否認論だとか、「なにこれ……?」と思う単語を挙げていくときりがない。

    それにしてもヨーロッパ・アジアの文学や思想まで網羅しているとは思っていなかった。「図書館か!」とTwitterで呟く位、ボルヘスの知識の広さに驚いた。

    とにかく馴染みの無い言葉ばかりで、正直全てを読み込むまでには至らなかった。そういう意味での評価なので、あまり正当とは言えない……。

    あー、本当難しかった。どのくらいの本を読めば理解し尽くせるだろうか……笑

  • ボルヘスの頭の中のごく一部をほんの少し覗けたような気がする。
    作家、作品、思想、哲学、次々とキーワードが並び、膨大な知識と理解があってこその説得力。耳慣れない言葉が分解されて頭にするすると入ってくる不思議。そして名前の上がる本はことごとく読みたくなる、さすが人間図書館。

  • 夢の国で授けられた花を目覚めて手の内に見出したら、望みを抱いてしまう。再びあの場所に帰れるのではないかと。

  • 読みたかったとこだけつまみ読み
    面白かったけども、短編集的なものを全部読む、というのがなかなかできない、、、

  • どのエッセイも、これは世界だとしか言いようがない。複数の世界でなく、一つの世界。
    いわゆる世界文学、古典と言われるものの知識があった方が味わえる。

    ・城壁と書物:統治とは
    ・アルゼンチン国民の不幸な個人主義:国家には不都合な、しかし、国民には理想な性向
    ・有人から無人へ:聖書にある神の人間臭さ。無であるがゆえの愉快さ

  • 訳:中村健二、原書名:OTRAS INQUISICIONES(Borges,Jorge Luis)

  • 5/4 読了。

  • “私(ボルヘス)はこれまで生活をするというよりは本を読んできた”というボルヘス自身の言葉(うろ覚え)が、本書のどこかにあったと思う。どこだったか? 本書は一冊まるごと全てが迷宮なので、いま一度初めから読まないと、ふたたび出会うことはないかもしれない。
    もしかしたら私の思い込みで、違う著書だったかもしれない。
    まぁいい。“生活をするというよりは本を読んできた”人の著書をすべて“理解”するには、“生活をしながら本を読んでいる”自分では到底無理なのだ。諦めよう、ウン(笑)

    さておき、良いエッセイというのは読者を動かすものだと思っている。食べ物に関するエッセイなら食べてみたいと思わせる、実際にお店へ向かわせるといったような。
    本書はその意味で間違いなく良エッセイ。『城壁と書物』から『初期のウェルズ』あたりまではムチャクチャ楽しく、少なくとも私は“動かされた”。

    いくつかの項は上述した通り「解んねぇよ」で終了してしまうが(笑)、その解らなさを楽しみつつ、部分的に非常に面白いと感じるくだりを拾い上げたりできるのが素晴らしい。
    (神=球体ってことは、TVドラマ『プリズナーNo.6』に登場する球体は神ですかとか、J.W.ダンの駄目出しされた時間概念を、某アニメ劇場版にあてはめて考えると大変興味深いのですがとか、時代を超えて他メディア・他ジャンルに照らし合わせが可能という汎用性の高さ)

全14件中 1 - 10件を表示

J.L.ボルヘスの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×