後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003311943

感想・レビュー・書評

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  • 図書館。
    読み始め〜中盤は、なるほどそういう考え方もあるものかねえと思って読んでいたけれど、後半にかかるにつれて引き込まれていき、最後の三行に至っては、一度も聞いたことのない内村鑑三の声がすぐそばで聞こえてくるかのようで、通勤中読みながら涙してしまった。

  • 古本屋で見かけて読んでみた。明治27年に内村鑑三がキリスト教徒の集会で後世に何を残すかを講演した記録。わかりやすいし内容もすばらしい。
    後世に残すものは、金、事業(土木工事)、思想ときて、結局は「勇ましい高尚なる生涯」こそが最大という結論。キリスト教徒だから信仰・伝道・隣人愛などの生涯かと思いきや、武士道・意地・義侠心の生涯を説いているのがおもしろい。

    (p74から引用)
    しかしそれよりもいっそう良いのは
    後世のために私は弱いものを助けてやった、
    後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、
    後世のために私はこれだけの品性を修練してみた、
    後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、
    後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた・・・
     
    (p70から引用)
    メリー・ライオン・・・(中略)・・・実に日本の武士のような生涯であります。彼女は実に義侠心に充ち満ちておった女であります。彼女は何というたかというに、彼女の女生徒にこういうた。
      他の人の行くことを嫌うところへ行け、
      他の人が嫌がることをなせ      

    -----------------------------------------------
    あとこれは主題とは直接関係ないが、高知出身の下女が三日月に豆腐を供える話がかわいらしい。webで調べたら栃木県の神社には残っているようだが全国的には廃れた風習。三日月信仰自体が廃れたようだがなぜだろう。
     
    (p51から引用)
    その女は信者でも何でもない。毎月三日月様になりますと私のところへ参って「ドウゾ旦那さまお銭を六厘」という。「何に使うか」というと、黙っている。「何でもよろしいから」という。やると豆腐を買ってきまして、三日月様に豆腐を供える。後で聞いてみると「旦那さまのために三日月様に祈っておかぬと運が悪い」と申します。私は感謝していつでも六厘差し出します・・・

  • 内村鑑三の歴史に残る講和。日本の良心とも言える人物!

  • 人生を送る上で大事なことは?を説いた一冊。初めは読みにくいが、読み進めると、ロジックで面白い内容。

  • 後世への最大遺物
     本居宣長は「やまとごころ」を知るために、まず『源氏物語』を読むことを勧めた[柄谷行人『憲法の無意識』]のと対照的に、文脈が異なるけれども「後世への害物」であると一蹴したのは印象的に感じた。その文脈とは平野啓一郎氏が、小説を文字通り「小さく説く」ものと考えたように[平野『小説の読み方』]、誰もが書きたいように《着飾ることなく》かいた文を文学として理解しているのだと感じた。
     根底には、すべての人にとって後世に残す「最大の」ものとは生涯そのものとする考え方がある。成果を《物》として残せる者も残せない者も、どんな生き方をしたかに勝る偉大なものはないという主張は説得的であると同時に、内村の優しさと信仰心を感じた。

    デンマルク国の話
     シュレスヴィヒ・ホルスタインを奪われたデンマークが宗教心を梃子にして復興したという話。植林事業はダルガスが引っ張ったが、デンマーク人の信仰があってこそである。不正確なところがあるかもしれないが、フロイトの攻撃欲動が内に向けられ文化を形成した例として理解した。
     人口の増加により環境収容力を超えるのではないかと懸念されている中、土地を奪うのではなく様々な技術発展が人口を支えている。しかしながら、内村が依拠した「天然の無限的生産力」は信仰にとどまるものなのか、遺伝子組み換えは「神」を否定するものなのかと考えたが、ナンセンスだろうか。

  • 教科書でしか名前を知らなかった方の本を初めて読みました。
    よくわからないというのが正直なところ。
    時代の空気(キリスト教にたいして)ってどんなんだったのかな。

  • 読解に時間がかかってコスパ最強

  • 「私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない、との希望が起ってくる。」「われわれが死ぬときには、われわれが生まれたときより世の中を少しなりとも善くして往こうではないか」
    ここの部分はすごく共感。こういう人生を送りたい。

    「では何を遺すか、遺しやすいことは、お金<事業<思想(文学・教育)<勇ましい高尚なる生涯」

    ここから受け取ったのは、お金・事業・思想も大事だけど自分では100%コントロールできないが、「勇ましさ」は、自分でコントロールできることなのでここにフォーカスすることが大事ということを感じた。

  • 孫泰蔵さんの冒険の書に、後世への最大遺物が紹介されており、その流れで、改めて手に取る。64歳の内村鑑三が31年前の講演(1897年@箱根芦ノ湖畔)を振り返る改版に附する序、から引き込まれました。講演を本に起こしたものですが、なんとも素晴らしい本であります。北海道農学校出身の内村鑑三が語る北海道開発案(デンマルク国の話)も捨てがたい内容です(今からでも、この案を生かす形で北海道を開発できないものでしょうか)、どちらも★四つであります。

  • ■ひとことで言うと?
    信念を貫いて生きる姿勢こそ、後世への最大遺物である

    ■キーポイント
    - 後世に遺せるもの
    - お金・公的事業・思想(著述と教育):遺すためにはある程度の才能が必要
    - 勇ましく高尚なる生涯=生き様:どんなに不遇な状況でも遺せる最大遺物
    - 「勇ましく高尚なる生涯」の選択 → V.E.フランクルの「態度価値」に通ずる考え方

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著者プロフィール

1861年生まれ、1930年没。思想家。父は高崎藩士。札幌農学校卒業後、農商務省等を経て米国へ留学。帰国後の明治23年(1890)第一高等中学校嘱託教員となる。24年教育勅語奉戴式で拝礼を拒んだ行為が不敬事件として非難され退職。以後著述を中心に活動した。33年『聖書之研究』を創刊し、聖書研究を柱に既存の教派によらない無教会主義を唱える。日露戦争時には非戦論を主張した。主な著作は『代表的日本人』、『余は如何にして基督信徒となりし乎』など。
佐藤優
作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。現在は、執筆活動に取り組む。著書に『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。おもな著書に『国家論』(NHKブックス)、『私のマルクス』(文藝春秋)、『世界史の極意』『大国の掟』『国語ゼミ』(NHK出版新書)など。『十五の夏』(幻冬舎)で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。ほかにも著書多数。

「2021年 『人生、何を成したかよりどう生きるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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