うるしの話 (岩波文庫 青 567-1)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003356715

作品紹介・あらすじ

日本固有のすぐれた技法と美しさで、世界に知られる漆芸。今日の化学塗料にも優る堅牢さをもつ漆は、古くから日本人の生活にとけこんできた。本書は漆聖とよばれた著者が、体験を織り交ぜながら語ったものである。

感想・レビュー・書評

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  • うるしに関する展覧会に行ったことがきっかけ。
    本だけでは分かりにくいところはあるものの、それでもうるしの特殊性は伝わってくる。

    人間国宝の言葉は重みがあり、ところどころ辛辣な意見が観られるところも面白い。

  • 毎日出版文化賞(第19回)】【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB00115829

  •  石川県金沢出身の人間国宝、漆芸家松田権六の取材記録。
     漆のこと、種類、塗り方、装飾法、器胎、地方漆器の特色等々、惜しみなく細かく説明してくれて有難い本だ。
     上野の美術学校(現東京芸術大学)を卒業しても就職口がなく、仕方なくペンキ屋で働いていた。仕事の合間に作った未完成の作品(手箱)を友達が勝手に農商務省の展覧会に応募し、それが最優秀賞二等賞に入選。多額の賞金が入った上に、政府はそれをドイツに出展し、名誉大賞をとったという。さすが!
      その後は、パイロットで蒔絵万年筆を創始、ダンヒルパイプの漆塗り、岩崎邸、国会議事堂、フランスコティの宮殿、そして大型汽船の内装を手掛け、晩年は日本の伝統工芸、時代椀の普及に取り組んだ。残念なことに時代は戦時下。美しく塗られた大型汽船は戦争に駆り出され、時代碗図録刊行のために集めた資料は戦災で燃えてしまった。
     仕事はほぼ依頼されて行っていたようだが、大型汽船に関しては別。熱心に郵船会社へかけあってプロモートするが、ことごとく断られる。やっとのことで許可が下り、人間国宝松田が塗った扉を付けた照国丸と靖国丸はイギリスに渡り、インド洋を経て帰ってきた。ヨーロッパの人々の称賛を受け、漆がいかに強くて美しいかを証明したのだ。松田氏は言う。「私はこの扉を引き受けた時から会社を相手にするつもりはなかった。日本人相手にすべからずという印象を受けたからである。むしろ欧州航路の船を利用して、外人に漆芸の美を喚起させようと思って、ご奉公のつもりでしたのである。私の相手はたった一人でいいから具眼の外国人であった。西洋人に認識させるとともに、近代生活に漆芸の分野を新しく開拓しようと努力したのだ。」
    それにしてもたった2週間で漆の扉を、しかも蛇籠と藤の花の豪華な蒔絵まで施して仕上げるとは……そんなこと可能なのか?さすがとしか言いようがない。

     文庫本の解説は生徒のおひとり大場松魚さん。先生からは、「蒔絵を勉強するなら、毎日一案は図案を画きとめること」「大和絵を勉強すること」そして「古いものを大切にする。そして伝統を支える技術や精神を大切に伝えていく。それとともに、古いものを勉強してさらに進ませなくてはいけない。変化させるのではなく、進化させることが時代を新しくしていくのだ。」と教えられたという。

  • 何とも美しいうるしの話。素人でも興味さえあればぐんぐん引き込まれて一気に読めます。その理由は、歯切れ良く流れるような文章にあり、著者の美意識の高さが隅々にまで行き渡っているように感じられます。漆工芸品の鑑賞がますます楽しくなる一冊です。

  • 「漆聖」と言われた方。作品を何度も観た。もう言葉もないほどに素晴らしい。人間が創る宝石が漆器だと思っているが、その表面の漆黒の深みにハマる。
    漆についての温かみと熱情こもる解説。そして自身の修業と活動の軌跡。こういう方こそ「国宝」という名にふさわしい。

  • 漆芸の深い森の入り口をほんの少し紹介する程度に留めていますが、実践する人だけが語ることのできる内容はものすごく説得力があります。
    第二部の「漆とともに六十年」に書いてある自身の決して平坦ではない道のりをハングリーな姿勢で駆けぬけてきたことに感動。

  • 漆の教科書と言うべき充実した内容でした。

  • 746夜

  • まるで目の前で松田権六さんの特別授業か講義を受けているような感じで、親しみをもって楽しく読めた。

  • まだ読めてない。うるし工芸仲間のすすめも有るので、ぜひ読みたいです。

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