- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003321041
作品紹介・あらすじ
『韓非子』の中には、韓非自身が書いたのではないものもあるが、自作とみられる諸篇は、巧みな比喩に富み、抑揚の多い論理的な説得力のある堂々たる大文章である。本冊には、「五蠧」篇など自作とみられる諸篇を含む一六篇を収録。
感想・レビュー・書評
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韓非子シリーズの最終巻。第40の難勢から第55の制分まで。正月に読み終えた。一貫して論理性を追求し、法術を重視して、儒子・墨子の世界観を弾劾する。
例えば、第43の定法では、韓の申不害の術(任用、評価、登用などの政治術)と秦の公孫鞅の法(行政法と刑法、賞与)を挙げ、双方とも必要である旨を説く。
第49の五蠹(ごと)は始皇帝も読んだとされる名文で、世の中は変わるものであり、それによってとるべき対策も異なるということを古代史を紐解いて解説し、古代聖王の行いを踏襲すべきという儒者・墨者を弾劾しつつ、今の世での法術による統治の必要性を説く。
第50の顕学も韓非子の自著とされ、儒・墨を詐欺師と断じ、徳ではなく威勢・権勢で統治すること、多数を動かす統治法を行うべきこと、民衆の知恵など役に立たないこと、合縦や連衡といった外交策で滅びた国もあり、まずは国内を固めることの必要性など統治の根本を説く。
このように理想論ではなく統治の実用性、富国強兵に向けた立論であり、多くの部分は現代でも色褪せていない。
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金大生のための読書案内で展示していた図書です。
▼先生の推薦文はこちら
https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=35493
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BN10624868 -
第四冊は「難勢 第四十」から「制分 第五十五」までを収録。「五蠧 第四十九」、「顕学 第五十」は読み応えあり。「あとがき」を読むと、このこの『韓非子』全四冊は、岩波文庫の『荘子』の仕事が終わってから十年をかけたとのこと。
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難勢、定法は 韓非子の基本思想がまとまっている。
君主が 術、法、勢を全て持つ
*術は 臣下に仕事を与える、権限
*法は 臣下を賞罰する、法令や模範
*勢は 臣下を屈服させる勢い、権勢 -
*オフィス樋口Booksの記事と重複しています。アドレス;http://books-officehiguchi.com/archives/3885141.html
これらの本の構成は、漢文(原文)→書き下し文→口語訳の順で各段ごとにつけている。
中国の法思想・政治思想の本であるが、読者自身が韓非子の思想を身近な具体例がないので、ピンとこないし、自ら考えなければならないので、初学者向けとは言えない。今後の研究方針として、政治思想の研究で、これらの本と私の専門分野との往復をしながら研究を進めたい。 -
そもそも、良い馬をつけたけんこな車を、五十里ごとに1つずつ配置し、それを中程度の普通の御者に任せたなら、できるだけ速く、できるだけ遠くにゆくということも、達成できるわけである(なにも飛び抜けたものが必要なわけではない)
事実とは思わないことでも、十人が言うとあるいはと疑い、百人が言うとそうかもしれないと思い、千人になるとかたく信じこんでしまう
古い時代では、男でも耕作をしなかった。草木の実があって食物は十分だったからである。(中略)ところが、今、一人の人に五人の子供がいるのは多いとはいえないが、その子どもたちがまたご人ずつの子供を生むとなると、祖父が生きているうちに25人の孫ができることになる。こうして人間の数は増えて財貨は乏しくなり、汗を流して精一杯働きながら生活は貧しくなってきた。だから人々は争うのである(人口論。。。!!)
事は時代に従って変わり、対策はそのことに合わせて立てるべきである。
お上の利益と臣下の利益の違い
公然と古代の聖王を根拠にしたりするのは詐欺である(わかりようがないのだから)
お上が金持ちから税を徴収して、それを貧乏なものに施すとすれば、これは努力して倹約に勤めているものから奪い取って、贅沢をして怠けているものに与えるということになるのだ
その人物を実際に官職につけてみて、その仕事ぶりを検討したなら、普通の凡人でもその人物が愚か者か智者かを見分けるのに迷うことはない
法術をわきまえた君主は、偶然にしか現れないような善を追い求めないで、必然的な結果の出る方法を行うのである
そもそも民の本性は、労働を嫌って安楽を好むものである
悪事はどんな小さいことでも見落とさないというのは、密告と連坐の決まりによってそうなるのである -
4003321049 287p 1997・8・5 4刷