きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫 青 157-1)

制作 : 日本戦没学生記念会 
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003315712

作品紹介・あらすじ

酷薄な状況の中で、最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め、祖国と愛するものの未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち。1949年の刊行以来、無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を、戦後50年を機にあらためて原点にたちかえって見直し、新しい世代に読みつがれてゆく決定版として刊行する。

感想・レビュー・書評

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  • 永瀬隼介さんの『カミカゼ』を読んで、この本を思い出しました。

    初読はもう数十年も前、ページの所々にシミのある古い本。
    そして何度読んでも、やはり号泣してしまうのです…。

    燃料は片道分。
    生きて再びこの地に降り立つことはない。
    どれほどの決意だったのだろう。
    その心の内は想像すらできません。

    故郷の両親へ、兄弟、友人、そして想いをよせた人へ…
    検閲される手紙には、本心を書くことは出来なかったのかもしれない。
    国を守るために、この命など惜しくはない。
    これほど栄誉なことはない。
    なんの迷いもなく、澄み切った日本晴れのような心で飛び立つのだと。
    そう伝えることが、自分の大切な人を安心させる唯一のことだと信じていたんですよね。
    哀しいです。

    平和ボケとまで言われる日本に生まれ、
    戦争の悲惨さなど、書物や映像でしか知らず育ちました。
    戦後70年がたち、広島で、真珠湾で、かつての敵国のトップが肩を並べて立ったこと。
    その意義を、もう一度深く考えたいと思いました。

    • nejidonさん
      杜のうさこさん、こんばんは。
      私がこの本を読んだのも相当前のことです。
      涙で何も見えなくなるほど泣きました。
      こういった本に対する評価...
      杜のうさこさん、こんばんは。
      私がこの本を読んだのも相当前のことです。
      涙で何も見えなくなるほど泣きました。
      こういった本に対する評価は難しいですね。
      称えているわけでもないのに、「感動した」などと言うとすぐ「右だ」
      とレッテル張りされそうで。
      素直に泣ける、それが大事なんだと思いますけどね。
      興味深いことに、海外では特攻というものに対して大変な高評価ですね。
      その方法ではなく、その「志」に、です。
      逆輸入して、日本でも大々的に読まれたりして(笑)。
      2017/04/02
    • 杜のうさこさん
      nejidonさん、こちらにもコメント、本当にありがとうございます!
      こういった本の感想にコメントをいただけると、なんだかとてもホッとしま...
      nejidonさん、こちらにもコメント、本当にありがとうございます!
      こういった本の感想にコメントをいただけると、なんだかとてもホッとします。
      思想的な意見と受け止められないかな。と思いながら書いたりするので難しいです。

      そうなんですよね。是非ではないんですよね。
      こういった負の歴史があった。
      自分たちが生きている今の日本の礎となった方々を、忘れてはいけないのだと思います。

      私の感想なんて「ごまめの歯ぎしり」のようなものですが、これからも読んでいきたいです。
      2017/04/04
  • 一人一人の人生や気持ちを想像しながら読む。
    特攻直前に書かれた手紙や日記は、胸が苦しくなる。
    ある程度は本音を隠しているだろうが、それでも日本の未来を想って書かれた言葉を読む度、先人の想いを受け止めて自分の人生を精一杯生きたいと思った。

  • 毎年8月になると、戦争関連の本が読みたくなる。本書は前に一度読んだことがあったものの、今回はより深く心に感じるところがあった。
    それぞれの方の亡くなった日を確認して、掲載されている文書が亡くなるどれくらい前に書かれたものなのか、という点に着目しながら読むと、なんともいえない切なさが増してくる。
    自分の死期をある程度予測できていた(特攻・刑死など)人と、おそらく予測できていなかったであろう(戦死・病死など)人とで、文から伝わってくるものも異なる。前者はある種の諦観や、人生の整理といった感じが強く、後者は当然ながら、自分の命がまだ続くものという前提で、本当に日常の記録といった感じ。「●●がしたい」「□□が食べたい」など、未来へのささやかな希望が書かれているのを見ると、実に切ない気持ちになる。
    日々の生活で、不満に思うことやストレスなどは尽きないが、家族とともに「当たり前の日常」を普通に過ごせていること自体が、とんでもない幸せなことなんだと、つくづく思う。
    たぶんこれからも、ちょっとした不満やいらだちはついてまわるだろうが、生まれる時期がわずか半世紀ずれただけで、過酷な運命を強いられ、それでも最期まで気高く生きた諸先輩方が確かにいたということを忘れず、感謝と謙虚の気持ちをもって、生を全うしたい。

  • 2022/10/03(読了)

    戦没学生たちの手記を集めた一冊。

    毎年夏は戦争関係の本を読む習慣がある。今年選んだのが、この本であった。

    学問を志すも道半ばで、戦地へ赴くことになった学生たち。彼らが遺した言葉は、残された私たちに戦争の悲惨さを伝えると共に、祖国への愛を感じさせる。

    日本の行く末を案じながら、希望や一種の諦めを感じながら、戦地で散った彼らの命。最期のとき、彼らは何を思ったのだろうか...

    きっとこの手記の全てが彼らの本音ではなかったとは思う。
    特に家族への手紙や遺書では、残される者たちに心配をかけるまいとする気持ちが働いて、不安や恐れの言葉は書けなかったのではないか。しかし、そこには彼らの愛の心づかいが現れているように感じた。

    気になる点は、集められた手記の書き手が有名大学の男子学生だけというところ。
    同時代の他の大学の学生たちや大学へ進まなかった若者たち、そして女性たちの声も聞きたいと思った。

  • 本書は、1995年(平成7年)に出版された、第二次世界大戦末期に戦没した日本の学徒兵の遺書を集めた遺稿集『きけ わだつみのこえ』の新版である。
    本新版が刊行されるまでには、いくつかのステップを踏んでいるが、巻末にある日本戦没学生記念会(わだつみ会)の「新版刊行にあたって」によれば、概ね次の通りである。最初に発行されたのは、1947年(昭和22年)に東京大学協同組合出版部により編集された、東大生だけを対象とした『はるかなる山河に』で、「戦没学生が最後まで失わなかった人間性」に光を当てたものになっていた。その後、1949年(昭和24年)に遺稿の対象を全国の高等教育機関に広げた『きけ わだつみのこえ』の初版が刊行されたが、朝鮮戦争の危機が間近に迫っていたという時代背景から、遺稿の取捨選択が行われ、「“人間性”より“平和”」に力点をおく編集であったという。そして、本新版は、『きけ わだつみのこえ』の刊行をきっかけとして1950年(昭和25年)に結成されたわだつみ会が、前二版の長所を維持しつつ、「当時の学生たちが侵略戦争を担わされるにいたった冷酷な事実を直視し把握することができるよう」に、という問題意識のもとに再編集されたものだという。また、わだつみ会は、戦争を知らない若者が増え、また、ベトナム戦争が激化しようとしていた1963年に、「『きけ わだつみのこえ』の足らざるところを補正」するとの編集方針の元で、続編『戦没学生の遺書にみる15年戦争』を刊行したが、それは1966年に『弟二集 きけ わだつみのこえ』に改題されて、現在も刷を重ねている。
    なお、「わだつみ」(わたつみ)とは、記紀神話に出てくる「海の神」(海神・綿津見)で、転じて海・海原そのものを指す場合もある言葉である。
    本書には74人の遺稿が収められており、全篇に、家族や友人への愛、死に対する無念と覚悟、日本の将来への願い、(たまたま検閲を免れたと思われる)戦争や軍部への批判など、溢れる思いが綴られている。
    佐々木八郎(東京帝国大学経済学部/1945年4月、沖縄海上で昭和特攻隊員として戦死/22歳)・・・「世界が正しく、良くなるために、一つの石を積み重ねるのである。なるべく大きく、据りのいい石を、先人の積んだ塔の上に重ねたいものだ。不安定な石を置いて、後から積んだ人のも、もろともに倒し、落すような石でありたくないものだと思う。出来る事なら我らの祖国が新しい世界史における主体的役割を担ってくれるといいと思う。また我々はそれを可能ならしめるように全力を尽くさねばならない。」
    中尾武徳(東京帝国大学法学部/1945年5月、琴平水心特攻隊員として沖縄南西海上にて戦死/22歳)・・・「浪に消される痕であっても、足跡の主の力づよい一足一足が覗かれる。もり上った砂あとに立ち去った人の逞しい歩みを知る時、私は力づけられる。誠に我々は過去を知らず、未来を知らない。しかし現在に厳然と立つ時、脚に籠る力を知る。」
    若くして戦場に散った学徒兵のこうした思いに、我々は今後も責任をもって応えていかなければならないのだ。
    戦争の記憶を風化させないための材料の一つとして、受け継いでいくべき記録である。
    (2020年12月了)
    (尚、本書を巡る批判などについては、この後、保坂正康著『『きけ わだつみのこえ』の戦後史』を読んで、改めて考えてみたいと思う)

  • 1982年版読了
    若くして前途を断つべく召喚され、戦争の理不尽さ、我が身に来された不運と向き合い最後の最後まで学問への欲求を持ち続けた学徒達に尊敬の念を禁じ得ない。

  •  どれが心に残ったなんて言う本ではない。全てのページの全ての言葉が心に刺さる。

     戦争の生々しさや渦中にあった学生の葛藤がここにある。本当は学問に邁進したいが、それができなかった。戦時下における恐怖や心の中の変化が手記から伝わってくる。学徒出陣をした学生たちは、毎日自己と対話していたのだと思う。
     死ぬことを半ば分かっている状態で家族や大切な人を思う精神。亡くなる直前まで書物を手にして学ぶ姿。哲学に通じて、自己を高めようとするところは、現代に欠けたるところではないか。それぞれの手記の文章の美しさに驚いた。

  • 戦争中に兵士として亡くなった学徒の手記を集めたものである.
    文章から滲み出る当時の大学生の高い教養レベルをまざまざと感じることができる.当時の日本の若き頭脳が失われたことは日本にとっても大きな損失であろう.

    この本を読むと英霊の眠る靖国神社に手を合わせないわけにはいかなくなるであろう.

  • 学生をやっている人間は全員読むべきである。
    そしてどんな日本を創りたいのか、若者は考えるきっかけとして欲しい。

    彼らが犠牲となったのか?
    礎となったのか?

    決めるのは生き残りの子孫たる我々次第だ。

  • 彼らがどれだけ辛かったか…想像を絶する

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著者プロフィール

編集・発行:日本戦没学生記念会(わだつみ会)の発行物

「2019年 『わだつみのこえ 第150号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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