反復 (岩波文庫)

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制作 : Soren Kierkegaard  桝田 啓三郎 
  • 岩波書店 (1983年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003363515

反復 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  人間であるということの豊かさのひとつは、われわれが「反復」する動物であるということを自覚できる種であり、「反復」という行為に積極的な意味を見出せることであるだろう。  
     ところでこの反復という前進の運動の逆方向が「追憶」ということになるが、追憶は「後方に向かって反復」されるにすぎない。ギリシア人にとって「追憶」は認識のすべてを司るものであるのに対し、「反復」こそ新しき哲学の概念であり(キルケゴール時代における)、ライプニッツしかこれまでその点に気づいていなかったのだとキルケゴールは述べたうえで、人生における恋愛に的を絞って考察してゆく。(恋愛がキルケゴールにとって生きるか死ぬかの大問題足り得たことも共感するところが多い)
     キルケゴールはこんな逸話を用意してくれた。わたし(キルケゴール)が出会ったある若き青年が娘に恋いこがれて詩人のようになった。しかし、恋を賛美してやまぬ彼がみずから進んで老人になっていることにわたしは気づいた。彼は娘に近づこうとすればするほど遠ざかっているというみずからの境地に一向に気がつかないでいる。つまりは、恋の始まりと終りを取り違えてしまう「錯誤」に、これから起こるであろう「反復」による獲得を「追憶」という喪失にいきなりすり替えて、破滅することをみずから始めてしまうという不幸に気がつかないでいるということである。 「追憶は喪失から始まるという大きな利益をもっている、だからそれは安全だ、失うべき何ものももたないからである。」
     ひとは甘く漂う恋の気分に詩を憶えていつまでも浸ることができる。しかしそれと同時に、恋の気分を断ち切ってしまうような生命力の湧出にも神秘を見出す生き物でもある。こうした神秘性こそが恋から愛への移行の鍵を握るものであり、キルケゴールは「(恋の)気分を利用することのできるアイロニカルな弾力性」が人間の生にもともと備わった形式であるということを強く訴えてやまない。キルケゴールの書物が放つ言葉から、自身が生きているということに並々ならぬ感謝の念がひしひしと伝わってくるようであり、幸福を求めるその姿勢は日常のありきたりな毎日を称揚することから始まるということを教えてくれていて、瑞々しい感受のほとばしりに胸を打つ。
     「ほんとうは、反復の恋こそ唯一の幸福な恋なのだ。反復の恋には、追憶の恋と同じように、期待の不安定さがない、探険に伴う不安な冒険もない、しかしまた、追憶のもつ哀愁もない、そこには瞬間の至福な確実さがある。」 「古いものにはけっして飽きることがない、そして古いものが目の前にあると、ひとは幸福になる、しかも、反復が何か新しいものでなければならぬかのような思い違いをしないひとだけが、ほんとうに幸福になる。」
     キルケゴールの著作が、この『反復』に限らずきわめて小説的なスタイルを用いながら哲学的な考察を行うことが少なからずあるのは、彼の思想というものが人間の豊かな生の形式に対して、しなやかに反応し得ることを心がけている証左ではないだろうか。

  • 人生は反復であり、そして反復こそ人生の美しさであることを理解しないものは、自ら自分に判決をくだしたも同然で、しょせん逃れられぬ運命、つまり自滅のほかあるまい。

    反復

    本も生も学習も。


    N・Nさま

  • 俺はまた本書通じて偽名著者に触れることで、かつて実存の内奥で発生し今尚余震のやまぬ〈大地震〉を憂鬱に追憶している。

    2011年5月5日読了

  • 反復を哲学のカテゴリーとして理解することは、僕の今の能力では難しく、どうしても下世話に理解してしまいそうになる。

  • 「反復」の意味を捉えるのに一苦労する作品。

    反復が文字通りの俗な意味に捉えられてしまう罠が張り巡らされているのです。

  • 柏市の図書館から借りたまま

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S.キルケゴールの作品

反復 (岩波文庫)の作品紹介

愛しながらも結婚にふみきれぬ憂鬱質の青年詩人。彼を見守る冷静な一人の心理観察者。『反復』は、さながら一篇の恋愛心理小説のごとく書かれている。だがここには、前に向かって人生を生きよ、と説くキルケゴールの厳粛なキリスト教的人生観が織りこまれていて、それが彼自身の不幸な恋愛体験に即して展開されているのである。

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