- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003811054
作品紹介・あらすじ
『倫理学』と並ぶ和辻哲郎の主著。古代から近代に至る倫理思想の展開とそれを支える社会構造の変遷を、宗教から文学まで視野に収めた壮大なスケールで描き出す試みは、日本思想の通史としていまだ類例がない。戦後まもない1952年に刊行された本著は、これ自体が近代日本の思惟の可能性と困難を照らす生きた史料である。
感想・レビュー・書評
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古代国家の統一に祭祀的要素があったことは説通りに了解できても、そこから「清さ」「慈愛」「社会正義」と古代社会をユートピアに持ち上げる筋書きにはついて行けない。祭祀的集団の「清と穢」の考察でも、「慈愛」よりも「穢れ」に対する集団による差別や迫害の存在を想像するのだが、和辻氏には天皇の権威に基づいた民族統一というご自分のシナリオへの希求が勝るようだ。「感情融合的な精神共同体」なる幻想の思想史は、「利己心」は「私心を没して全体に帰依する」利他心にかわり、牧歌的な「慈愛」になる。
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解説:木村純二
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日本に倫理と呼べるほどの思想的潮流があったのかと、タイトルを見たときに胡散臭く感じたのが第一印象だった。
そんな思いを引きずりながら導入部を読んでみると、倫理学と倫理思想は別物だとある。
倫理学が大系的なものであるの対し、倫理思想はかくあるべきという教えのようなものだと。
それでやっと、なるほどと思った次第。
日本では西洋と異なり、行動規範に係わる原理や基底を要求する傾向が少なかった。
あるときはキリスト教義だったり、あるときは近代的理性だったりするものが日本には無い。
そのため倫理を原理から演繹的に派生するものと捉えるのではなく、和を持って尊しとなすというような空気で捉えるしかない。
その空気を感じさせてくれるものとして本書はあると思っている。
ちなみに我々の生きる現代の視座に近い4巻から読んでみることにした。 -
面白かった。倫理思想とはいいながら、和辻流日本史講義のように読めました。導入部分こそ、ちょっと手こずりましたが、それ以降はどんどん読み進められます。ここの説に対する学界の反応、批判はともかく、これだけ広い視野で歴史全体を見通せるなんて、やはりすごいと思います。