イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)

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著者 : 和辻哲郎
  • 岩波書店 (1991年9月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003314463

イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • パリ、ニース、ジェノア、ローマ、ナポリ、シチリア、アシシ、フィレンツェ、ボローニャ、ラヴェンナ、パドヴァ、ヴェネチア、ヴェロナ・・・。

    時は1927年末から1928年にかけての時代。イタリアではファシスト党が幅を効かせてはいるものの、大戦間期であり、1929年の世界恐慌前の割と安定した時代。そんな時代にフランス南部とイタリア各地を旅行した和辻哲郎の紀行日記です。
    題名は『イタリア古寺巡礼』ということで、旅行以前に著した『古寺巡礼』と符号を合わせるようなネーミングになってはいますが、単なる「古寺巡礼」に留まらず、フランス南部やイタリア各地の「風土」の考察、「古寺」を訪ねての建築物や、収蔵されている数々の美術品の観察・分析を、鋭い着眼点と優れた考察力でしかも端的に綴っているのが大きな魅力で、さらに旅の過程で折に触れて記される旅情や現地の香りが漂う身の回りの出来事の記述など、紀行文としてはなかなかの秀作に仕上がっています。
    意外だったのは、当時のヨーロッパへは和辻哲郎だけではなく、日本史の黒板勝美や考古学の浜田耕作や文学者の竹山道雄など何人もの日本のアカデミックな人材が渡航していて、折々に会し、旅行を共にしたり、飲み食いをしたりと、なかなか楽しげであったのですね。

    この旅行で和辻はイタリアの自然や多くの古寺、美術品などに触れたわけですが、その炯眼にはまったく敬服するばかりで、事前に勉強もしていったのでしょうけど、そうした背景だけに留まらず、対象物を微細に部分観察していたかと思うと、全体像を俯瞰して見せたりと、学者らしい物事の配慮にはただただ感心するばかりです。まずもってそうした目の付けどころが違うんですよね。
    特に和辻が関心を持っていたのは、ギリシャ彫刻のわざわざ凹凸を肌に残すことにより内から込み上げてくるような肉体美に仕上げた表現技法とか、建物でも円屋根とかキオストロ(四面回廊)とか柱の縦線とか、あるいは壁画やモザイックの色の技法だったりして、またイタリアの自然面でも日本との風景の違いを湿度にもとめるなど、いちいちマニアックな着眼点には恐れ入るばかりです。(笑)
    有名どころでも、ミケランジェロとかダ・ヴィンチとかの作品にも細やかに観察・分析していて興味深かったのですが、それと同等以上にジョットーをはじめとした宗教画への言及もなかなか興味深かったです。個人的にはジョットーの「聖母像」が、北朝鮮の宣伝絵を連想させて面白かったかな。(笑)また、シモネ・マルチニとかロレンゼッティなどシエナ派の絵も和辻のいう洗練と甘美があってなかなか良いと思いました。
    実は本文中、和辻はボッティチェリの「ヴィナス誕生」をあまり気に入らなかったみたいなのですが、どうしたことか表紙カバー絵に採用されていて、これは何かのユーモアかそれとも編集の怠慢なんでしょうかね?(笑)
    和辻が移動の途中途中で分析したように、いたるところで山の上に町が形成されている一因にマラリアがあったのでは、としているのですが、どうも和辻はそのマラリアに罹ってしまったようで、ヴェネチアやヴェロナの紀行文がリアルタイムに記されず途中で終了してしまったのは、返す返すも残念なことです。

    いまは、和辻が旅行で体験したような風景や遺跡や美術品がそのまま残っているとは限りませんが、もしイタリアへ行くようなことがあればまた読み返してみたくなると思える秀作です。

  • 私が初めて読んだ和辻哲郎の本。
    和辻哲郎の名前とその代表作である「古寺巡礼」の名前は耳にした事があったが、これまで和辻氏の著作を読んだ事がなかった。
    この本は、戦前に欧州留学をしていた和辻氏が妻の照夫人に留学先から送った手紙を体裁を整えて本にしたものである。
    まず感じたのは、和辻氏の美術に関する表現の素晴らしさである。
    それは独特でしかもその作品の本質を見事に言い表している。
    頭で理解するというより感覚的に分かると言ったほうが良いかもしれない。
    例えば和辻氏が絶賛している”シヌエッサのヴィーナス”については、以下のように表現している。


    肉体の表面が横にすべっているという感じは寸毫もない。
    あらゆる点が中から湧き出してわれわれの方に向いている。
    内が完全に外に現れ、外は完全に内を表している。
    それは「霊魂」と対立させた意味の「肉体」ではなく、霊魂そのものである肉体、肉体になり切っている霊魂である。
    人間の「いのち」の美しさ、「いのち」の担っている深い力、それをこれほどまでに「形」に具現化した事は、実際に驚くべきことである。


    現代日本において、この様に美術品を表現する事ができる人間がはたしているのだろうかとも思ってしまった。


    また、ローマ建築とギリシャ建築の違いを評して、前者はメカニズム(機構)の美しさであり、後者はオルガニズム(有機体)の美しさであるとも書いているが、非常に的を得ていると感じた。

  • 紀行文として読むだけでなく、文化人類学のフィールドワークの際に、どのような事柄をどの程度までフィールドノートにメモすればよいのかの参考にもなる本。

  • 私はただ美しいモノが好きなんです。そしてできればその美しさを黙って楽しめることが望ましいのです。

  • 和辻哲郎を知ったのはこの1冊がきっかけであった。なぜ手に取ったのかは分からないが、惹かれるものがあったのだと思う。後に、九鬼周造と同期と聞いて、腑に落ちたのだった。

    イタリアを旅したことがあるなら、これを読んでみれば、イタリアの風景が蘇ってくるだろう。風土、芸術への鋭い考察が、格調高い文体で述べられており、現代に読んでいてもこれが1世紀近く前のものだと気づかないくらい遜色がない。思わず、これを片手にもう一度イタリアに行って、彼がみた風景を味わってみたくなったのだった。特に忘れられないのが、彫刻に関する記述で、全く気づかなかった視点であった。なぜミケランジェロに多くの人が魅了されるのか。古代の彫刻は何が素晴らしかったのか。

    また読み返したいのだが、貸し出し中で手元にないのが悲しい。青空文庫での復活を祈る。

  • 和辻哲郎による、昭和2年のイタリア旅行と美術観察記。この時期、欧州留学をしていた氏が、1年半をかけてイタリア各地を巡っている。
    ギリシア文化の美術品とローマのそれとの比較。さらには日本とイタリアの気候の違いからくると思われる、美術品の違いなど、鋭い指摘が多い。
    ただ、絵画や彫刻の写真は少なく、文章によるものがほとんどなので、少し理解するのは難しい。

  • これは別にイタリア案内本ではなく、旅行記でもない。
    和辻哲郎という一時代を築いた哲学者が、イタリアという文明をいかにとらえ、いかに考えたか。その軌跡を追う書である。

    旅行記としてはあまりに中途半端だし、随筆としても、あまりにとりとめがなさすぎる。そのようなものを期待して読むと書籍も読者もフラストレーションがたまるんじゃなかろうか。

    でも一哲学者の思索を追跡するとなると俄然面白くなる。
    そういう本でした。

  • イタリアを旅すると,大きな町には必ず中央にドゥオモと呼ばれる大聖堂が建っていることに気づく.また,郊外にも歴史ある修道院がたくさんある.和辻の思索を追いながら,旅行するのも一興である
    (2010:小林茂之先生 推薦)

  • イタリアいくぞ!

    ということで行く前に買って、飛行機の中で読んだ一冊。


    和辻哲郎がイタリアを周遊した時の日記みたいな、メモみたいなものだけれど、メインは有名な絵画や彫刻の論評になっていて、

    「実際にイタリアで芸術を見るにあたって見る目を鍛えることができるぞー!」

    と思ったものの、そんな実行力はない自分に乾杯。


    この本自体は読む価値があるかとも思うが、個人的にはこういうエッセイ的につらつらと書かれるのは苦手なのだ。

  • 異国の地を踏み、過ごすことで得られる感覚。
    80年前の記録であっても、その瑞々しさは現代の私達の誰しもと通じている、
    と実感を持って読んだ本。
    (自分も旅行した南仏に関しても触れられていたと言うのもあり)
    特に旅行する人、留学する人にオススメします。
    知識と言うより、感受性と言う点で。

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イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)の作品紹介

一九二七(昭和二)年末から三カ月余にわたるイタリア旅行で出会った絵画・彫刻・建築の印象をみずみずしい筆致で書きとめたイタリア美術紀行。後に『風土』で展開される風土論の萌芽が随所にみられる点も大変興味深い。挿絵多数。

イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)はこんな本です

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