- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003770115
作品紹介・あらすじ
反ファシズム活動の罪で政治囚として一僻村に流刑に処された作者=主人公カルロ・レーヴィ(1902‐75)が目のあたりにした、南イタリアの苛烈な現実。現代文明から隔絶した、呪術や神話が息づく寒村での生活を透徹した視線で描きだす、戦後のイタリア文学を代表する傑作。
感想・レビュー・書評
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反ファシズムで流刑された寒村から
国家の憂いを綴ったルポルタージュ小説
印象深いタイトルは、農民の慰めえない劣等感や救済されない苦痛を揶揄している
政治のリアリズムと民俗学の偶像的表現のアンバランスが、何とも作品を魅力的にしていた -
パヴェーゼとは違い、ディープに反ファシスト運動に関わっていた作者。流刑されたイタリアの南部地区はキリストも見放した絶望の地だった。冒頭の連れてこられた様子はがが屠殺場に運送されてきたように、うちひしがれうなだれている。
どうやって希望を見い出だしていこうか煩悶する中、医療の知識を持つため、村人からは積極的に受け入れられる。
地形的にも行き止まりの土地で、消化不良の情念が発酵した様子がなんともねえ、味わいぶかいよ。自分がこういう何にもない場所で生まれ育ったから、情念→発酵→腐敗→乾燥、わかるわかる。 -
イタリアの小説というと色恋沙汰ばかりかと思いきや、反ファシズム、パルチザン運動に関するものも結構ある。
著者のカルロ・レーヴィもレオーネ・ギンズブルグ(ナタリア・ギンズブルグの夫)とも近い関係にあった反ファシズムの活動家で、1935年にトリノで逮捕され、南イタリアのど田舎に流刑にされた。本書はそのときの体験をもとに書かれたものである。同時期に同じように流されたパヴェーゼも「流刑」を著している。日本でレジスタンスといっても、ビラまいて憲兵にぼこされるぐらいなもので文学の余地もないが、さすがイタリアなのである。
面白いのは政治的な内容よりも民俗学的な視点からの観察が多く書かれていることで、山賊の伝説や魔女の呪術、洗礼を受けずに死んだ子どもの霊など、歴史家カルロ・ギンズブルグが中世のフリウリ地方で発掘したような土着の風習は、第二次大戦期でも現役なのである。