緑の家(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003279618

作品紹介・あらすじ

町外れの砂原に建つ"緑の家"、中世を思わせる生活が営まれている密林の中の修道院、石器時代そのままの世界が残るインディオの集落…。豊饒な想像力と現実描写で、小説の面白さ、醍醐味を十二分に味わわせてくれる、現代ラテンアメリカ文学の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 交通手段として主に川を船で移動する。その先々で色々な人物が出てくる。と同時に下流の街での少年グループの徘徊の様子が入る。とくにそれぞれ両方の土地に居る女性を上手く書いている。時間のズレと場所のズレが、絡み繋がりゆくのだ。運命の変転や、若さゆえの喜びや悲しみ怒りがある。滑稽さもあり人間の行動の不可思議さを味わえる。音楽と酒場の話。どこか行っている間に変わりゆく。

  • 「文学は熱い火だ」スペイン語圏の小説に送られるロムロ・ガジェゴス賞(第一回目)を取った作者の言葉。政治活動も行いペルー大統領に立候補したこともある。永遠のノーベル賞候補者。
    ⇒追記:2010年ついにノーベル文学賞受賞!これを機会にラテンアメリカ文学の復刊お願いします!

    ===
    砂の降る町、ピウラに流れた男が建てた「緑の家」という娼館の過去と現在。アマゾンの密林と都会。インディオの娘を一族から連れ出しキリスト教の教育を強要する修道院。インディオを手下に詐欺や略奪を繰り返す日系人とその妻と仲間たちの物語。搾取する白人に抵抗しようとするインディオの末路。故郷に帰ってきた軍曹と、昔の仲間と、緑の館の娼婦となっていた軍曹の妻。
    川の支流のように語られる別々の話が、最後には壮大な一つの流れとなる。
    ===

    南米文学ではまったく違ったものが同居し物語を為す。都会の町から少し離れれば原始の密林。生者と死者が語り合い、雑多な人種が混在する。搾取する者、される者、それらの中間にいる者。都会で文明は発達しても、密林では太古からの生き方もある。南米小説の特徴としていくつもの時代や場所が交錯し、時系列が錯綜するというものがあるが、その中でも特に錯綜している作品。

    同じ段落で過去と現在の会話が混在し、いくつかのテーマが細切れで語られるため別の人物と思って読んでいたら同じ人物の過去と現在だったり、また同じ人物と思っていたら同じ名前を付けれらた別人の話だったり。しかし文章構成は幻術的であるけれど内容はきわめてリアリズム。
    ストーリーの違いは文体の違いで表現される。一番過去と現在が錯綜しているのが略奪者の日系人の物語。病で療養序所に向かう現在に、それまでの過去がない交ぜに語られる。
    話の中心であるピウラでの語り口も年代によって変わる。過去のピウラは三人称であまり心情は深く触れないことにより伝説的印象を深める。現在のピウラは意気のいい会話調で語られ、終盤は誰かが登場人物に語りかける二人称形。この語りかけが純粋に美しい。「これでいいのかどうか、最後にもう一度考えてみるのだ。人生とはこういうものなのかどうか、もし彼女がいなかったら、あるいは彼女とお前の二人きりだったらどうなっていたか、すべては夢だったのかどうか、現実に起こるこというのはいつも夢とは少しばかり違うのかどうか、よく考えてみるがいい。そしてこれが本当に最後だが、お前はもう何もかも諦めてしまったのかどうか、そしてもしそうなら、それは、彼女が死んでしまったからなのか、それとも自分ももう年なので、次に死ぬのは自分だと悟っているからなのかどうか、そこのところをよく考えてみるのだ」

    • 淳水堂さん
      りまのさん
      こちらこそフォロー、いいねありがとうございます!
      私は海外文学が多いです。
      りまのさんの載せている見仏記やパームシリーズも...
      りまのさん
      こちらこそフォロー、いいねありがとうございます!
      私は海外文学が多いです。
      りまのさんの載せている見仏記やパームシリーズも持っています。パームシリーズは現在まで追いかけてます。しかし今のペンネームがどうも馴染まなく、前のお名前で呼びたくなってしまいます。。(たしか前のお名前は別れた旦那さん由来だから変えたんでしたっけ、呼ぶべきではないんでしょうけど)

      この「緑の家」はペルーの作家の小説で、「緑の家」とは砂漠に突如として建てられた緑に塗られた娼館を意味してます。作者自身が子供の頃本当にそういう光景があったようで。
      映画とはまた別物です。映画の方は「緑の館」でしたね(笑)。映画の「緑の館」の原作は読んだことないのですがウィリアム・ハドソンだそうです。こっちは妖精のような少女のくらす密林の家でしたね。

      それでは今後もよろしくおねがいします!

      2021/01/17
    • りまのさん
      淳水堂さん
      そうでした!間違ってしまって、恥ずかしいです〜!!
      教えて頂き、ありがとうございます。…あぁ、恥ずかしいのであります、、、いつも...
      淳水堂さん
      そうでした!間違ってしまって、恥ずかしいです〜!!
      教えて頂き、ありがとうございます。…あぁ、恥ずかしいのであります、、、いつもこんなです…。
      2021/01/17
    • りまのさん
      淳水堂さん
      ふたたびお邪魔します。
      淳水堂さんも、パームシリーズを、全巻、読んでいらっしゃるのですね。なんだか親近感…♡
      パームは26巻から...
      淳水堂さん
      ふたたびお邪魔します。
      淳水堂さんも、パームシリーズを、全巻、読んでいらっしゃるのですね。なんだか親近感…♡
      パームは26巻から、獣木野生という、そのまんまのワイルドなペンネームになられ、書店で注文する私などは、たんび恥ずかしいおもいを、しております。ずいぶん若い頃から、追いかけてます。リアル本友には、そんな人いないので、嬉しいです♪
      パーム、42巻で、ジョゼが…!!
      パームシリーズも、いよいよな展開となってきました。
      共に追いかけてゆきましょう!
      嬉しい (>ω<) りまのより。
      2021/01/18
  • 面白かったー!時系列はバラバラ、人物も全く違うエピソードがいくつも、次はこれ、その次はあれ、しばらくしたらまたこれ、という具合に綴られて、おまけに何の前触れもなく、まるで記憶の流れそのもののように語り手がコロッと変わるし、変わったと思ったらすぐにまた元に戻ったりで、これはメモ取りながらでないとわけわからなくなるかと思ったら、いくつか繋がっているような部分も把握できたので、そのうちわかるかも、と気楽にでもすぐに読まなきゃ絶対に忘れるから、下巻にドドドッとなだれ込みます。リョサすごい!

    短編「小犬たち」中編「継母礼賛」は正直あまりピンとこなかったけど、リョサは長篇の人なのかしら。

  • いやー、ボルヘス読んだ後だと読みやすい。同じラテン文学なのに、同じ岩波なのに。
    もちろん、場面がコロコロ変わる、会話だけが続き、しかも改行もないまま、急に場面が転換する、などクセはある。ただ非常に映画っぽくて面白い。
    さて、上巻で一番印象に残ったシーン。
    元インディオだった修道女が、修道院に連れられてきたインディオの姉妹を逃がすとき、妹が彼女の髪のノミを探す。ノミをとって食べるというのがお礼のつもりなのだ。もちろん、キリスト教化され文明人となった彼女の頭にはノミはいない。少女はノミをとるふりをする。修道女は「私の髪にノミがいればいいのに」と切に思う。
    うーん、なんとも切ないシーンだ。

  •  場面が途中で切り替わったりして読むのに苦労したが、話自体は面白かった。改行無しで物語が進むので早く読み終えることができた。

  • 南米文学の巨匠、バルガス・リョサの初期の長編。

    この小説の楽しみは、なんといってもその構成の巧みさでしょう。場所と時を異にする複数の話が同時進行し、徐々に関係性の糸が紡がれていき、ついにはさまざまなひと、場所、時が一つの巨大な織物のようになる。

    ペルーのアマゾンの密林地帯、その中の川沿いの街サンタ・マリーア・デ・ニエバと、海岸近くの砂漠の街ピウラを主な舞台として、濃密な人間劇が繰り広げられる。

    ピウラの娼館、最初の〈緑の家〉を作ったハープ弾きドン・アンセルモ。最初の〈緑の家〉は、ドン・アンセルモの子を身ごもった盲目の孤児、少女アントニアが出産時に亡くなったことをきっかけに、ガルシーア神父の焼き討ちに遭うも、遺児 ラ・チュンガにより〈緑の家〉が再興される。そして、ハープ弾きドン・アンセルモの楽団誕生の経緯。

    アマゾンの密林地帯の街、サンタ・マリーア・デ・ニエバの修道院で育てられたインディオの娘ボニファシア。修道院で生活していたインディオの娘たちを脱走させた罪で、修道院から追放され…。

    インディオたちから安く買い取ったゴムの密輸で荒稼ぎしている商人レアテギ。サンタ・マリーア・デ・ニエバの治安警備隊員たち。彼らと、アマゾンの密林のインディオの男フムをめぐる物語。

    アマゾンの密林の島で、盗賊としてインディオたちと生活している日系人フシーアとその妻ラリータ、そして船頭ニエベスをめぐる物語。

    ピウラの貧民街マンガチュリーアの番長たちと、〈緑の家〉をめぐる物語。

    登場人物の多さと (読むときにはメモを作ることをおすすめします 笑)、場面転換が独特な文体にさえ慣れてしまえば、南米ペルーの街とアマゾンの密林の濃密な空気の不思議な魅力にとりつかれること請け合いです。

    最後に僕の好きな場面の引用をひとつ。
    〈緑の家〉と呼ばれるのは、建物が緑色に塗られているから。そして、〈緑の家〉を作った密林出身のドン・アンセルモのハープも緑色。その理由が語られる場面。

    「密林はたしかに美しい。むこうのことはすっかり忘れてしまったが、あの色だけはいまでもはっきりと覚えているよ、ハープを緑色に塗ってあるのは、そのせいなんだよ。」

  • 冒頭から何やら不穏な感じとスピード感。これは面白そう!と。
    背中をグイグイ押されるように強引に読まされてる感じ。疲れるけれどもやめられない。とにかくこの上巻は人の名前把握するのに必死

  • ペルー、ピウラの町、5つの物語が怒涛の如く、だが極めて映画シーン的に同時進行する。リョサの凄さが解りすぎて余りある。読み始めは何の脈絡もない様な会話、呟き、場面描写が時系列を無視してぱっぱっと展開。センテンスが短いから、必至で着いて行く。娼婦の館~緑の家はいわば象徴とでも言おうか・・闇の中に蠢く様なキリスト教修道院・・のみを取ってやるインディオの娘、いないのにいる振りする修道女と採るふりの娘・・泣かせる。インディオの集落はあたかも石器時代の様相。流れ者が建てた緑の家とその仲間たちが、5本の縄の様に撚りまくられどうなるか・・下巻愉しみ。

  • ペルーの奥地を舞台に、さまざまな登場人物が複雑にからみあった物語です。
    複数の物語が同時進行する上、時間軸も場所も異なる物語が平行して語られるので、最初はかなり混乱しました。
    しかし断片的な物語のつながりが見えてきたら、面白くなってきました。
    最終的に物語がどんな形でまとまるのか、続きが気になります。

  • 悪い奴らが拳で解決のド南米ドラマ。どう結ばれるのか何が主題の話なのか上巻が終わった時点ではさっぱりわからないのだけれど、とにかく先が気になる。再読時にはさぞや気持ちいいだろうなと思いつつ下巻に突入。

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