一外交官の見た明治維新 上 (岩波文庫 青 425-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003342510

作品紹介・あらすじ

風雲急をつげる幕末・維新の政情の中で、生麦事件等の血腥い事件や条約勅許問題等の困難な紛争を身をもって体験したイギリスの青年外交官アーネスト・サトウ(1843‐1929)の回想録。二度まで実戦に参加して砲煙弾雨の中をくぐり、また攘夷の白刃にねらわれて危うく難をまぬかれたサトウの体験記は、歴史の地膚をじかに感じさせる維新史の貴重な史料。

感想・レビュー・書評

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  • 再読。筆者のアーネスト・サトウは幕末~明治期にかけてイギリス公使館の駐日公使だったイギリス人外交官。サトウって妙に日本人的な名前だから親近感沸いちゃうけど日英ハーフというわけではなく生粋の西洋人、サトウはドイツ系?の苗字らしい。文久2年に来日、日本に来てから日本語の勉強を始めたけれど、1~2年で誰よりも達者な通訳に。薩摩が引き起こした生麦事件後の対応や、長州が異国船を攻撃した下関戦争後の交渉等に活躍。結果、薩長の志士らと交流を深め、幕府とそのタイクーン(大君=将軍のこと)には懐疑的に。当時の日本の有り方は他国から見て非常に複雑だったろうに(天皇と将軍、諸藩との関係、各々の本音と建て前)サトウの観察眼と理解力は非常に鋭い。上巻は慶応3年あたりまで。

    当時の日本の風習なども詳しく描写されていて貴重。日本人の書き記したものなら当然のこととしてスルーされる部分も、外国人ゆえにしっかり観察、事細かに描写されている。

    そして幕末オタク的な楽しみは、やはり歴史上の著名人との交流。下関戦争のときは、英国留学から大急ぎで帰国してきた伊藤俊輔(伊藤博文)志道聞多(井上馨)らと話をし、以降も伊藤、井上とはずっと仲良しに。倒幕側だけでなく、なぜか従者として会津出身の野口富蔵を雇っていたこともあり会津側との交流もあり。以下人物評を抜粋。

    【高杉晋作】使者は、艦上に足を踏み入れた時には悪魔(ルシフェル)のように傲然としていたのだが、だんだん態度がやわらぎ、すべての提案を何の反対もなく承認してしまった。(142)

    【西郷隆盛】この人物は甚だ感じが鈍そうで、一向に話をしようとはせず、私もいささか持てあました。しかし、黒ダイヤのように光る大きな目玉をしているが、しゃべるときの微笑には何とも言い知れぬ親しみがあった。(226)

    【小松帯刀】小松は私の知っている日本人の中で一番魅力のある人物で、家老の家柄だが、そういう階級の人間に似合わず、政治的な才能があり、態度が人にすぐれ、それに友情が厚く、そんな点で人々に傑出していた。顔の色も普通よりきれいだったが、口の大きいのが美貌をそこなっていた。(238)

    【梶原平馬(会津藩家老)】彼は色の白い、顔だちの格別立派な青年で、行儀作法も申し分がなかった。(241)

    【徳川慶喜】将軍は、私がこれまで見た日本人の中で最も貴族的な容貌をそなえた一人で、色が白く、前額が秀で、くっきりした鼻つきの立派な紳士であった。(254)

  • 1862年にイギリスから18歳でイギリス公使館の通訳として来日したアーネスト・サトウの1回目の日本滞在の回顧録。
    来日していきなり生麦事件があり、その後薩摩戦争、長州との4国戦争などを経験したり、攘夷運動が吹き荒れ外国人が殺傷された時代の日本を描いています。
    ただそんな中結構呑気に歩き回ってたりして、この人危機感がないのか?っていう場面も結構描かれています。

  • リアル。最高。

  • たぶん、自ら記していた日記のようなものを下にして書かれたものだろうと思われるが、その微に入り細を穿ったな記述に驚く。日本人ではなく、外国人から見た当時の日本の姿が新鮮である。

  • - 冒険心の富むサトウ、結構日本をエンジョイしてる。
    - 長崎と横浜の対比
    - 横浜:山師ばかり
    - 長崎:西国武士階級と外国人の間での友好的な雰囲気
    - 一般的に、庶民は外国人を興味を持ってみるか、驚くか、好意を持つか。
    - 武士階級が夷狄感情を持っている
    - 開港直後(1859~)外国人の殺傷事件が横浜などで多発
    - 外国人・外国人を補佐する人(通訳など)も殺された
    - ヨーロッパ人:侵入者・国土を汚される
    - サトウ、下関戦争を経て、長州人に好意、幕府に不信感。
    - その後、幕府の力の無さから、権威落ちてく
    - サトウ、結構酒飲む。

  • 上巻は1862年から1867年まで、大政奉還前夜の日本を英通訳官の視点で描いている。明治維新期に活躍する錚々たる志士の面々も登場していて興味深い。

  • 本書の著者は文久2年(1862)に通訳として来日したイギリス人外交官である。幕府との外交折衝や薩摩・長州藩士との密談など、国内の権力闘争劇とは異なる、グローバルな幕末・維新が描かれている。
    英語が好きな人は原著もお薦め。

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000034907

  • 2019/05/13 読み終わった。
    この人は、わざわざ故郷を離れて、アジアのよく分からん国の激動の時に、何年もいたなあと思う。普通に同僚が斬られて亡くなったりしているのに。
    同僚が仕事できないとか、愚痴ぽいのも書かれてて親近感。

  • この書籍は、イギリスの外交官が幕末に来た時の来訪記で1861年(文久元年(万延2年))から大坂から江戸へ来るまで書かれています。

  • 原書名:A Diplomat in Japan

    江戸在勤の通訳生を拝命(一八六一年)
    横浜の官民社会(一八六二年)
    日本の政情
    条約、排外精神、外国人殺害
    リチャードソンの殺害、日本語の研究
    公用の江戸訪問
    賠償金の要求、日本人の鎖港提議、賠償金の支払い(一八六三年)
    鹿児島の砲撃
    下関、準備行動
    下関、海軍の行動
    下関、長州との講和締結
    バードとボールドウィンの殺害
    天皇の条約批准
    横浜の大火
    鹿児島および宇和島訪問
    最初の大坂訪問
    大君の外国諸公使引見
    陸路、大坂から江戸へ

    著者:アーネスト・サトウ(Satow, Ernest Mason, 1843-1929、イングランド・ロンドン、外交官)
    訳者:坂田精一(1903-1988)

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著者プロフィール

(Ernest Mason Satow)
一八四三~一九二九。イギリス出身の外交官。ロンドンのユニバーシティ・カレッジ卒業後、イギリス公使館で通訳生として雇用される。一八六二年に来日し、一八六六年に英字新聞『ジャパン・タイムズ』に、三回に分けて『英国策論』を発表した。

「2023年 『増補新版 現代語訳 墨夷応接録・英国策論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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