日本的霊性 (岩波文庫)

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著者 : 鈴木大拙
  • 岩波書店 (1972年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003332313

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日本的霊性 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 戦前戦後の仏教学の第一人者だった著者の代表作。大学の恩師に著者の思想を紹介されて、興味を持ち読んでみました。
    序盤で霊性を「宗教意識」だと定義した著者は、その上で興味深い論を展開していきます。すなわち古代日本に霊性と言えるようなものは存在しなかったこと。それが初めて自覚されたのは鎌倉時代に入ってからであること。その粋は、浄土思想と禅に見出すことができること。などなど。私は本書を読んで浄土思想のとらえ方を180度改めさせられたように感じます。浄土を求めることはつまり現存在の否定であり、そのプロセスを経てさらに自己を超越し「超個己」にならなければ霊性は得られないとする著者。頭でっかちな私はその主張を理屈でしかなぞろうとすることができませんでしたが、親鸞のいう「ただ一人(いちにん)」という言葉になぜか涙が出そうになりながら、ああ、悪人正機とはそういうことだったのか、と、すこし納得できたような気がしました。
    そもそも「霊性」とななんなのか。霊性という語は一般にspiritualityの訳語として用いられます。WHO憲章の健康の定義にも含まれるほどに重要視されるこの概念は、どうも私も含めた日本人にはぴんと来ないイメージがあります。しかし、本書を通して著者が伝えるメッセージは、それが、個人が個人を超えたところで得る強烈な体験であることを教えてくれます。最近よく使われる「スピリチュアル」という言葉よりもずっとしっくりとした、馴染みやすいもののように思えるのです。そして本書の最後で紹介される市井の仏道求道者、浅原才市の歌の数々には圧倒されるばかり。彼のいう「あなたのこころがわたしのこころ わしになるのがあなたのこころ」とは、どんな心境なのでしょうか。「ただ一人」という独我論的体験と、彼のいうような自らと世界と仏とが一体となる体験が同居する世界。本書の後半はそれをわずかでも感じることができます。
    著者は現代の神道には霊性がまるでないと批判を加え、神道が霊性を持ちうる可能性として鎌倉時代の伊勢神道を挙げています。地に足のついた宗教意識ははたして神道でも実現できるのか。私はその可能性を信じたいところですが、どうでしょうかね。

    (2008年9月入手・2009年1月読了)

  • 鈴木大拙先生の著名な著作ですが、これを読み解くのはかなり難しいですね。

  • 佐伯「反・幸福論」で本書に言及していたことから、以前購入していた本書を手に取った。
    前半では、日本人は、鎌倉時代になって初めて日本的霊性=宗教意識に目覚めた、と繰返し説く。そしてそれは浄土系思想と禅であるという。後半では、浄土系思想ないし真宗の本質に焦点を当て、妙好人才市を例に六字の名号「南無阿弥陀仏」を唱えることの宗教的意味=日本的霊性を説く。全体的にくどい感じがするのは、著者がそれだけ伝えたいこと、その思いが強いからか。戦前の検閲の下で書かれた書であることも関係あるのだろうか。

  • 日本の仏教、哲学の第一人者の日本的とは何かを分析した名著。
    日本文化、歴史に対する深い知見からの洞察は消化するのに何遍も読む必要がありそう。
    現在の日本人的精神(鈴木大拙はこれを「霊性」と呼ぶが)は仏教が日本の大地に順応した鎌倉期に起源を発するとして、それが、真言であり、禅であるとする。
    仏教に興味が湧き、座禅に行ってみたくなった

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784003332313

  • NHKで取り上げられていたエピソードが面白くて本で読んでみたくなり購入。日本人の考え方のルーツとか原点を知りたかったのだが修行が足りない私には難解すぎた。わかったのは、鎌倉時代が重要な転換点だったということ。平安時代の花鳥風月を眺めたり、もののあわれを尊ぶことだけでは民族として足りず、地に足のついた考え方が必要でそれが根付いたのが鎌倉時代ということ。もう少し勉強します。

  • 日本人に備わっている霊性を解説。
    親鸞や浄土系の仏教が日本に根付いた流れがわかる。
    かなり難しい内容だったので、理解できない部分多し。だけれど、刺激的でした。

  • 一節一節が短くて読みやすい。たまに禅問答の(ような)話になるので速読はムリ。再読の必要。

  •  「霊性」。鈴木大拙の造語ではないものの、聞き慣れない言葉で、正確に定義づけるのも難しそうですが、著者自身が緒言の中で書いているように、おおむね「宗教意識」といった意味と理解してよさそうです。仏教哲学、とりわけ禅についての研究で知られる著者が本書で論じているのは、日本人の霊性が歴史的にいかにして発展してきたのかということ。

     つまり、大雑把に言えば、「日本人独自の宗教意識は、古代にはまだおぼろげな形でしかなく、鎌倉仏教によってそれが自覚させられた」という考えです。神道は日本古来のものですが、日本的霊性の自覚には不十分なものでしかなく、インドから中国を経て取り入れた仏教こそが、日本人の宗教意識を目覚めさせた。とりわけその中で重要な働きをしたのが、浄土宗系の宗派だ--ということのようです。

     奈良仏教は「教学」に拘泥して知性に偏りすぎ、万葉集は情に偏っていました。まだ「霊性」の自覚に至らない、初期段階です。こうした日本人の感性の両翼が、仏教という形を借りて発展し、鎌倉時代に頂点に達したのだということを、著者は論じているわけです。そういった意味で、日本仏教は決して「外来宗教」ではないといえるでしょう。そもそも、仏教そのものが非常に懐の深いもので、民族によって多様な形に発展していっているようですが。

     専門的な難しいことは分からないですけど、日本仏教は大きく浄土宗系、禅宗系、日蓮宗系、密教系(真言宗系)に大別されると思います。その中で、特に日本思想史上で大きな意味を持つ浄土教と禅が、「他力」「自力」という一見、正反対の思想であるにもかかわらず、つきつめれば共通した境地に至るという考えを、素人向けの仏教の本を読んでいても、しばしば目にします。(柳宗悦「南無阿弥陀仏」もそうだったかな?)詳しいことは知りませんが、こうした考えを理論的にキチンと説明したのも、鈴木大拙の功績なのかな、と思います。

     やや難解な部分もありますが、全体としては非常に面白い本でした。特に印象に残ったのは、大地に根ざした宗教でなければ、人間の霊性の自覚にはつながらない、という趣旨のことを繰り返し、しつこいほど主張していること。学者僧侶による奈良仏教ではなく、宮廷人の平安仏教でもなく、民衆のための仏教となった鎌倉仏教が日本仏教として定着して今に至るのは、やはり法然や親鸞らが大地に根ざした生き方で思想を発展させていったからなのでしょう。

     余談ですが、弁護士の大平光代さんが通信講座を利用して浄土真宗の僧侶を目指していると新聞で読みました。俳優の保坂尚輝さんも出家しましたね(新宗教っぽい宗派みたいですが)。統一教会やオウムの影響で、宗教自体が白眼視されるような時期もありましたが、だいぶ変わってきたようです。世知辛く、しかも物騒なこの時代、宗教に、人の生き方の手助けとなる力を取り戻すことを期待したいです。

  • キリスト教のは全くの他力である、自他を対立させておいて、その上に他の力のみを打ち立てんとするのである。仏教では、自他の対立は対立であるが、そこに対立を絶したものが動いていることを直覚し(これを霊性的自覚という)、この直覚から、対立の世界を見直すのである。

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日本的霊性 (岩波文庫)の作品紹介

現代仏教学の頂点をなす著作であり、著者が到達した境地が遺憾なく示される。日本人の真の宗教意識、日本的霊性は、鎌倉時代に禅と浄土系思想によって初めて明白に顕現し、その霊性的自覚が現在に及ぶと述べる。大拙(1870‐1966)は、日本の仏教徒には仏教という文化財を世界に伝える使命があると考え、本書もその一環として書かれた。

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