続 名画を見る眼 (岩波新書 青版 E-65)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004140658

感想・レビュー・書評

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  •  私は絵を観るのが好きでよく美術館に出かけるのですが、正直言えば、絵の良さが本当にわかっているわけではありません。単に自分が好きな、あるいは自分好みの絵を見つけて、何となく満足した気分になって美術館をあとにする、という程度です。だから、美術館に滞在している時間も、かなり短い方だと思います。極端なことを言えば、好みの絵が見つからなければ、あっという間に通り過ぎて終わり、ということもあるくらいですから。

     そんな私でもこの本はとても読みやすくて、名画の世界にすんなり入っていくことができました。内容ももちろん素晴らしいのですが、何より筆者の語り口がとても自然で、1971年といささか古い本ですが、全く古くささを感じさせません。「本当に頭がいい人とは、難しいことを易しく説明できる人だ」とよく言いますが、本当に名画のことがわかっている人だからこそ、その絵の良さをやさしく説明することができるのだと思いました。

     名画はもちろん、例えば印象派とか、キュービズムとか、そうした当時の人たちの絵に対する考え方も、実にわかりやすく説明されています。素人の私には、写実的な絵の素晴らしさはわかっても、抽象的なものはどうしてもピンとこないものが多いのですが、この本を読むことで視点ができ、ずいぶんと解決するように思います。

     p.130に、ムンクの言葉が紹介されています。「芸術は自然の対立物である。芸術作品は、人間の内部からのみ生まれるものであって、それはとりもなおさず、人間の神経、心臓、頭脳、眼を通して現われて来た形象にほかならない。芸術とは、結晶への人間の衝動なのである。」とても重い言葉ですが、これぐらいの心持ちで、これからは絵画に接したいと思います。

     なお、続編から読んでしまったので、2年前に出ている『名画を見る眼』も読んでみようと思います。

  • 続編。モネ からモンドリアンまでの14作品。前編同様に非常に読み易い文章。後半はキュビスム(立体派)から抽象主義の画家が中心になる。現代絵画において抽象画は一つの主流であるがどうも理解し難い部分がある、ピカソは好きだが。本書を読んで少し抽象主義への流れが理解できた気がする。少し絵画を見る目が変わればいいなと思った。

  • 自分の知っている画家が多く書かれていたので、1に比べより読みやすかった。
    モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、ロートレック、ルソー、ムンク、マティス、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアン

    これを読んでいるときにオルセー美術館展にいったんで、それぞれの作品の見方が少し以前と変わった。
    全体をみて、細かい部分をみて、なぜこういう風に書いたんやろうかと考えるようになった。
    そういうきっかけを与えてくれた本である。

    また各作品の歴史的背景もかかれており、より興味がもてた。

    やっぱりその作品がどういった状況で書かれたものなのか、知っているのと知らないのでは印象が全く違う。

    また、再読したい一冊である。

  • 伝記、名品解説、特性特質、影響力などの各要素が多角的に働き合い、人間精神とその芸術が流麗な文章で描かれ、名画解読事典のような趣向になっている。また芸術理論を振り回すことなく、作品を眼の中で吟味し、何が描かれているのかを精確に読み、理解し、味わう点も本書の際立った特色である。書店に足を運べば、美術書コーナに立ち寄るようになり、専門書に手を伸ばし、怯むことなく学習を進められる。高階秀爾はそんな魔法めいた力を読んだ者の胸に吹き込む良き教師だと思う。名画を見て、自分を越えてゆくための模範と反省的に向かい合いたい。

  • 記録

  • モネ「パラソルをさす女」、ムンク「叫び」、モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」などの名画14枚を解説した本。印象派からキュビズム、抽象画にいたるまでの作品が取り上げられている。
    一見してわかりにくい作品が多いけれど、だからこそ知識を持って見ると、見方が変わって面白いと思った。

  • テンポ良く画家一人一人を解説しながら大局的に絵画の歴史を辿る。作品だけでなく、各章の末尾に画家のバックグラウンドも解説され、人間味も同時に感じさせてくれる構成は嬉しい。
    いやぁ、うっとりするまでに著者の言葉遣いが繊細。

    141pは鳥肌。

  • 前編よりも個人的には親しみがある印象派から抽象画がテーマになっていておもしろい。
    しかし古い本なので仕方ないとは言え、挿し絵の不明瞭さや白黒がどうしても気になってしまった。

  • 美術はそれ自体で心惹かれるものであるが、そこにはやはり、ひとの精神が息づいてゐる。
    長い時間の中で、ひとは見えたもの感じたものをどのやうにつくり上げていくか、挑み続けた。写真の代わりとしての意味合いがあつた時代もあれば、力の象徴としてブランド品として愛でられたこともあつた。それでも、ここに取り上げられた画家たちはただ自らの内で叫び続ける何かを描く、それを成し遂げた。それが彼らの人生であつた。取り上げられた作品は、さうした闘ひの中でのひとつの道しるべだ。
    絵を眺める。すると、ああきれいだなとか、これはなんだらうだつたり、かう見えたのだろうかだつたり、どうしてわざわざかう描かないとだつたのだらうかなど様々な印象が過ぎていく。さうした印象が絵のどういつたところから生じるのか、見つめなおす。
    それはたとえば幾何学的な構図や錯視の利用、どのやうな色調かといつた描き方の観点や、そこに何が描かれてゐるのかといつた図像学的な観点、どのような社会状況や人生であつたのかといふ歴史的な観点を重ね合わせる。
    絵をみてきた彼にとつては、絵を分析すること以上に、そこに描いたひとをみてゐるのだと感じられる。さうした表現に行き着き、現せるといふことが、絵画の天才が天才である所以ではないか。ピカソの絵に対して、こんなの小学生でも描けるといふが、それを他でもない描き、意図的にやつてのけるからこそ、ピカソがピカソたるものなのだ。
    名画を見る眼とは、解釈の仕方ではなく、名画に出会ひ、その奥で描いたひとと出会ふことだ。確かに抽象絵画など絵の前に立つて眺めた時、これは一体なんだ、と強烈な不可解さに落とされる。しかし、そのやうに感じられる心は時代を超えていつも連続してゐる。それなら、それからわからないと目を背け、拒絶をする前に、わかるだけの努力をしなければならない。絵の社会的な意味合いが過去のものとは変はつてきてゐる以上、絵画に対する人間的な理解とその努力が絵画を目の前にした自分自身に求められてゐる。

  • 有名どころをかいつまんで解説している入門書。「歴史的背景」は最初に構成されていた方がよかった。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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