生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

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制作 : Erwin Schr¨odinger  岡 小天  鎮目 恭夫 
  • 岩波書店 (2008年5月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003394618

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 量子力学で有名な物理学者シュレーディンガーが生物学に迫った小著で名著。「生物と無生物のあいだ」のネタ本だけど、半世紀以上前に書かれているのに、こっちの方がどきどきわくわく面白い!
    中学生のころ読んでいたら絶対、物理学が生物学を学ぼうと誓っていたよ。もったいない。

  • 方式の名前にもなる有名な理論物理学者のシュレディンガーが生命とは何かについて量子力学の側面から問い、分子生物学への道を切り開いた言われるこの本。

    生物を分子・原子の集まりとして見ている私として、量子力学的見方で生命を見ることはとても興味深ったです。
    「われわれの身体は原子に比べて、なぜ、そんなに大きくなければならないのでしょうか?」(第1章4節)

    原子とは平常状態において常に振動していて分散・拡散する性質(エントロピー増大の法則)があるにも関わらず、なぜ生命は生命としてその体および遺伝子を保持できるのか。

    当時ワトソン=クリックによって遺伝子の二重らせん構造が解き明かされていない段階において、遺伝物質が非周期性結晶であり、その物質の大きさについて量子力学的側面から論じているいる章などは興奮を禁じえないです。

    一方で生命がエントロピー増大の法則に従わず秩序から秩序への変化を維持している点の説明がよくわからなかったです。

    あと、シュレディンガーの性生活がなかなか強烈であることに驚きました。

  • ワトソンやクリックも大発見前に読んでいた分子生物学の火付け役?のような本ということで、さすがにおもしろい。超一流の思考が見られる。

    量子論の基礎の方程式を発見し、分子生物学の火付け役にもなってるって、20世紀の2大発見両方に関っていると考えるとすごい人だなぁ。

    こういうのを天才というのだろうか。

    DNAと遺伝情報に関するところは言わずもがな、エントロピーのところも、「散逸構造」の概念の先取りだし。いまだに、「生命とは何か?」と聞かれたら「散逸構造だ」と答えるか、何かしらDNAに関することを答えるかのどちらかの人間が多いんじゃないだろうか。

    ・・・こういうのを天才というのだろうか!

    あとがき的なところに、人間の意識に関して書かれている短い部分がある。ここでシュレーディンガーは、人間の意識が存在するということを、遺伝の問題やエントロピー減少の問題とは別次元の、もっとも難しく必然的に形而上学的・哲学的にならざるを得ない問題としてわざと本編とは別に記している。ここはけっこうトンデモなところがあって、依拠しているのはウパニシャット哲学で、人間の意識がそれぞれの人に個別にあって、人が死んだり生まれたりするとその個数が変わるなんておかしな考えであると一蹴している。いわく、意識というのは唯一、あるのみであると。そしてその根拠が、女性を抱いた時にひとつになる感じがあるじゃないか、というような話だから。。。

    こういうのを天才というのだろうか(笑)。

  • 【きまじめな物理学者の探求】
    本書が最初に出版されたのは1944年,まだ量子力学が疑いもない第一原理と認識されて間もない頃のことだ.ちなみにDNAの二重螺旋構造が提唱されたのはその10年後になる.

    まだ生物が神秘的なベールに包まれていた時代だったとは思えないほど,恐れず物理学の立場に立って,現代の描像にも通じる議論が展開されている事には驚かずにはいられない.

    【この著書の意義は何処に】
    結論を一口に言ってしまうと,「生命はたんぱく質という頑丈な歯車によって動く,機械仕掛けである.それは複雑だけれど,物理法則と矛盾しない理解は可能になるはずだ」これだけ聞くと何と平凡な結論か!

    経験的に「生物というものが居てもまぁ不思議はない」と捉えるごく普通の人にとっては,こんな結論を引き出すのに文庫本1冊をあてがう必要なんてないのかもしれない.

    むしろこの本は,Schrodinger の言葉を借りれば「きまじめな物理学の徒」に対してこそ意義を持つと思う.「きまじめな物理学の徒」とは,量子力学を唯一無二の第1原理と信じて疑わず,しかも観測される全ての物理現象は,大数の法則により初めて秩序を獲得し,法則が見出されるという事実を或る程度理解している,そんな人々のことだ.

    そんな「きまじめ屋」の前に生物なるものがひょっこり現れれば,彼の頭は疑問で溢れかえることになる事は想像に難くない.

    生細胞を構成するたんぱく質の数は決して巨視的とは言えない.であるにも関わらず,それらが高度に分化し,秩序だった働きをするのはどうしてか.

    遺伝子という疑いも無く微視的な代物が,これほど安定に受け継がれてゆくのはどうしてか.

    生命に備わる,エントロピーを捨てる能力は,物理の視点からどう解釈されるべきか.

    ...などなど,上に挙げたどの疑問も,「物理学は全ての自然現象を線で結ばなきゃいけない」という立場からは是非とも答えたいものだ.

    慎ましやかな物理学の立場から,それらやや卑怯な質問に対して真剣に骨折って議論したのが本書といえる.
    思い切ってかいつまむ

    この本の中心的興味は,
    (1) 生命そのものの安定性は物理学で説明できるのか
    (2) 秩序を保ち続ける生命活動は,何らかの物理法則に従うのか
    の2つと言える.そして Schrodinger は(1)には yes と,そして (2) には maybe と答えたはずだ.

    (1) に関しては,量子力学から導かれる分子の安定性こそが,生命を構成するたんぱく質の安定性に他ならない.遺伝や突然変異も,分子のエネルギー構造から説明される.
    現代では「たんぱく質」が,より正確に DNA に置き換わるだけで,この描像は実に的を射ている.

    そして(2) こそが,現在でも研究が続いているわけで,「未解決難問」のカテゴリーに属する.
    僕の理解では,たぶん Schrodinger の考えは,
    「生命活動は,量子力学にしたがって行われるに違いないが,それは決して統計によって秩序を得るものではない.
    それゆえ,統計に頼らない緻密な理論が必要であり,現在の物理学はこの問題を扱うことが出来ない」
    ということだと思う.

    そもそも量子力学は,現在完成したといっても巨視的な系を十分満足に説明できるわけではない.
    物性に限っても,強磁性や超伝導のメカニズムが共通認識になってきたのは最近の話だ.
    しかもそれは巨視的な,「統計性」が前程にある系でしかない.

    対して生命現象においては,一つ一つの分子がそれぞれに重要な役割を演じる歯車なのだから,「統計性」によって導かれる物理法則では歯が立たないわけだ.
    たとえばエントロピーを減少させるという生命の驚異的メカニズムは,(生命は孤立系でないので熱力学的に矛盾は無いが!)あきらかに構成分子一つ一つの動力学によるものだ.

    これは量子力学の限界というより,物理学者が地団駄している,と言った方が正しい気がする. Schrodinger も「我々の美しい統計理論は,(生命現象という)当面の問題を内包していないのです」と悔しそうに述べている.

    でもだからこそ,生命は未知であると同時に魅力的な研究対象でありつづけるんだろう.
    最近では,生物を複雑系の立場から研究する流れが強い.生命現象に共通な構造を現象論的に定式化しようという試みなんだと僕は思っている.
    きっと,そういう現象論を物理学の第1原理でつなぎ合わせることが出来れば,Schrodinger への最上のはなむけになるんだろう.

    (2009年ごろの自分の読書ログからの転載です)

  • 積読だったが、『「わかる」とはどういうことか』にシュレーディンガーの負のエントロピー論が出てきたので、ひっぱり出してきた。曰く「生命体は負エントロピーを食べて生きている」

  • 猫好きで有名なシュレーディンガーの著書。量子論からの分子としてのDNAによる永続性の維持、あたりまでは面白かったが、エントロピーの増大を抑制するための負のエントロピーの摂取、のあたり以降はさっぱり意味がわからなかった。で、結局生命とは何なのかはわからないまま。まあ、当たり前だが。
    古典なのだろうが、いま新しい刺激を受ける著作ではなかった。という印象。

    どこまでいっても次から次へと新しい理論が提唱され、裏付けられる。それでいて、どこまでいっても解明されない謎は残り続け、さらに新しい謎が生まれる。物理学、生命科学、脳科学、天文学。。。
    これはきっと人と神との終わりのないゲームなのだろうと思う。

  • いや~難しい。本当に講演録ですか?聴衆は分かったの?生物学に関する説明にはついていけましたが、量子力学の説明には全く歯が立ちません。エントロピーの辺りはまだ馴染みがあったけど、遺伝子構造の熱力学による説明はチンプンカンプン。更に、エピローグではウパニシャッド哲学が登場。難し過ぎたので、もっと修行してきます。

  • 生きている生物体の空間的境界の内部で起こる時間空間的事象は物理学と化学によってどのように説明されるか。
    今日、これは生物学者たち、主に遺伝学者たちによって生物体の実際の物質的構造とその働きについて十分な知識が得られて生きている生物体の内部で時間的空間的に起こっていることをどうしても説明できなかったのはどういう点で、それはなぜだったかをいうことができる。

    生物体の最も肝要な原子配列やその間の相互作用は物理学者や化学者が従来実験的理論的対象としてきたあらゆる原子配列とは根本的に異なったもの。根本的差異とは物理と化学の法則は全て統計的な性格を持つもの、生物体のそれは違う、ということ。

    有名な本だけどそこまでいいかわからない。プリゴジンの方が好きだな

  • 2016年2月新着

  • 20世紀前半の量子力学の大家・シュレーディンガーが、物理学的視点から生物の生命現象を解き明かそうとした、1944年の著作である。日本語訳は1951年に出版された。
    当時はまだ、世界の第一級の物理学者の間でも、生物の生命現象には、生命以外の全ての物質が従う物理学の基本法則を超越した何らかの力が関与しているかもしれないとの思いが漠然と抱かれていた。そうした思いは、1953年のワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の発見を決定的な転機として生まれた分子生物学の発展によって過去の遺物となったが、その約10年前に発表された本書は、そうしたテーマのついての世界の物理学者と生物学者の関心を喚起するのに、極めて重要な役割を果たしたと言われている。
    本書で著者は、生物の遺伝の仕組みと、染色体行動における物質の構造と法則を、物理学と化学の視点から推論しているが、出版後70年を経てなお興味深いものはエントロピーに関する考察と思う。
    著者はエントロピーと生命の関係について、「エントロピー増大の法則」が示すところによれば、物体は崩壊を経て平衡状態に至るにも係らず、生物が平衡状態にはならないのは、生物が、食べたり、飲んだり、呼吸をすることにより「負エントロピー」を絶えず取り入れているためだと説明している。つまり、生物が生存することによって増加するエントロピーを、負エントロピーによって相殺することで、エントロピーの水準を一定に保持しているのである。この事態は、「エントロピー増大の法則」が、開放されたシステムにおいては成立しないことを示しており、平衡状態とは別種の安定が成り立つとも述べている。
    現在ほど研究領域の細分化が進んでいなかった当時でさえ、著者はまえがきで、「ただ一人の人間の頭脳が、学問全体の中の一つの小さな専門領域以上のものを十分に支配することは、ほとんど不可能に近くなってしまった」が、「われわれの中の誰かが、諸々の事実や理論を総合する仕事に思いきって手を着けるより他に道がない」と“言いわけ”をして著した、科学者の本懐を示す作品である。
    (2013年6月了)

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生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)の作品紹介

量子力学を創造し、原子物理学の基礎をつくった著者が追究した生命の本質-分子生物学の生みの親となった20世紀の名著。生物の現象ことに遺伝のしくみと染色体行動における物質の構造と法則を物理学と化学で説明し、生物におけるその意義を究明する。負のエントロピー論など今も熱い議論の渦中にある科学者の本懐を示す古典。

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