ドイツ・イデオロギー 新編輯版 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003412435

感想・レビュー・書評

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  • マルクスとエンゲルスの草稿。題名どおり、当時のドイツ哲学界におけるイデオロギーを批判し、新たな理論を構築しようという意気込みに満ちた著作。「ドイツ・イデオロギー」が具体的に誰の思想を意味しているのかという点はもっと考慮されていいように思うが、理論の精緻さのみを重視し感覚的な人間を忘れているという批判はいまなお薬としては有効だろう。もちろん、マルクス主義そのものがそうしたイデオロギーに堕しているという可能性は常に考慮されてしかるべきだが。いずれにせよ、理論と実践の問題を考えるうえでは欠かせない著作内容。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)181
    マルクスと資本主義

  • とにかく読みにくい。ぐだぐだと考えたことが述べ連ねられている。そこかしこに後に資本論で書かれることのメモ書きが顔をのぞかせている。不完全であるが故に、なぜ資本論がいわゆるマルクス主義として読むことのできる書物になってしまったのかが想像できる。ドイツイデオロギーの方が言いたいことがまとまっているから。資本論は敵が増え過ぎて誰に対してなんのために書かれているのかよくわからない。この本では確かに唯物史観である。しかしそれは、ヘーゲル左派の論敵が史的唯物論でないからにすぎない。資本論でわからないことかはドイツイデオロギーではわかる。でも資本論はわからない。

  • マルクスやエンゲルスの体裁が整った著作とは違って、これはノートのような紙に思いついたこと、またはどこかで学んだことをひたすら書き連ねた本である。またエンゲルスが主に執筆した箇所をマルクスが書き加えたり、線を引いて消したり、また絵のような内容を書き加えたりしている。
    体裁が整った著書は当然だが取捨選択しているので、彼らがどのような発想をしているか、も当然だが取捨選択している。しかしこの本に関しては思いついたこと、また学んだことの成果をそのまま載せているので、彼らがどのようにして「唯物史観」や「共産主義」の原理を構築したかが読み取れるし、またフォイエルバッハの哲学をどのように学んでいたか、が分かる。
    とはいえ、断片的であるのは当然で、分かりにくいのはたしか。ただ生々しいマルクス、エンゲルスの頭の中身がわかる気もする。

  • マルクス著廣松渉編マルクス攻略本

  • 私は自らの研究の最も重要なテーマの一つにイデオロギーを据えながらも,イデオロギー研究の出発点ともいえる『ドイツ・イデオロギー』を読んでいなかった。そもそも,マルクスの著自体,『共産主義者宣言』(太田出版),『哲学の貧困』(岩波文庫)に続いて,3冊目にすぎない。だから,そもそもマルクスの人生において,本書がどの辺に位置づくかも知らなかったし,そもそも,本書がエンゲルスとの共著ということすら知らなかったのだ。
    そんな浅はかな私だから,ともかく新しい版の方がよいと思って,この岩波文庫版を古書店で見つけて購入したわけだが,内容以前にもいろいろ考えさせられる本であった。まず,『ドイツ・イデオロギー』はマルクスの生前には出版されなかったということ。だから故に,未完のままであり,その構成および構想も決定しないまま残されたようだ。なので,さまざまに出版されている『ドイツ・イデオロギー』は少なからず編集者の解釈を含んだものであるらしい。そんなことから日本のマルクス研究者である廣松 渉氏が1974年に河出書房からドイツ語の原語と併記して出版したということだ。それは『ドイツ・イデオロギー』を初めて読む人のためのものというよりは,マルクス研究者のための文献学的な成果ともいえるものだったようだ。それがその後,他の訳者による版も有している岩波文庫として出版される計画があったが,その後廣松氏が亡くなってしまい,その後の作業を小林氏が引き継いだとのこと。
    ということで,本書にはドイツ語は併記されていないが,マルクスとエンゲルスの手書き原稿と丁寧につき合わせて日本語化したのが本書。エンゲルスの原稿は明朝体で,マルクスの原稿はゴシック体で,それぞれの草稿に対して各々が書き入れた補足文や削除箇所,訂正なども何種類かのボールド体を使って区別され,さらにさまざまな注から成り立っている。正直いって,私のような読者にはとても読みにくいが,この2人の努力を思うとありがたく,丁寧に読むしかない。そして,本書には数枚の手書き原稿の写真が印刷されているが,これがとても面白い。といっても,文字が読めるはずはないのだが,面白いのは文字ではなくイラスト。
    さて,本書から学ぶことは大きかった。といっても,いわゆるドイツ観念論批判は前半に集中していて,後半はイデオロギーとはほとんど関係ない,歴史的記述に移行する。そういえば,『共産主義者宣言』を読んだときもそうだったなと思い出す。さて,私は10年以上前から「唯物論」とは何か,ということを時折考えている。地理的表象を研究している私の立場は大雑把にいえば観念論的である。しかし,よって立つ立場からいえば「文化唯物論」を参照すべきなのだ。しかし,いまだにウィリアムズをきちんと読んでいないし,唯物論について書かれた本からもどうも納得したものはない。ちなみに,本書でよく出てくるフォイエルバッハの『唯心論と唯物論』も実は読んだことがあったのだ。しかし,マルクスとエンゲルのフォイエルバッハに対する評価も一筋縄ではなく難しい。
    ちなみに,現在の地理学では20年前に流行った表象研究の行き過ぎに対して,「物質」なるものの復権が叫ばれている。しかし,そこでいうところの「物質」とは何を示しているのか判然とせず,どうにもこの種の議論には違和感を抱いていたのだが,それについては本書を読んですっきりとした。本書において「物質」という言葉はよく出てくるが,それは自然科学が対象とするような物質ではない。物質的交通と精神的交通(ここでいう交通とは関係性やコミュニケーションのこと),物質的労働と精神的労働などといった対比で用いられ,経済活動こそが社会編成の基礎だという。ここに,有名な土台-上部構造の理論も垣間見れるし,精神というものが社会的な生産物であるという今日的議論も登場する。そして,極めつけが「われわれはただ一つの学,歴史の学しか知らない」(p.24)というエンゲルスの言葉こそ,まさしくマルクス主義的な立場であり,だからこそ本書の前半で歴史と乖離した観念学を批判し,後半で自ら歴史記述を実践した,といえるのだろうか。

  • 6/15
    恐らく当時としては画期的な言論だったんだろうけど、やっぱり時代は流れてるなあ。

  • ドイツの哲学者、マルクス(1818-83)/エンゲルス(1820-95)の共著。1846年刊。唯物史観提唱の著。この著における「意識が生活を規定するのではなく、生活が意識を規定する」という言葉はあまりにも有名である。この著を読めば、マルクス・エンゲルスの基本理解は得られるだろう。

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著者プロフィール

マルクス
1818‐1883。ドイツの経済学者、哲学者、革命家。20世紀においてもっとも影響があった思想家とされる。資本主義経済を分析し、エンゲルスと共に共産主義思想を打ち立てた。階級の解放と廃止というその思想は今なお受け継がれている。晩年は『資本論』の執筆に専念し、自宅の椅子に座ったまま死去

「2020年 『資本論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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