- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003394410
感想・レビュー・書評
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数学修士までの経験を持って読みました。かなり良い本だと思います。
ゲーデルの論文部分はいまさら読まなくとも、いまではより洗練された不完全性定理の証明は専門書を探せばあると思うのでよい気がします。
しかし、後半の解説(第2部)が他の本にはない当時の論争の背景や雰囲気を知れるものでした。
中でも、「数学の基礎をどうとらえるか」という疑問を持って読める点は素晴らしい。
集合論研究のケネス・キューネンは彼が執筆した有名な教科書[*1]の中で、数学の基礎に対する哲学的アプローチは、
・プラトミズム
・有限主義
・形式主義
の3つあると述べています。
正直、有限主義者は現代の数学界隈ではほとんど相手にされないでしょう。
しかし、プラトニストと形式主義者は最終的な成果物がほぼ完全に一致するので見かけ上区別できません。
それでも根本思想は異なるので私はこの点で長らく混乱していました。
そして、この「不完全性定理」を読んで初めて、両者の立場の違いをはっきり理解できた気がします。
ある程度数学を専門にしてきた人で、結局自分は何をしているのか? という疑問が拭い去れない人はぜひ一読してみてほしいです。
[*1] キューネン数学基礎論講義, 藤田博司訳詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ゲーデル自身の論文部分はイミフなので別途解説本を。一方解説部分ではシビレるほどの感銘を受けました。数学の基礎的な部分に「なんかうさんくさい感じ」を抱いていたのですが、100年前にその部分に関する激論があったんですね。クロネッカーとかその辺調べてみたい
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後半の解説から読み始めて正解だった。
解説では不完全性定理が登場する背景が語られているが、私はこの部分を一篇の小説として読んだ。というより、読めた。
読んだこと自体はもうだいぶ昔であるけれど、未だにヒルベルト計画が不完全性定理によって破壊されるまでの流れがドラマティックで印象に残っている。 -
数学の完全化を目指すヒルベルト・プログラムに対して、大きな修正を起こさせたのは、若きゲーデルによる「不完全性定理」であった。彼の定理によれば、「頑張って(自然数を用いて)数学論理を組み立てても、正しいのか誤っているのかを証明できない命題を含んでしまう。また仮にその論理に含まれる命題を真か偽か必ず言えるものを作れたとしても、その数学論理全体が無矛盾だということを、その数学論理体系では証明できない。」ということだ。数学ですら完璧な意味で論理的ではなかったのだ。