実存主義 (岩波新書 青版 456)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004120100

作品紹介・あらすじ

付: 文献一覧165-175p

感想・レビュー・書評

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  • 本文164ページのごく短い書物でありながら、哲学解説書ではなく哲学書と呼びうる重厚さを備えた本格派の新書。

    まず、1962年発行ということもあり文章が非常に格調高い。実存主義者らしいロマンチックでいて切実な言葉運びは、読み進めるには大変だがこれぞ思想、という趣を感じさせる。

    また内容の面でも、著者の評価や考えが積極的に表明され、ある種の「実存主義史観」が形作られている。実存を限られたエリートの特権と捉えるハイデガーを著者は批判し、実存をあらゆる人間の主体的な在り方と広く捉えるサルトルを称揚する。このあたりは教科書的な記述と異なって楽しく読めた。

    実存主義にはキリスト教的実存主義と無神論的実存主義の2分類があるというが、この両者の間に非常な隔たりがあることがわかった。
    キルケゴール、ハイデガー、ヤスパースなど前者に属する哲学者の思想は、乱暴に言えば、人間が存在する理由を問われて「神が人間を作ったから」と答えるようなものだろう。非クリスチャンの私には共感しがたい感覚だし、飲み込んだところではいそうですか、で終わってしまう。内に閉じた思想という印象で、あまり魅力的には映らなかった。
    一方の無神論的実存主義は、神すなわち根源的な究極の存在を否定する。むしろ人間は本来的に自由な存在であり、自分の選択に責任を持ちつつ積極的に「まだ見ぬ自分」への挑戦を続けるのが人生だと説く。こちらはむしろ、今日では手垢まみれのあまりに聴き慣れた言説になってしまっている。
    思うに実存主義は目新しい大発見という類いのものではなく、ギリシアの時代から何度となく繰り返されて来た終わりのない「人間とは何か」という議論の、比較的新しい潮流ぐらいに思っておくのが丁度いいのだろう。
    つまらなかったという訳ではないがあまりに穏当な結論で拍子抜けの気分。教養の道は険しい。

  • 読んだ理由は『ミュウツーの逆襲』を観たからだったと思う。
    実存主義についてなんとなくの枠組みは見えてきた。
    思っていた通り、神谷美恵子の著作は実存主義の理解なしでは精読できない。
    あとで読み返す。

  • 実存主義とはなんなのかということと実存主義者とされる思想家たちの思想を教えてくれる、ありがたい。人間は代替不能だ、死んだ人間を追って死ぬひとはあっても死んだ犬を追って死ぬひとはないだろうという記述には、著者の強い主張というよりは実存主義の人間中心主義から来るものであるにしても、かなりひいた。とはいえそういうものを批判した構造主義的な相対主義もなんだかなと思うし、実存主義のもつ切実さをどうにか取り入れて行けたらいいなと思う。

  • 哲学というジャンルは本当に難しい。
    冊数をこなさないと日本語であるはずなのに
    異国の言葉に見えてきます。
    まあ、実際にこの本にはドイツ語やらが
    散見されるわけですが。

    私というものをみつめる本。
    必然的に宗教も絡んできます。
    そう思うと、キリスト教というのは
    なぜあるんだろうとかなぜに人は秩序の中に
    埋もれるのだろうと疑問に思ってきます。

    それが哲学の始まりなのでしょうか。
    わかりませんがね。

    ある程度これらのジャンルを
    読みこなしていくと
    少し霧が晴れておや、と思えるかもしれません。

  • (1967.02.04読了)(1967.01.18購入)
    *解説目録より*
    実存主義とは、「事物の存在」とは異なる「人間存在」の特有のありかたをあくまでも守りぬこうとする思想的、文学的な動きをいう。本書は、この実存主義を育てた今日の思想的な状況と実存思想の歴史的な系譜について語り、ハイデガーやサルトルなどを紹介して、それぞれの思想の特徴を明らかにするとともに、実存、自由、状況、他者、不安、賭、価値、神など実存主義の諸問題について論ずる。

  • 実存は本質に先立つ。
    多くの実存主義者の書を用いて幅広く解説していた。
    存在、現存在、実存の違い。それに伴う意見の対立。
    中々興味深い。

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