- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003401613
作品紹介・あらすじ
本来法学者であるケルゼンが政治学、社会学の領域にも思考を拡げてデモクラシーの本質と価値を論じた代表作。デモクラシーとは、「自由」を最大限に実現しようとする要請から発した国家形式であるとして、絶対主義的世界観を基盤とする独裁主義国家形式と対決しようとするその論理は極めて明快であり、今なお示唆に富む。
感想・レビュー・書評
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マックス・ヴェーバーの「職業としての政治」も政治家や政治を学ぶことを志す人は読むべきであるが、この「デモクラシーの本質と価値」も読まれるべきであると考える。命令委任と自由委任のこと(命令委任は身分制議会においてでの話)、議員の免責特権のこと(これは行政権を行使する国王の横暴から勝ち取ったもの)、また特筆すべきは、ケルゼンはここで比例代表制を支持していることだ。これは選挙において勝ち負けがないこと、小選挙区は勝ち負けの要素が大きく、その区割りを決めるにあたって偶然の要素が大きくなること、また小党分立の有害さは、これは「大同小異」の要素を国民の間から議会に持ち込むだけであることで、大したことではないという(よく挙げられるワイマール共和政は、大統領に非常大権が認められていたことが問題であると思うが。)。また行政国家現象も、これは民主国家を補完するものとして顕れるであろう、とする(すくなくとも日本には当てはまらないだろうが)。民主主義には指導者が適応していることも、プラトンの「国家篇」を引用し確認している。
また最後に、ナザレ人イエスが処刑されることを、民主主義の悲劇として語っている。これは皮肉なのか、キリスト教に対する非難なのかは、推し測り難いが。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
法学の大家ハンス・ケルゼンが、アウトクラシーに対しデモクラシーを擁護し、その理念を明らかにしつつ現実にはいかなる政治が行われるべきか、ということを考察した著作。リベラル・デモクラシーの理念と現実を考察する上で、今日なお示唆にとんだ指摘を数多くしている。
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1983年 第31刷