鯰絵――民俗的想像力の世界 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (704ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003422717

作品紹介・あらすじ

安政二年の江戸大地震直後に、ユーモアと風刺に富んだ多色摺りの鯰絵が大量に出回った。鯰絵とそこに書かれた詞書には世直しなど民衆の願望も表象されていた。日本文化の深層を構造主義的手法で鮮やかに読み解く日本民俗学の古典。カラー図版多数

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/708157

  • 第1部 鯰絵への招待
      第1章 鯰絵
      第2章 伝説
      第3章 破壊者―救済者としての鯰
    第2部 さまざまなテーマ
      第1章 はじめに
      第2章 石と鯰
      第3章 瓢箪鯰
      第4章 テーマの構造
    第3部 隠された意味
      第1章 テーマ・シンボル・構造
      第2章 危機的出来事としての地震
    参考文献

  • 絶版だったが気になっていた本が文庫で再版されたのでさっそく読んでみた。分量も多いし、元々は1964年の学術論文だということで晦渋な書きぶりに苦戦した。それに構造主義民族学というやつもヤッパリ訳が分からん。ただ図版が多いのは良かった。

    1855年(安政2年)の旧暦10月2日夜におきた安政地震は江戸にも大きな被害をもたらした。その直後から、作者不詳・版元不詳の鯰絵が市中に大量に出回った。ユーモラスな図柄の中に、この地震を「世直し」と捉えたモチーフなどが多く見られる。

    さて、これをアウエンハント先生は、江戸と言う都会にも田舎の民俗的信仰が深く影響しているとして、鹿島信仰、水神信仰、エビス信仰など古事記の世界にまで遡るような深層をたどって分析していく。

    たしかに鹿島信仰等々の影響は明らかだとしても、ワタクシなぞが思うには、もっと当時の江戸の庶民生活に焦点を当ててやらないと何だか訳が分からない(これは解説にも、当時はまだ江戸時代研究が不十分であったとして付言されている)。大工、左官が地震で儲かる層として描かれたりなど、もっともっと俗っぽい所に鯰絵の魅力が多く含まれていると思うのだよね。民俗信仰的な要素もあれど、もっと諧謔を楽しむ江戸の都市文化の申し子として鯰絵を切り口にしてくれれば。古事記の世界まで行ってしまうのは、そういう意味でやや肩透かし。

    あと個人的には熊本県の地名「鯰」の由来を知れたのが面白かった。阿蘇で国つ神にちょん切られた大鯰が流れ着いた地との伝説があったとは。

    蛭子=エビス=少名毘古那は「小さな不具の神」、トリックスターという共通点を持ち、そのエビス複合が水界=常世観念に結びつくという説も面白く読んだ。

  • 文庫になったのを知って再読したのだけれど、昔気付かなかった新たな刺激に満ちた本だった。百太夫、恵比寿、細男の舞、いろんなものが星雲状に回転しつつある。

  • 安政の大地震の後、江戸では「鯰絵」というものが流行ったそうです。地震は地中の鯰が引き起こしていて、それを押さえているのが要石、という民間信仰に基づいたもの。そこから見えてくる庶民のユーモアや、民俗学的な解析が面白い。図版が沢山収録されているので、それを眺めているだけでも楽しいし。

    しかし文庫で600ページ越えは相当分厚いので、読みきるのにかなり時間がかかりました(苦笑)。3部構成なんですが、2部以降は横道に逸れているので、無理に読まなくても良かったかも。あんまり分析しすぎると、ちょっとこじつけっぽく思えてきちゃうというか、考えすぎのような気がしてこなくもないので・・・。作者が参考にしてる柳田やその他モトネタの日本の民俗学者の本を読むほうが話が早い気がしました。でもこれを日本人じゃなくて外国人が書いたっていうのはすごい。

  • レヴィ=ストロースのような構造主義人類学的手法で、日本の民俗を分析してみるとしたらどうだろう? この本が面白くないわけがない。
    著者アウエハントはオランダの人類学者で、なぜか日本を研究テーマに選んだらしい。柳田国男に接触し、教えを受けたこともあるようだ。
    巻末の中沢新一氏の解説によると、オランダはフランスより早く構造主義的な思考での人類学を実践していたらしく、この流れはフランスの人類学とは一応、別の流れである。ただしアウエハントはレヴィ=ストロースの影響を多大に受けているようで、本書にもレヴィ=ストロース風の数式が出てくるし、考え方もよく似ている。逆にレヴィ=ストロースがこの本に触発された部分もあったらしい。
    本書の刊行は1964年、柳田国男没から2年後だ。
    主題は安政2年(1855年)に江戸を襲った大地震の直後、江戸庶民のあいだに広まった「鯰絵」である。鯰は地震をもたらす破壊神であるとともに、「世直し」の契機をもたらし世に新生をうながす再生/創造の神でもある。
    本書では「鯰」のほかに、石神やらヒョウタンやら河童やら、様々な民俗学的主題にも話がどんどん広がっていく。
    結局鯰のイメージは雷神=弁慶=金時(金太郎)どんどん重なっていきながら、両義的な象徴として民衆のあいだに広まってゆく。そして、アウエハントはレヴィ=ストロースばりの構造分析をやってのけるのである。
    非常に清新な書物であり、面白いことこの上ない。この「新しい」本が、岩波文庫から出たということに、なぜか不思議な感じを持つ。

  • C.アウエハント『鯰絵 民俗的想像力の世界』岩波文庫、読了。地震は鯰が起こすもの--安政の江戸大地震直後に、ユーモアと風刺に飛んだ刷り物が大量に出回った。文化の深層を構造主義的手法で読み解く日本民俗学の古典。江戸民衆の想像力の深さには圧倒される。大著ながら図版も多く読みやすい。

  • 祝復刊!祝文庫化!

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    「安政二年の江戸大地震直後に、ユーモアと風刺に富んだ多色摺りの鯰絵が大量に出回った。基本モチーフは、「地震鯰」「鹿島大明神」「要石」。鯰絵とそこに書かれた詞書には世直しなど民衆の願望も表象されていた。日本文化の深層を構造主義的手法で鮮やかに読み解く日本民俗学の古典。カラー図版多数。(解説=宮田登・中沢新一) 」

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