職業としての学問 (岩波文庫 白 209-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003420959

感想・レビュー・書評

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  • 【レビュー】100年前にドイツで語られた学問の意義について。今も全く色褪せない。
    学問は、ある人が「どのように生きるか」について答えるものではないし、“学問の” 指導者は決してその命題に答えるべきではない。学問の役割とは、複雑化する社会の中で「自分が一体何をしているのか」について様々な面から究極的な理解を与え、各人がそれぞれの行為について自ら責任を負えるようにすることである、と。

  • ようやく読めた。一読のみでは内容を十分に理解しているとは到底言えないが、以下、現時点で読み取れたことを記載しておく。
    旧訳の序(p.85~)によると、本書におけるウェーバーの主張は主に3点である。1点目は生計の資を得る道としての学問の現状、2点目は職業としての学問にたいして人々(特に教師および研究者)がとるべき心構え、3点目は学問の職分そのものについてである。1点目について印象的であったのは、学問を職業にすることには「偶然」が大きく作用するという主張である。つまり、実力いかんよりも、学問を職業とするためには、運の側面も重要であるということである。これは現代にも通用する。2点目については、やはり「日々の仕事(ザッヘ)に帰れ」という叱咤である。文章から想像するに、当時のドイツでは、文壇上から特定の政策に関する評価、主張を行う教師や、あるいはそれを求める学生などが存在していた。これに対しウェーバーは、「学問」と「政策」とは根本的に異なるものであるということを主張した上で、個々人に与えられた仕事に集中しろと主張する。特定の学問に専心すること、仕事以外のことに心酔しないことの重要性を説くのである。3点目に関しては、合理化が進み、学問それ自体も機械化の危機に瀕している現代において、学問に求められていることは、「明確さ」と「責任感を与えること」であると述べる。現象自体が複雑化している中で、全てを語ろうとするのではなく、(例え一部分であろうとも)特定の学問的見地から、明確な学問的成果を生み出し、それを評価ではなく、ただ知見として学生に提示することによって、学問を修めるものに責任を付与することであると解釈した。
    この講演はすでに100年以上前のものであり、ここでの主張を全て現代にも応用できるとは限らない。しかし、当時のドイツの時代背景とともにこの主張を読み解くことで、彼が何を危惧し、批判し、主張しているのか、という構造に触れることができる。これは、現代にも通じるものがあると思う。現在は、総合政策的な、複数の学問的知見を組み合わせることによって、社会課題を解決するアプローチも出てきている。良くも悪くも、学問よりも、実社会に役立つことの比重が重くなってきている感覚がある。では、その中で、社会科学を探究する意味合いとは何か。ザッヘに専心しながらも、自分なりに考えを深めていきたい。

  • 短いが、内容はかなり難しく、また読み直さなければならないと感じた。

  • 職業倫理本の体をした自己啓発本な気がした笑

    「いやしくも人間としての自覚のあるものにとって、熱なしになしうるすべては、無価値だからである。」

    「作業と情熱とが――そしてとくにこの両者が合体することによってーー思いつきをさそいだすのである。だが、思いつきはいわばその欲するときにあらわれる。それはわれわれの意のままにはならない。」

    「 とにかくそれは、人が机に向かって穿鑿や探究に余念ないようなときにではなく、むしろ人がそれを期待していないようなときに、突如としてあらわれるのである。とはいえ、こうした穿鑿や探究を怠っているときや、なにか熱中する問題をもっていないようなときにも、思いつきは出てこない。」

  • もっと早くに読めばよかった。それに尽きます。大学に入る前に読めばよかった。

    ただ大学でそこそこ勉強に励んで卒業し、社会人なるものも経験した今読むと、「あの先生もこんな思いで教壇に立たれていたのかな」とか「人生のどこかでアカデミアにはもう一度戻りたいけれども、その時にこんな覚悟を改めて持っておきたいな」などなど思うこと多々で、これも感慨深かったです。

  • 研究者を目指す第一歩。研究者と教授とはどういう仕事か。

  • マックス・ウェーバー(1864~1920年)は、ドイツの政治・社会・経済学者。社会学の第二世代を代表する学者で、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(1905年)は、社会学の名著として有名である。
    本書は、著者が死去する前年の1919年1月にミュンヘンで大学生向けに行われた講演(更にパンフレットとして出版され、死去後『科学論論集』に収められた)の邦訳である。(姉妹編の『職業としての政治』もほぼ同じ時期のものである)
    本書を読むにあたっては、本公演が、キリスト教の支配する世界、かつ、第一次世界大戦(1914年7月~1918年11月)終戦直後の敗戦国ドイツ・ミュンヘンにおいて、人々の心が大戦後の動揺と既存の秩序に対する疑惑に満ちていた中で、感受性に富む青年たち(大学生)向けに行われたものであることを踏まえる必要がある。
    本書でウェーバーが言わんとしたことは、大まかにいえば以下である。
    ◆「学問がいまやかつてみられなかったほどの専門化の過程に差しかかっており、かつこの傾向は今後もずっと続くであろうという事実である。・・・実際に価値ありかつ完璧の域に達しているような業績は、こんにちではみな専門家になしとげられたものばかりである。」
    ◆「学問のばあいでは、自分の仕事が・・・いつか時代遅れになるであろうことは、だれでも知っている。これは、学問上の仕事に共通の運命である。いな、まさにここにこそ学問的業績の意義は存在する。」
    ◆学問の意味は、「それを欲しさえすれば、どんなことでもつねに学び知ることができるということ、したがってそこにはなにか神秘的な、予測しえない力がはたらいている道理がないということ」を知ることである。
    ◆学問は、「われわれにとってもっとも大切な問題、すなわちわれわれはなにをなすべきか、いかにわれわれは生きるべきか、にたいしてなにごとをも答えない」。
    ◆「政策は教師の側からいっても教室で取りあげられるべきものではない。・・・なぜなら、実践的政策的な立場設定と、政治組織や政党の立場に関する学問的分析とは、全く別のことだからである。」、「こんにち一部の青年たちが犯している誤りは、・・・講義者のなかに・・・教師ではなく指導者をもとめていることにあるのである。」
    ◆「学問はいったい個々人の実際生活にたいしてどのような積極的寄与をもたらす」のか? それは「技術、つまり実際生活においてどうすれば外界の事物や他人の行為を予測によって支配できるか」と「物事の考え方、およびそのための用具と訓練」と「明確さ」である。
    「純粋な学問(日々の仕事)に立ち返れ!」と若者を叱咤しつつ、その主張は、学問は「いかにあるか/存在(sein)」は明らかにできても「いかにあるべきか/当為(sollen)」は明らかにできない、という学問の限界を的確に指摘しており、「学問とは何か?」(というより「科学とは何か?」)を考えるにあたり、現代でも耳を傾けるべきものである。
    (ウェーバーの文章は非常に複雑と言われるものの、1936年訳の本書はかなり読み難い。新訳の講談社学術文庫の方が読み易いかもしれない)
    (2018年12月了)

  • マックスウェーバーの講演。トレルチがキリスト教絶対主義の蓋を外し、宗教の多元性を明らかにすることによってひらけてきた新しい価値観。その影響を大いに感じさせる理性と実存を峻別させるような一冊。教師と指導者は別であると。信仰や実存的生は学問の延長にあるものではないときっぱり言い切るところは気持ちいい。

    17.12.22

  • これもまた非常に難解。わかるまで読もう。

  • 以前読んだものが意訳(現代意訳?)が激しいものだったので、機会もありこっちの方を。
    旧訳序文でも述べられているように、言ってることは情勢・学問への姿勢・教えることへの姿勢に分けられる。
    個人的には、終盤に何かもうひとつ主張しているような気がするけどその辺は何を言っているのか(具体例を述べてただけなのか)また読み込む必要がありそう。
    情勢や学問への姿勢はまぁそれでよいとして、教えることへの姿勢に関してはちょい思うところあり。
    そもそもここでは教える側の絶対性のような何かが前提になっている気がする(そしてそれは確かに多くの場合において正しいとは思う)けど、教わる側は教師に対して批判的であることが可能(批判的であるべき?)なのではないかという部分をもうちょい掘り下げて考えてみたいところである。

著者プロフィール

1864-1920年。西洋近代について考察したドイツの法学者・経済学者・社会学者。代表作は、本書に収められた講演(1919年公刊)のほか、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(1920年)など。

「2018年 『仕事としての学問 仕事としての政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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