やし酒飲み (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003280119

感想・レビュー・書評

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  • 奇想天外!現代における神話!って感じの話。
    神話なので主人公が何考えてるかいまいちわからない…神話なので…。

    ですます調とだである調の混ざる文体なので、翻訳文学読みづら!と思っていたけれど、それは原文の調子を再現しようとした結果らしい。なるほど考えられてて面白い。

    語られてる内容は神代の話でも、たとえや描写が現代なのが面白い。フットボールスタジアムのような広い開けたところで踊るドラム・ダンス・ソングとか(うる覚え)
    主人公が不死になる経緯が面白い。白い木の中に入るときに、我々夫婦は死を売り、恐怖を月○○ドルの貸賃で貸した。白い木の中から出た時に、我々は恐怖を返してもらったが、死はもう売ってしまったので、返してもらえなかった、っていうの。
    不死は、多くの神話の中で、英雄たちがこれを求めて冒険したり彷徨ったりするものなのに、こんな軽いノリで手に入れちゃうんだ?!っていう。

    あと、実はガイコツである完璧な紳士に出会ったシーンも好き。私は彼を見たときに、神様が私を彼のように完璧に作ってくれなかったことが悲しくて泣き喚いた、っていうの。その表現の仕方好き。

  • お金持ちの父親に甘やかされてるニートくんの話かと思いきや、いきなり「この世のことならなんでもできる神々の父」と名乗るし、いきあたりばったりに出くわす、神や死神や精霊・あやしげな生物たちはなんかみんなちょっと変。奥さん、そんな予言してた?旅から帰ったら死んだはずの父親(両親)になんであいさつにいけるの?とかつっこみどころ満載のはちゃめちゃな物語破綻状態なのになぜかあとひく不思議なイメージ。とんでもない話なのに、旅程の距離と時刻だけはなぜか描写が細かい。ピジン・イングリッシュ、カーゴ・カルトもちょっとまざっておもしろい。

  • アフリカ最大の人口と発展した文化を擁するナイジェリアの作家が20世紀中頃に書いた、アフリカ文学の最高傑作と言われる神話的物語。古事記やオデュッセイアを連想せずにいられない、その荒唐無稽な冒険譚。ジャングルの奥底で出会うブッ飛んだエピソードと登場人物は、時に銃や通貨といった西洋近代的なものと混合し異質な世界観を形成する。物語は想像力を生み、その力は共同体を生み出す源泉となる。願わくば本書が、今も多数の民族と宗教、不安定な政治によって引き裂かれるアフリカのアイデンティティの架け橋となる事を祈ってやまない。

  • 盛りだくさんでした。薄いのに。人だけど神さま?な主人公のはちゃめちゃな旅はやし酒作りを捜していたはずやのに、宇宙規模になっていったりして、面白かった。しかし、この妻になったひとの魅力がいまいち分からん。

  • 純粋に「面白い!」と叫べる作品だ。

    いわゆる幻想小説の類で、とにかくわけのわからないモノ・出来事ばかりだ。ただ、その幻想具合が図抜けている。魑魅魍魎が跋扈する密林の奥の世界は、妄想を超えた「現実的な」幻想の世界なのだ。「赤い」国(政治的なカラーじゃなくて、ただ純粋に「赤い」国です)、白くてのっぺりした大樹(?)、「完全な紳士」などなどが登場する世界。想像がぐんぐんふくらんで、面白い。

    すっとぼけた文体も魅力的だ。これは作者および翻訳者の意図したところで、決してタイプミスでも誤訳でもない。この文体のおかげで、予定調和的で、とぼけていて、わけのわからない話にもかかわらず、違和感なく受け入れられる。わけのわからない世界ならば、わけのわからないコトでも「現実的」に思えてしまうのである。

    ナンセンスな作風は落語に通じるところがあると思った。「混血の町」の裁判は、さながら大岡裁きモノだ。立川談笑師匠が『三方一両損』を「やし酒」バージョンに改作して演じやしないか、と勝手に妄想してしまった。

  • 自分からは逆立ちしても絶対に出てこない物語や世界観、言語、時間感覚を浴びまくれる。ジャングルの恐怖やアフリカ土着の神話的世界観に満たされているかと思えば長さやお金の単位はイギリス風だったり、様々な要素が混ざり合う。行動原理はシンプルでやし酒造りと会うという初志を貫く以外は割と受動的、時間をかけること、とどまること、繰り返すことをあまり恐れない。この点は西洋の合理的な物語とは違うと思う。
    あらゆる存在に対して対等にがっぷり四つで組み合ったかと思えば、次の瞬間には熱が冷めたかのようにさらりとかわしたりする自由さも面白い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/707983

  • 自分専属のやし酒作り夫が死んでしまった。
    大好きなやし酒が飲めなくなるどころか、毎日の様に訪ねて来ていた仲間達も来なくなってしまった。
    死んだやし酒作り夫を探しに行こう。
    一歩村を出れば、そこは怪しげな危険な魑魅魍魎が跋扈する世界。
    不可思議な冒険譚が始まるー。
    その何でもありの世界観に慣れてしまえば、一気にドライブがかかる。

  • アフリカの神話。主人公は自らを「神」と名乗り、ジュジュという強力なお守りを使って様々な困難を乗り越える。10歳の頃からやし酒が大好きで、ある日突然お抱えのやし酒造りが死んでしまい、彼を連れ戻す為に「死者の町」に旅に出る。他の部族を皆殺ししたり、死神を捕えたり、妻をもらったり、妻が預言者になったり、旅路は波瀾万丈。何も考えずに笑いながら読んでも、様々なエピソードの裏にある教訓を読み取りながら読んでも楽しい本。

  •  この辺はまだ、作者がヤングイングリッシュで、でも土着のなんかをアレしてたはず。作者クリスチャンだけど、「冥府にいる頭蓋骨が知人からいけてる部分を借りて地上へ婚活に行く話」は水木しげる先生も、確か別枠で収録してたし。それにしても、作者は第二次大戦中、アジアへ行って日本軍とたたかった程度なのに、イケメンの兄さんが「腕と頭だけになって、カエルのように跳びながら」移動すると言ふジャパニーズでもやるやうな演出をやる。はー。
     解説の多和田先生が、「外国人へ稚拙なそっち語でお話書くとウケる件」について書いてをられて、大変興味深かった。
     英雄を一年癒す処で、まったり過ごした主人公一家が、追ひ出される寸前にそこの主の女性へ延長を申し込んで断られるのがおもしろかったです。

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著者プロフィール

1920年、ナイジェリア生まれ。ヨルバ族出身。『やし酒飲み』はアフリカ最初の本格小説と激賞された。他の著書に『ブッシュ・オブ・ゴースツ』がある。1997年、没。

「2010年 『アフリカの日々/やし酒飲み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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