社会学的方法の規準 (岩波文庫 白 214-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003421437

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  • 実証主義の精神を承け、社会学の研究対象である社会的事実の明確な規定に筆を起こしたデュルケム(1858-1917)は、アプリオリな観念や価値判断をしりぞけて、事実を「もののように」研究することを基本的な規準と説く。ヴェーバー社会学の「価値判断からの自由」の命題とならんで、社会学の認識態度に大きな影響を与えた書。

  • お互いに似ているからという理由で連帯する社会がある。部族社会。村社会。個人は個性を持たず社会に埋没。全体の価値・信念に従う。分業はあまり進んでいない。ある無機物の固体はたくさんの分子から構成されるが、それぞれの分子は個性的な活動はしない。それに似ている。▼一方、お互いに違うからという理由で連帯する社会もある。個人はそれぞれ個性があり、得意・不得意がある。それぞれの活動はお互いに依存している。分業が進んでいる。個人はそれぞれ、お互いに依存している生物の臓器たちのよう。このような社会では、それぞれの個人が違っているからこそ連帯が生まれる。個人の人格を尊重することが大切になる。社会の側が、個人の人格尊重を求めている。まず社会ありき。デュルケームDurkheim『分業』1893

    社会的なもの。個人にとって外在的で、個人の行為・思考・感覚を拘束・規定する。全体は部分の総和ではない。個人の意識を外から束縛する規範・思考・習慣・法則(社会的事実)。まず社会ありき。デュルケームDurkheim『規準』1895
    ※個が社会を作るという意味で人間は社会的存在であり(Weber)、社会が個を作るという意味で人間は社会的存在(Durkheim)。

    自殺は個人だけの問題ではなく、規則性がある。戦争時は自殺が減る。カトリック・ユダヤの方がプロテスタントよりも自殺率が低い。既婚者は未婚よりも自殺率が低い。仲間意識・結びつき・連帯は自殺を防ぐ。自分の居場所を失う、アイデンティティを喪失すると自殺につながる。自殺は個人の病だけでなく、社会の病。自殺はプライベートな現象だけでなく社会現象。自殺は社会状態の反映として、個人に現れたもの。自殺・犯罪・非行。▼国や家の名誉のために切腹する。集団への忠誠心。連帯が強すぎる。自殺する。一方、友達いない。家族もいない。つながりがない。連帯が弱すぎる。自殺する。集団とのつながりが濃密すぎても自殺が起きるし、集団とのつながりが希薄すぎても自殺が起きる。デュルケームDurkheim『自殺』1897

    昔は階級ごとに追求できる欲求が制限されていたが、徐々に平等になってくると「これやりたい。あれやりたい」と欲求が大きくなる。欲望が過度に肥大化。「お前は農民の子なんだから諦めろ」では納得できない。しかし欲求は実現するとは限らない。焦燥感がつのり、欲求不満・挫折感を感じる。自分は価値のない人間だ。社会に幻滅。目標を喪失。虚無感。自殺する。▼社会的規律の働きが衰退・崩壊した状態。無規制。法がないこと(アノミー)。急的な社会変化によって生じる欲求・価値の攪乱(混乱)状態。▼巨大国家とバラバラの個人の間の中間団体(職業団体など)が人々に道徳的な連帯感をもたらす。デュルケームDurkheim『自殺』1897
    ※アノミー尺度(L.スロール)。社会の指導者は個人の欲求に関心を持ってないと思う。この社会は予測できない無秩序な世界だと思う。生活の目標が後退している。無力感を感じる。仲間からサポートを期待できない。

  • 抽斗が二桁は増える視点、人と科学に水を差す話題

  • 内容をまとめると、、
    社会学は哲学、心理学、諸々の学問から区別されなければならない。社会学は科学として、社会を客観的(物としての性質を持つものとして)にとらえる。個人的な問題と切り離して普遍的に社会に還元できるものが社会的事実である。

    同時期のスペンサーやコントなどの社会学者は社会学の方法論を正確に定義づけておらず、その定義づけをした点でデュルケームは価値があった。また、比較社会学に大きな価値を見いだしていた。

  • 原書名:Les Règles de la méthode sociologique

    序論
    社会的事実とはなにか
    社会的事実の観察にかんする諸基準
    正常なものと病理的なものの区別にかんする諸基準
    社会類型の構成にかんする諸基準
    社会的事実の説明にかんする諸基準
    証明の実施にかんする諸基準
    結論

    著者:エミール・デュルケーム(Durkheim, Émile, 1858-1917、フランス、社会学)
    訳者:宮島喬(1940-、東京府、社会学)

  •  ちょびちょび読んだので、途中途中ぼんやりとした理解。デュルケームが自らの社会学について述べた理論書の一つだと思う。繰り返しは多い。
     ただ、面白いと思ったのは第3章。正常なものと病理的なものの区別にかんする諸規準かな。これまで健康というものをどうしても自分は個人的な関心事として論じて来た。もちろん構築主義的な健康批判があるのも理解している。しかし、そのどちらでもない「健康論」の必要をデュルケームから示唆された気がする。健康というのはやはり社会的な「もの」として扱うべきだろう。制度でもよろしい。それを徹底的にやる。なぜ、健康が必要なのか。もう一度、個人が健康を害することは、社会的にいかなる機能を持ち、あるいは機能を不全とするのかが自分の中でまとまらないといけない。

  • 個人の感性に外在する社会という概念を持つデュルケム社会学を知ることができる

  • デュルケム社会学のエッセンスがいろいろと織り込まれている。

    今回、個人的に勉強になったのは、

    「社会的事実が個人を拘束する」という点で、デュルケムの主張はホッブスやルソーの主張(社会契約論)と大きく違わない。しかし、個々人の結合から、独特の性格を有した社会が生じるとするデュルケムの解説に対し、ホッブスやルソーは個人と社会を不連続なものとして措定した、したがって、デュルケムとかれらの議論は異なっているのだ!
     しかし、だからといって、社会の源泉を個人の本性にみいだす正統派経済学やスペンサーの議論とも異なっているのだ。なぜなら、社会の実在は個人をこえたところにあるからである!

    とデュルケムが考えていたことがわかった点である。

  • 神保町の三省堂は在庫切れで。すぐ近くの岩波ブックセンターで発見!案の定、厚いし長い…。なのでとりあえず序章と結論を先読み。だって結論に全て要約されてるもん(笑)あとはゆっくりと読む予定。

  • デュルケムによって打ち建てられた「社会学」という新たなディシプリンには如何なる方法論が要請されるのか。本書には、この新しい学を哲学など他の諸学から独立した自律的な科学たらしめようとするデュルケムの意志が、一貫して流れている。

    そこでは、コントの進歩思想に代表される目的論的歴史哲学のように社会的現実を社会外に措定した形而上学的目的に則して解釈しようとする観念論的倒錯や、スペンサーの功利主義的個人主義のように社会的事物の存在理由を個人にとっての功利性によって説明しようとする還元主義が、繰り返し批判される。社会的事実は人類史の目的論に於いて解釈されるべきものではないのだ、社会的事実は個人の心理には還元できないのだ、と。

    こうして、「社会的事実を物(=観察可能な与件)として考察せよ」「社会的事実とは、個人に対して外在的であり個人の上に拘束力を及ぼすことのできる、個人から独立したそれ自体として固有の存在である」「社会的事実は、個人に先立って存在する社会的事実によって説明されねばならない」という、実証主義的な社会科学の方法論が提示される。

    しかし、自然科学を規範として社会科学に「客観性」という概念が持ち込まれるとき、どうしてもそれはナイーヴなものとして映ってしまう。しばしば社会を生物とのアナロジーで捉えようとしているが、そのような比喩によって社会の或る本質的な側面が捨象されてしまわない保証があるだろうか、そこには観察者による対象への恣意的な解釈が予め入り込んでしまっているのではないだろうか。加えて、"社会事象の政治性"及び"社会と観察者の自己関係的機制"という社会科学に特有の事情を考えれば、デュルケムの「客観性」概念の素朴さが一層際立つように感じられる。客観的で観測可能な「物」として捉え得る限りでの社会というのは、どうしても静的なもの・現状報告的なもの・事後報告的なものとならざるを得ないのではないだろうか。そこには、「客観性」の名のもとに隠された、現状肯定的・保守的な政治性が垣間見えないだろうか。社会科学は、「客観性」の要件を満たしながら、社会の動的・変革的な契機を捉えることができるだろうか。

    社会科学に於ける「価値判断(政治性)」と「客観性」を考察したマックス・ヴェーバーの議論はその深みに達しているのだろうか。

    なお、当然のことながら、社会学では個人の実存というものは全くの埒外に置かれる。

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