国語学原論 上 (岩波文庫 青 N 110-1)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003815014

作品紹介・あらすじ

時枝誠記(一九〇〇‐一九六七)は、いわゆるソシュール的言語理論を批判し、「言語過程説」と名付けられた独自の言語観を提示した。「旧い国語研究の伝統」と「西洋言語学説の流れ」を見据え、国語学の新たな基礎づけを試みた。

感想・レビュー・書評

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  • 古い書物で、慣れない用語もあるし、わかりづらい。
    この本の主張は、言語の本質である主体性に迫りながら、ソシュールの説を言語論として批判していることに尽きる。その本質に迫る立場を言語過程説と呼んでいる。

    「(上)p26言語研究の究極の課題は言語の対象としての本質を明らかにすることでありそれは難しい」

    とあるように、言葉が示す意味を指し示すことの難しさを挙げている。
    著者が批判しているのは、ソシュールの言語論は言語を人の主体性を離れ、言語のみを取り上げて分析している点である。確かに人間の意図を抜きにして、言葉だけの分類や分析はほとんど意味がないように思え、言葉を科学的に分析できないという著者の主張は妥当だと思う。

    言葉を使うとき、使っている人が何を示しているのか、何を意味しているのか、ということに焦点を当てると、お互いが理解しているという前提は幻想に過ぎないという場面に遭遇することはしばしばある。そのような場合でも意思の疎通ができているとお互い思うのだが、事実は各人の解釈があるのみで完璧な意思疎通というものは存在しないと思う。

    ソシュールの言語論は歯切れがいいかもしれないが、分類や分析ができそうだと言って取り組んだところで、例外があったり、分類しきれないところがあったりと、言語全てに当てはまるルールが導けなかったのだと理解できる。

  • 生きるための古典
    ことば

  • 第1篇 総論
    1.言語研究の態度
    2.言語研究の対象
    3.対象の把握と解釈作業
    4.言語に対する主体的立場と観察的立場
    5.言語の存在条件としての主体、場面及び素材
    6.フェルディナン・ド・ソシュールの言語理論に対する批判
    7.言語構成観より言語過程観へ
    8.言語の構成的要素と言語の過程的段階
    9.言語による理解と言語の鑑賞
    10.言語の社会性
    11.国語及び日本語の概念
    12.言語の史的認識と変化の主体としての「言語(ラング)」の概念

    第2篇 各論
    第1章 音声論
    1.リズム
    2.音節
    3.母音子音
    4.音声と音韻
    5.音声の過程的構造と音声の分類

    第2章 文字論
    1.文字の本質とその分類
    2.国語の文字記載法(用字法)の体系
    3.文字の記載法と語の変遷
    4.表音文字の表意性

    第3章 文法論
    1.言語に於ける単位的なるものー単語と文ー
    2.単語に於ける詞・辞の分類とその分類基礎

  • 昭和16年刊行。ソシュールの構成的言語観を批判し、言語を話者や記述者の主観的生成の側面からとらえ直し、言語過程説を提示し、「主体」、「素材」、「場面」などの分析概念を示し、この言語観から音韻、文字、文法などの現象を説明していき、明治以降の学説の破綻を批判していく。とくに文法を鈴木朗などの国学の成果を援用しながら、詞と辞から分析していく所はとても興味深い。

  • 時枝文法でおなじみ時枝誠記氏の国語学書。
    縦横無尽という言葉がふさわしいほどの博学っぷり。ソシュール的言語学を真っ向から批判し、国語学の基礎を作り出した功労者。
    「国語学」と銘打ってあるが、完璧に言語学の領域にある。しかし横断的言語学にとどまらず、古語からの視点もあり、日本語という言語を深く見つめている。
    はやりの「美しい日本語」「正しい日本語」といった表面的な日本語学では見えてこない日本語の姿を浮き彫りにしている。

    文庫で上下巻。

  • 時枝国語学を理解するのに最適。
    文庫で、深淵な世界の入り口に立てるのは手軽で便利。

    主体的立場と観察的立場の役割が要点だという理解で読み進んでいます。

  • 近代言語学の祖と呼ばれるソシュールの批判から出発して,日本語の構造に依りながら到達した言語観は現代の認知言語学や生成文法とも共通性を持つ.(2010:小林茂之先生推薦)

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著者プロフィール

1900-67年。国語学者。東京帝国大学卒業。京城帝国大学教授を経て、東京帝国大学教授。ヨーロッパの言語学に依拠した明治以降の国語学に抗して独自の考察を深め、「時枝文法」と称される体系を築いた。本書(「口語篇」1950年、「文語篇」1954年)は、その集大成である。他の主要な著作に、『国語学史』(1940年)、『国語学原論』(1941年)、『国語学原論 続篇』(1955年)など。

「2020年 『日本文法 口語篇・文語篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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