風土―人間学的考察 (岩波文庫)

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著者 : 和辻哲郎
  • 岩波書店 (1979年5月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314425

風土―人間学的考察 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 情報を読む力 学問する心などリファレンス多数。「寒さ」「冷たさ」などの言葉に人が反応する感覚は、単に気温が低いというのもあれば、風が強い、乾燥している、雪が冷たいなどそれぞれが在り得るわけで。

    その他にも「神」や「芸術」など、こうした言葉と感覚のもつギャップを、主にシルクロードを遡る形で拾い集めていく本書を通じて著者が浮き彫りにしたかったのは、日本の四季が、我々にもたらすものが如何に多様かという点ではないだろうか。

    発刊と同時に批判があったという点も、一般化という観点から言えば頷ける部分も多いにあるが、それは本書を単なるフィールドワークと履き違えているが故であろう。

    本書が指すのは、文化風俗の形成プロセスに対する仮説という、科学的アプローチと言える。

  • 地誌学の目指すべき姿。既存タグに民俗学とあるが、せめて民族学なら理解できる。個人的には、四章が興味深い。庭園芸術の比較、日本庭園における釣り合いの連関および組織的統合と、五章で比喩された個々の文字と単語の関係、つまり意味を持つのは文字ではなく単語であるという表現は示唆的だ。外に現れた姿で内なるものを示す、文字の連結から意味を理解する方法が、本書の立場と言えば分かりやすいかもしれない。表音文字ではない表意文字である漢字を組合せている我々の仕方は、日本庭園の釣り合いの構造と連関すると言えるだろう。

  • 和辻哲郎が風土によって国民性が変わると説く本。

    まず、世界を3つの気候区分に分ける。

    ヨーロッパ型の牧場。
    オリエントや中東を含む、砂漠。
    アジアを含む、モンスーン。

    ヨーロッパ型の牧場は、気候が穏やかで自然は統治しやすいため、技術で自然を押さえつけられるため、合理的な考え方に。

    砂漠は、その気候に対抗しないと生きていけないため、攻撃的な性格に。また一神教も生み出す。

    モンスーンは湿度が高いため、恵みも多いが天候が急変しやすく、旱魃や洪水で飢饉も起こるため、自然に対して忍従する性格になった。

  • 高校の授業以来。風土が文化や国民性の形成を左右するというのは受け入れやすい理論だし異存はないが、具体的な内容は少々論理の飛躍が多いような気がした。特に文化は他地域からの承継・学習あってのものなのにいささか一面的すぎるような。だが全体的に興味深く読めた。

  • 私たちの死生観というものは実は、地球上の各地域の自然環境あるいは「風土」というものと深く関わっています。そうした「自然ー文化ー死生観」の関わりを鮮明に浮かび上がらせているのがこの本です。現代風に言えば「エコロジー的文化論」でしょうか。風土が神々の形、そして死のイメージを決める、のです。

  • 日本文化論の古典。著者自身がヨーロッパ留学時に見聞したさまざまな土地の気候・風土とそこに住む人間が相互に形成しあう関係にあることを、著者の持つ天才的な詩人的直観によって捉え、そこから翻って日本の風土と日本文化との関係がもつ特色を描き出そうとする試み。

    著者は本書の冒頭で、「この書の目ざすところは人間存在の構造契機としての風土性を明らかにすることである」と述べており、けっして「自然環境がいかに人間生活を規定するかということが問題なのではない」、「ここで風土的形象が絶えず問題とせられているにしても、それは主体的な人間存在の表現としてであって、いわゆる自然環境としてではない」と断っている。

    とはいえ、本書の第2章に示された「モンスーン」「沙漠」「牧場」という三つの類型についての具体的な叙述が、自然環境が人間生活を規定するという思考方式からほんとうに解放されているかは疑問である。他方、もし本書が著者の意図するように「人間存在の構造契機としての風土性」についての考察となりえているとするならば、今度は戸坂潤が批判したように、観念論の立場に陥っているのではないかという疑念も生じてくる。まして本書の第5章で、著者がドイツ観念論の系譜における風土と歴史についての考察をたどりながら、新たな風土学の展望を開こうとしていることを思えば、戸坂ならずとも上のような疑念を抱かざるをえないだろう。

    こうした問題を孕んでいるとはいえ、本書が重要な洞察を含んでいることを否定することはできない。和辻は、本書の叙述が主観的で一面的な印象に基づいていることを、むしろ本書の積極的な意義として捉え返そうとしている。彼は、この本がある短い期間だけ他の風土に生きる「旅行者」の立場から書かれたものだということを明瞭に自覚していた。じっさい彼は「人間は必ずしも自己を自己においてもっともよく理解し得るものではない。人間の自覚は通例他を通ることによって実現される」と記している。

    もし、こうした議論のもつ積極的な意義を救い出そうとするならば、自分自身が住まう風土から他の風土へと越境するという行為は、双方の風土と人間の特性についての理解が成立する可能性を開く振舞いだという考えを、和辻の方法論的な構えとして理解することもできるのではないか。

  • 日本に四季があることのすばらしさを教えてくれた

  • 斉藤孝『読書力』にあったオススメの書。必ず読もうと思う。

  • 題名からは想像できない(小タイトルにはなっているが)、深い文化人類学的な哲学書。昔の日本人の知識と文章力には脱帽させられる。ただ、内容については諸説あるようだ。特にまだ世界と交わりが少ない時代に書かれたものなので、各人種の類型化が現代の目で見るとかなり偏狭。ただ、日本人の考察については戦前に書かれた本であるのに、まるで太平洋戦争、その後の復興を予言しているようなところがあり、やはり考察が深い。

  • 1979年刊行(初出1930~1948年)。

     環境考古学的観点から見て、ギリシャが著者の言うほど木材の乏しき乾燥地域ではなかった可能性が議論されている中、そもそも本論の前提としての環境に関する事実に誤謬が混在する可能性は高い。この点は、シリアや肥沃な三日月地帯、あるいはナイル流域も同様の問題を孕んでいる。
     また、古代文明が発生した中南米、環境的に特異なシベリア・オホーツクが抜けているのも、本書の論の正当性を欠く事情だろう。

     しかし、初出年を考えると止むを得ない面はあるし、そこを割り引くならばなかなか面白い書だ。殊に芸術面への言及が多いのが特徴と言えそう。

     とはいえ、やはり読む時は注意が要るのだろうな、というのは間違いなさそうだ。すなわち、
    ① 本書はいわゆる西欧優勢の時代=近代、に対するアンチテーゼを意図した書である点。
    ② 日本固有の文化的価値を称揚すべきとされた戦前昭和期という時代背景の中で生まれた所産。
    ③ 大半が印象論で、大掴みでしかない点。
    ④ 同じ地域でも時代により環境は変遷し、それは地球規模での変動の場合もあるが、この点は全く等閑視されている。
    ⑤ 人的交流など風土以外の要素に触れない。そもそも風土は重要ではあるが、数多ある多原因の中の一つにすぎない。
    ⑥ ここで使われる用語、特殊用語を定義づけしない。例えば、個人的には「超越」が不明である。

     というように、一歩引いて読むと気づきがあるかもしれない。


     なお、先の「超越」とは、主観と客観の境を超えるという意味か?。ならば越境という言葉にならないか。超越は、何か他のものを圧倒するというイメージが付されないか…。もちろん「超越」以外にもこういうのが多々ある。ここが問題なのは確かだ。

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風土―人間学的考察 (岩波文庫)の作品紹介

風土とは単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。この観点から著者(一八八九‐一九六〇)はモンスーン・砂漠・牧場の三類型を設定し、世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした。

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