レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上 (岩波文庫 青 550-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003355015

作品紹介・あらすじ

レオナルド(1452‐1519)こそ「万能の天才」そのものである。彼は何よりも「モナ・リザ」「最後の晩餐」などの傑作を残した画家であり、彫刻家・建築家であり、また天文学・物理学の造詣も深かった。その天才が残した厖大なノートから、わかりやすい文章を選び2冊に編集する。(上)には『絵画論』『人生論』『文学論』を収める。

感想・レビュー・書評

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  • 印象に残った言葉たち

    私よりさきに生をうけた人々があらゆる有益で必須な主題を自分のものとしてとってしまったから、私は非常に有益な、また面白い題材を選ぶことができないのを知っている。それで私は、ちょうど貧乏のため一番あとから市場に到着したが、他に品物をととのえることもできないので、すでに他人の素見(ひやかし)済みだが餘り値打ちがないために取り上げられずに断られた品物すべてを買いとる男のようにふるまうであろう。
    私はさげすまれ断られたこの商品、数多の買手の残りもの、を自分のはかない荷物のうえにのせよう。そしてそれを大都会ではなく、貧しい村々に配り、かつ自分の提供する相応のお膳をもらいながらあるこう。(上)p.1

    真理ー太陽。
    嘘ー仮面。(上)p.31

    老齢の欠乏をおぎなうに足るものを青年時代に獲得しておけ。そしてもし老年は食物として知恵を必要とするということを理解したら、そういう老年に栄養不足にならぬよう、若いうちに努力せよ。(上)p.35

    食欲なくして食べることが健康に害あるごとく、欲望を伴わぬ勉強は記憶をそこない、記憶したことを保存しない。(上)p.35

    織が使用せずして錆び、水がくさりまたは寒中に凍るように、才能も用いずしてはそこなわれる。(上)p.35

    十分に終わりのことを考えよ。
    まず最初に終わりを考慮せよ。(上)p.38

    「幸せ」の入る場所に、嫉妬が待伏せしてこれをおそう、そして幸せの去ったあとには苦痛と悔恨とが残る。(上)p.40

    必要であればあるほど拒まれるものがある。それは忠告だ。それを余計に必要とする人すなわち無智な人々からいやがれれる。
    こわがればこわがるほど、逃げれば逃げるほど、近くによってくるものがある。それは貧窮だ、逃げれば逃げるほど、君は悲惨になり安らぎをうしなう。(上)p.41

    自分に害なき悪は自分に益なき善にひとしい。(上)p.46

    おお寝坊ものよ、眠りとは何であるか?眠りは死に似たものである。おお、それではなぜおまえは、生きながらいやな死人に似た眠りをむさぼるのをやめて、死後に完全な生き姿をのこす作品をこしらえないのか?(上)p.56

    あたかもよくすごした一日が安らかな眠りを与えるように、よく用いられた一生は安らかな死を与える。(上)p.72

    執拗な努力よ。宿命の努力よ。(上)p.73

    これと同じことは、稽古のかわりに怠惰に身をまかせている天才にもおこる。彼らは、上に述べた剃刀と同じく、そのきれ味のよい鋭さを失い、無智の錆で形態をそこねてしまう。(上)p.91

    智慧は経験の娘である。(下)p.9

    ……立派な作品、それによってわたしは将来の人々にわたしが……であったことを証明することができたでしょう……(下)p.300

    苦労せざるものは幸運に値せず。
    大きな苦痛なくして完全な褒美はもらえず。
    徳を究めるものこそ至福なれ。(下)p.332

    感想
    レオナルドダヴィンチは万能の天才と呼ばれているが、努力の天才、自分を制御するのが上手い人という印象を受けました。
    手記を読んでいると、知識の幅が半端なく広い。知的好奇心が旺盛で、恐らく本に書かれていることを実験して検証していった結果このような、幅広い知識を身に付けることができたのだと考えられる。
    更に知的好奇心が半端ない。この時代に、解剖を実践し、血管・筋肉・心臓の仕組みまで解き明かしてしまっている。
    上巻については、時間、人生について、自分なりの哲学が書かれていた。
    下巻については、学術論文のような専門的な内容が多くあった。

    ……立派な作品、それによってわたしは将来の人々にわたしが……であったことを証明することができたでしょう……(下)p.300

    この言葉はまさに実現している。彼の残した作品により、何百年経った今でもレオナルドダヴィンチの名は世界中の誰もが知っており、今なお絵画・手記から私たちに語りかけて来る。

    若いうちの努力について、時間の使い方について改めて、意識し直そうと思いました。
    終わりをまず考えること。まず最初に終わりを考えること。
    安らかな死を得る為に、毎日、努力して理想の自分になる計画を立てること。
    を意識します!!!!

    岩波文庫15、16冊目読破!!

  • アバタロー氏
    1954年出版
    5000ページの膨大な手記
    通称ダビンチノート、断片集

    《レオナルド》
    1452~1519年フィレンツェダビンチ村生まれ
    ヴェロッキオに弟子入り
    才能あり20才で親方
    ミラノ公国へ
    修道院の食堂の壁画を命じられた
    フィレンツェに戻る
    壁画制作をレオナルドとミケランジェロに依頼、競争させた
    しかし2人共放棄し未完で終わる
    肖像画を手掛けた
    スフマートの技術、空気遠近法、改良し続けた
    フランソワ1世がパトロン
    十分な邸宅を与えた、彼に見守られながら死亡

    《内容》
    〇経験は嘘をつかない
    経験こそ教師
    経験は事実、経験を役立てることができないのは自分の解釈が間違っている
    多くの意見を求める

    〇幸福と嫉妬
    幸福や富を手に入れても嫉妬がついて回る
    嫉妬が人間にとってどうしても避けられない普遍的な感情
    その感情に振り回されて他者を攻撃するのが危険であると警鐘を鳴らしている

    〇不健全な学習
    好奇心は自ら育てるものだ
    画家は他人の絵を手本にした時、ろくな絵を描かない
    しかし自然の事物から学ぶなら良い成果を生むだろう
    人間は多くのものを発明してきたが、自然ほど美しく無駄のない発明をすることはできない
    レオナルドの創作は、芸術自然科学哲学が渾然と融合している

  • レビュー400冊目。そこにレオナルドがくるとは、さすが、もってますね、レオナルドさんは。
    レオナルドが気になったのは、親の影響かもしれない。そういうのはあまり認めたくないものだが、中高生くらいから知ってて、始めの記憶があまりないものは多くはそうだろう。もしくは授業とかだったか?
    ついこないだ、ルーブルで15年ぶりとかのモナリザをみてきたけども、なんだかんだで、常にどこかで縁がある。
    そんで、西洋思想史を辿るにあたって、ルネサンスを超えるときにレオナルドはスルーできない、やはり目配せくらいしていくべきだろう、と、手に取る。
    それこそ高校生くらいのころにも読もうとしたが、この岩波文庫の漢字が難しくて読書が進まず、最初の人生論のあたりでやめた。
    今、改めて読んでみると、ふんふん、なんとも隅から隅まで読むべきかは悩むのだけども、そこかしこをつまむことで、色々とレオナルドの景色は見えてくる。

    ・経験の弟子
    ってやつは、ガリレオへ続く科学革命の予言の言葉

    ・権威を引いて論ずるものは才能を用いるにあらず、ただ記憶を用いるに過ぎぬ。
    ってやつは、カントの啓蒙につづく勇気を与えてくれる

    ・数学の至上の確実性
    これは、ここまで断言してたのか、と驚く

    ・欲望を伴わぬ勉強は記憶をそこない、
    これはどきり

    ・十分に終わりのことを考えよ。まず最初に終わりを考慮せよ。
    これぞ、あらゆるプロジェクトマネジメントの真髄

    ・p49にて、ルクレティウスをひいているのにも驚いた。


    文学の章も、ほとんど読んでないが楽しい。説話集のようなものまである。レオナルドの探索はここまで及んでいたのかと驚かされる。

    「絵の本」から、の章、ここはレオナルドの真骨頂のひとつか。

    ・運動は一切の生命の源である
    いいじゃない

    ・もし君がひとりでいるなら、君はすっかり君のものである。
    こんな励ましの言葉はなかなかかけてもらえない。



    久々に読んでみたことで、松岡正剛が、千夜千冊で、
    「 しかし、一度はレオナルドの『手記』は手にとってみたほうがいい。おそらく、諸君に名状しがたい自信をもたらすだろうからである。」
    と言ってる意味がよくわかった。
    これを読んで励まされることができた自分は、大きくは間違えてはいないだろう、と思えた。

  • 人生論の部分は、経験主義や無の思索などが面白い。ルネッサンス芸術は「自然を師とし」、一種の経験主義的芸術観をもっていたのだなとわかる。

    文学では動物譚が面白い。ワニの口に飛びこんで、ワニを殺す「ねこいたち」については、『職方外紀』にみえる。『博物誌』「徳の花」「アチュルバ」「トレソル」などの中世動物譚からの引用らしい。

    絵画論では詩や彫刻とのちがい、絵画が空気など形のないものも描く点で彫刻よりまさっていることなどの論争があり、あとは遠近法・陰・動き・衣服のシワなどの各論である。最後は洪水とか、戦争の描写でちょっと黙示録ににている。

  • 経験は嘘をつかない。
    経験に対する深い信頼をもつこと。経験を役立てることができないのは、経験の解釈を誤っているからだ。経験を糧にできるかどうかは本人の解釈次第である。
    確証バイアスを克服するには、他者からのフィードバックを生かす。ただ根拠のない批判は気にしなくてよい。
    認識しなければ、愛情も怒りもうまれない。
    妥協せず、納得するまで丁寧に追求することが真の価値を産む。
    物事を終わりから考えて行動する。
    内発的動機を伴わない学習は不健全な学習であり、意味がない。
    自然から学ぶ。
    自然は美しく、無駄がない。合理的である。その機能やしくみを学び、日常に生かしていく。(大いに同意。自然には尊敬と安心を感じる。)
    立派に費やされた1日に幸福な眠りが訪れるように、立派に費やされた人生には幸福な死が訪れる。
    (今の私は立派に過ごせない日ばかりで幸福な眠りが訪れない。幸福な眠りを得たい。)

  • ふむ

  • 言わずと知れた天才の手記。

    意味が分かるところを選んだらしい。
    旧字体のままであり新訳が待たれる。

    文学は実に見事な比喩表現を使っており、
    イソップ寓話を髣髴とさせる。
    教会が支配する世界において、
    古い価値観と戦った天才の苦労が偲ばれる。

    半分は絵に関する技術論だが、
    絵心が無いので役に立つかは分からない。

  • 2019.11.1
    ようやく読了。
    結構苦痛。

    箴言、レオナルド的賢者タイムへの考察。

    幸福には前髪しかない。
    後ろは禿げているからね。

  • 配置場所:摂枚文庫本
    請求記号:723.37||L
    資料ID:95190579

  • 人生論
    文学
    「絵の本」から

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