最新世界周航記 下 (2) (岩波文庫 青 486-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003348628

感想・レビュー・書評

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  • 情報量が多く、行きつ戻りつしながらやっと読了した下巻。
    上巻の終わりの、◯◯の突然の退場にショックを受けていたけど、がんばって読んだ。
    以下、だらだら長文の覚書。

    それにしても、上下巻を通じて言いたいのは!
    巻末の地図が!親切じゃない!
    ダンピアのかく細かい島名が反映されていないので、あんまり役に立たないんですけどなんですかね。
    (島が小さすぎて載せられないのか?作中での地名と違う、現行の地名だけで地図に載せているっぽいところもあり、せっかくの情報が活かせず悶々としてしまった。
    著者以外ほとんどが星になった、ニコバル島からの脱出行は下巻の大きなポイントになるところなのに、これもまた地図にない(T-T)ギリギリで地図に載らないあたりにあるっぽい。なんで載せるように編集しないんだー?)

    そして!注釈や人名辞典を頼りになんとか読み進めている状態なので、注釈にはページをつけてください!
    (後から探すのは大変なんですよおおお。注釈が少ない本だと尚更。私のように注釈だけザーッと読みたい人もいるんですよ頼みますよ。)

    感想。
    下巻では、西インディーズ=中南米を抜けて、東インド=東南アジアからアフリカへの旅に入ったが、相変わらずの暴力の連続。内容は博物誌のほかには、今回も、拿捕、尋問、荷物をぶんどる、病気など。
    現地人を捕まえて奴隷に売るのは儲かるとか(自分がしたとは言ってない)、現地人も自分の娘など若い女をヨーロッパ人の船員に与えて儲けようとしたり、(船員の多くが現地妻がいる描写あり)、現代との人権感覚の違いにクラクラする。うん。うううん。
    個人的にハア?となったのは、島の名前を勝手につけちゃった、というエピソードに突然出てくる、「私の家内の一族が」の一文。ちょちょちょ、おま、かかか家内?
    解説には新婚の妻を置いて船に乗っている、とはあったけど、突然の登場にびっくり。家内というワードにもびっくり。でも出番はこれだけ。

    17世紀後半にもなると、すでにスペイン人やポルトガル人があらゆる土地に入植し、砦を築き、修道士を常駐させ、家畜を野生化させ、現地の人々を支配して交易している世界が定着していることに改めて驚く。世界は一つに繋がってしまった。恐ろしいスピード。

    p299
    「偶然自分らの間に迷い込んできた、あるいは生活を共にしようとやってきた個人を殺害してしまうほど、野蛮な人種はこの世にいない、というのが私の持論である。」
    って、あんたらが言えることかー。
    上巻から続く、あらゆる場面で、現地人に対する観察や行為に現れる、ヨーロッパ人種の上から目線が辛くなった。彼らにとっては、しょせんヨーロッパ以外はすべてインドなんだ、自分の役に立つためにある、下層世界なのだと思い知らされた。この時代ならではの思想だけど、現代世界にもずっと禍根を残している事実。ダンピアたちは武器の優位性でその場を支配してるだけなのだ。(それでもダンピアはまだしも、彼らに敬意を払って書き残している。と思いたい。思いたいよね?)
    ニコバル島で銃を何度かぶっぱなして、敵の意欲をそぐものの、援助が必要なのでそれ以上はやらず、じわじわ距離を縮めていくエピソードなど、結局地元民の助けなしには異邦人は生きて島からは出られないのに、と思えた。

    推しの◯◯もいない、寂しい東インディーズ編で、気になったのは、刺青のプリンス・ジェオリーの存在。
    自分の弟みたいに親切にしてあげた、とあるし、かなり長い時間を共にしたが、彼に対する権利を買った、とか、要するに奴隷なんだよなー。
    (故郷の島に帰りたいから船に乗せて、といい、日程が合わず、置いてきぼりになっていた16章にでているプリンスって同一人物でしょ?人名索引からは漏れているけど)
    母とともに故郷の島から誘拐され、ミンダナオ島で召使い奴隷をさせられ、才能もあり、賢いのに、イギリスで見世物になって天然痘で死んだプリンスの一生が辛い。

    上下巻を通じて、キャプテン◯◯が大量に登場し、ダンピアはしょっちゅう自分の都合で乗船する船を変えていく。
    ひとえに、彼が比較的地位の高い船員で、それは航海術、観測技術、コンパスや観測道具、海図や地図を所有しているから出来ることだなあと思った。
    船を去る前に、こっそりコンパスを持ち出したり、海図を写してきたシーンに顕著。
    情報を持っていること、技術を持っていること、経験や知識を書き記す術があり、道具があり、それを本人が失わずにきたこと、何度もハードな航海をしても病気になっても、なんとか回復した体力があったこと、あらゆる幸運でもって、いまこの本が残り、世界が動いてきた事実を読めることが、改めてすごいと思った。ロビンソン・クルーソーも、パンノキのバウンティ号の反乱も、極東のスーパーに売っているアボカドも、ダンピアと深く関わっている。

    ちなみに、編者のメイスフィールドや訳者の平野氏によって、ダンピアの残虐シーンはカットされているらしいことを知る。
    それらの未公開シーンや未訳の続編などもいつか世に出たらいいなと思う。
    以上、読み終えてそのままの超長文の自分用おぼえがきでした。

  • 原書名:Dampier's voyages;a new voyage round the world

    著者:ウィリアム・ダンピア(Dampier, William, 1652-1715、イングランド、海賊)

  • (全体的なレビューは上巻参照)

    本巻(下巻)では、メキシコ西岸を発して、太平洋を越えてグアム、ミンダナオやマニラなどフィリピン各地、セレベス島、スマトラ島と東南アジアを巡り、最終的に喜望峰を経由してイングランドに帰り着くまでの航海を描く。

    --
    【図書館】

  • 航海者 ウィリアム・ダンピアの航海記
    海賊として著名だが、コレを読むと観察者、航海記録者としての評価があってもいいと思う。

    それにしても、食糧補給と船底の清掃のおおいことよ!
    大事なんだなぁ と改めて思う。

    疑問・・・ダンピアって船のどの階級で仕事をしていたのか?
    それにしても、地名のカタカナ書きが・・・。
    カンベンしてほしい^^;

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