石橋湛山評論集 (岩波文庫 青 168-1)

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  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784003316818

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  • NDC 310
    「今から60年前の日本は、朝鮮や台湾を植民地支配し、中国の東北地方(満州)を奪い、華北から華中へと戦火を拡大していた。国をあげての戦争に日本国民は動員され、それに異を唱えることは許されず、治安維持法によって国民の言論や出版の自由は制限されていた。そんな中、逮捕される危険を承知の上で、当時の日本の政策に批判を言い、『東洋経済新聞』に多くの持論を掲載したのが石橋湛山である。その思想は自由主義に属し左にも右にも偏ることのないものであった。」
    (『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)

    明治四四年から敗戦直後まで,『東洋経済新報』において健筆を揮った石橋湛山(一八八四―一九七三)の評論は,普選問題,ロシア革命,三・一運動,満州事変等についての論評どれをとっても,日本にほとんど比類のない自由主義の論調に貫かれており,非武装・非侵略という日本国憲法の精神を先取していた稀有なもの.三九篇を精選.

  • 急激にはあらず、しかも絶えざる、停滞せざる新陳代謝があって、初めて社会は健全な発達をする。人は適当の時期に去り行くのも、また一の意義ある社会奉仕でなければならぬ。『石橋湛山評論集』

    **********************
    (山東省ドイツ権益の獲得。21か条(1915)を受けて)(英米仏など)は日英同盟の破棄を手始めに、何国かをして、日本の頭を叩かせ、日本の立場を転覆せしむるか、それとも連合して日本の獲物を奪い返す段取りに行くのではなかろうか。その場合は、今回得た物の喪失だけでは到底済まず、一切の獲物を元も子もなく、取り上げられるであろう。これ吾輩の対支外交を以て、帝国百年の禍根をのこすものとして、痛憂おく能わざる所以である。1915

    1921 四カ国条約、日英同盟の破棄
    1922 九カ国条約、山東省、旧ドイツ権益の喪失

  • 石橋湛山 政治評論集。軍備全廃と非侵略の絶対的平和主義の立場。正論だと思うが、あまりに理想的で、著者に政治外交のリーダーを託すことは 危険な気がした。


    長期的な理想は こうあるべきだと思う。しかし、理想を求めるあまり、軍備を否定し、各国の利益を無視する姿勢は 国際関係の中では、何も動かない状況に陥るのではないかとも思う 


    日本防衛論
    *軍隊により日本を防衛することは不可能〜世界のどこの国の軍隊より強大でなければいけないから
    *軍備の拡張は、国力の消耗〜国防を全うできないばかりでなく、国を滅ぼすことになる
    *自衛と侵略は区別できない〜自衛軍備しか持たないはずの国々において戦争が発生している
    *原子力兵器の発達は 人類の滅亡を意味する


    太平洋戦争の終了=更生日本の門出
    *原子爆弾の出現は 世界のあらゆる兵器を無効ならしめた
    *日本は世界平和の戦士〜ここに更生日本の使命


  • 新書文庫

  • ずっと積んでいたが、「東洋経済」のアーカイヴが電子化されたのを販売する立場になって、思い出して読んだ。自由主義の人、というのは聞いていたが、想像以上に一本筋の通った評論を貫いた人だった。あの時代の渦中にいて、植民地不要論や軍備全廃論を堂々と唱えていることに驚くし、その炯眼は素晴らしい。婦人論や綱紀粛正の行き過ぎを戒める論はそのまま現代に通じそうだ。他国のナショナリズムに対する態度にも心打たれる。戦時中、新聞より雑誌には弾圧は緩かったとも言われるが、レトリックを駆使し持論を展開したその努力も大きいのではないか。

  • あの時代にあって、これだけリベラルな発言を続けることには、相当の覚悟と勇気がなければできるものではなかったであろう。いまの政治家の言動を見ていると、”付和雷同”か、とにかく何が何でも"けなす”かの態度が目立ちます。自分の考え、信念を貫き行動する為政者のなんと数少ないことか。そんな中で、翁長知事の言動は(難しいことは勉強不足であまり分からないのですが)、首尾一貫しているように思います。

  • 石橋湛山(1884-1973)の評論・エッセイを選び文庫に編集したもの。論調は(他意なく)自由主義で一貫している。そしてたいしたことではないが、文章が明快なので(時代や題材の割に)とても読みやすい。

    【メモ】
    ・石橋湛山記念財団 略歴
    http://www.ishibashi-mf.org/profile/index.html


    【目次】
    凡 例         003

    Ⅰ 急進的自由主義者の出発1912-1913  009
    1 問題の社会化 
    2 国家と宗教および文芸 
    3 哲学的日本を建設すべし 
    4 愚なるかな神宮建設の議 ほか 
    5 維新後夫人に対する観念の変遷 
    6 犬養・尾崎両氏に与う 
    7 我に移民の要なし 

    Ⅱ 大正デモクラシーの陣頭で 1914-1923  049
    1 青島は断じて領有すべからず 
    2 禍根をのこす外交政策 
    3 代議政治の論理 
    4 帝国議会を年中常設とすべし 
    5 過激派政府を承認せよ 
    6 騒擾(ソウジョウ)の政治的意義 
    7 鮮人暴動に対する理解 
    8 罷業を悪まば ほか 
    9 一切を棄つるの覚悟 
    10 大日本主義の幻想 
    11 白蓮夫人の家出 ほか 
    12 死もまた社会奉仕 ほか 
    13 精神の振興とは ほか 

    Ⅲ 政党政治への提言 1924-1931  133
    1 婦人を社会的に活動せしめよ 
    2 行政改革の根本主義 
    3 市町村に地租営業税を移譲すべし 
    4 直訴兵卒の軍法会議と特殊部落問題 
    5 共産主義の正体 
    6 戦死者を思え 
    7 近来の世相ただ事ならず 

    Ⅳ 戦時下の抵抗 1931-1945  175
    1 満蒙問題解決根本方針如何 
    2 綱紀粛正主義者の認識不足、我が政治の良化をかえって妨げん 
    3 世界解放主義を掲げて 
    4 ドイツの背反は何を訓えるか 
    5 いわゆる軍人の政治干与 
    6 百年戦争の予想 
    7 敢えて婆心を披瀝し新内閣に望む 
    8 ベルリン最後の光景 

    Ⅴ 戦後日本の進路 1945-1968  255
    1 更生日本の針路 
    2 プレスクラブ演説草稿 
    3 池田外交路線へ望む 
    4 日本防衛論 

    注          285
    解 説(松尾尊兌)  293

  • 現状認識の確かさとぶれない信念の人。すごい。

  • 石橋湛山の評論文。記者であるので、その文章力はもちろんだが、時代を見抜く力がすごい。
    現代に彼が生きていれば、どのような視点でもって日本の外交を論じているか・・・。

  • 政治のことはよくわからないし、どうにもサッパリしませんが、石橋湛山は読んでるんでしょうね?!とセイジカに質したくなること多々。

  •  一ジャーナリストとして、東洋経済新報社の主幹(代表)として、総理大臣、大蔵大臣などを歴任した政治家として、言論を訴え続けた石橋湛山の評論集。

     明治末から昭和の戦後までと時間の隔たりがあるものの、民主主義に対する考え方も、植民地に対する考え方も、理路整然としていて現実的で、一貫性のある主張をしている点にただ感嘆するのみ。そして、現在日本を取り巻く問題にも通じる部分があること多々。今の日本にはこういった主張ができるジャーナリストが求められているのかもしれない。私の大学の偉大なる先達。

     特に気に入ったものを抜粋する。

    「私は決して今の社会運動の中に流れておる思想を一々ことごとく是認するのではない。その中にはあるいは前にも述べたが如く、問題はすべて経済だけで解けると余りに考えた迷想もある。(略)例えば平和問題という如きものにしても、今はもはや「人道」、「正義」などという漠然たる感情に立脚した説は著しく空虚を感じて、而してその「人道」、「正義」というものの内容が問題となってきた。(略)国民道徳の問題とか、家族制に関する問題とが近頃非常に多く論ぜられてきたのはこれを示している。」(1912(明治45)年「社会の問題化」)

    「思うに我が国は一の謬想に陥れり。人口過剰ということこれなり。」 (1913(大正2)年「我に移民の要なし」)

    「しかるに我が国民には、その大欲がない。朝鮮は、台湾、支那、満州、またはシベリヤ、樺太等の、少しばかりの土地や、財産に目をくれて、その保護やら取り込みに汲々としておる。従って積極的に、世界大に、策動するの余裕がない。卑近の例を以ていえば王より飛車を可愛がるヘボ将棋だ。結果は、せっかく逃げ廻った飛車も取らるれば、王も雪隠詰めに会う。いわゆる太平洋及び極東会議は、まさにこの状況に我が国の落ちんとする形成を現したものである。(略)これに反してもし我が国と国民に、何もかも棄てて掛るの覚悟、小欲を去って、大欲に就くの聡明があったならば、吾輩はまず第一に、我が国から進んで軍備縮小会議を提議し得たはずだったと思う。第二に、仮りに会議の主動者には和が国際的位地低くして、成り得なんだとしても、もし政府と国民に、総てを棄てて掛るの覚悟があるならば、会議そのものは、必ず我に有利に導き得るに相違ない」 (1921(大正10)年「一切を棄つるの覚悟」)

  • 日本の歴代首相というと、どうも信用できないと言いますか---偏見もあるとは思いますが---いまひとつ尊敬出来ないのです。
    しかし、石橋湛山だけは真の政治家であり、日本のことを真剣に考えた稀有の人物ではないかと思います。
    病気を理由に早々に退陣しまったことが、かえすがえすも残念でなりません。

  • ジャーナリスト、政治家の石橋湛山の評論集。明治末年より昭和43年までの評論を収録している。彼の書く文章は非常に分かりやすい。古い時代の文章であり見慣れない表現が多く使われているが、論理が明快であるため非常にわかりやすい。また、彼の主張はとても受け入れ安い。彼の評論は一貫して個人主義に基づいており、いかに個人を実現すべきかを具体的に主張しているからだ。彼の評論には、文章の論理構成や主張の一貫性、具体性など、学ぶべき点が多くあった。

  • あの時代に小日本主義の現実性・有用性を見抜き、かつそれを貫徹し、行動に移した人は石橋湛山のほかにいないだろう。この人がただ病に倒れたことを悔やむのみである。人は社会から与えられた体制(大日本主義)に対しても、相対的かつ合理的な立場から考えるべき。

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