南ヴェトナム戦争従軍記 (岩波新書 青版 548)

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著者 : 岡村昭彦
  • 岩波書店 (1965年1月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004150381

南ヴェトナム戦争従軍記 (岩波新書 青版 548)の感想・レビュー・書評

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  • 東京オリンピックに沸く日本。あの平和な時代に、単身南ヴェトナムの最前線へと向かった一人の男は何を思っていたのか。

    一章:アメリカに残した愛人とのやり取りに始まって、ベトナム最前線に辿り着く前に、ラオスにて太平洋戦争の日本人脱走兵と出会った岡村氏。愛人への未練を素直に打ち明ける人間らしい一面に親近感を覚えつつも、戦争が一人の男の人生を大きく本当に大きく変えてしまうことを再認識。東京のデスクへと向ける、彼の反骨精神にも共感。南ヴェトナム到着までの6ヶ月という期間に彼が得たものは大きい。

    二章:初めての従軍。政府軍に対峙するヴェトコン。南ヴェトナム戦争、前線の描写。

    三章:現在のホーチミン市を訪れると、つい40年ばかり前のサイゴンがこれ程まで緊迫した情勢に置かれていたとは、容易に信じ難い。岡村氏が当局に拘束され本部へと連行されそうになった際の、国際ジャーナリストたちによる救出劇は、まさに「弾圧の嵐」に立ち向かう報道陣らの様子を克明に描いている。難を逃れてバンコクへと一時避難するが、まもなく再び戦場へと赴く岡村氏。彼は決して恐いもの知らずなどではない。目を背けることなく、恐ろしさと向き合っているのだ。

    四章:クーデターによる、ゴー・ディン・ディエム政権の崩壊。その後の軍事革命委員会の記者会見でのやり取りがリアルに再現される。

    五章:南ヴェトナムとカンボジアの対比。ケネディ暗殺。

    六章:岡村氏の韓国滞在。アメリカ兵の手による理不尽な韓国青年の殺害に、悲しみ果てる親族。保護区域内で違法操業する日本漁船に怒る韓国漁民。

    七章:激烈な最前線での銃撃戦。政府軍の兵士による若い農民への拷問。人間を殺し、傷つけ、それでも飽き足らず非戦闘員まで拷問する。戦争が平和な世界をつくるなんてまっかな嘘だ。

    八章:特別部隊に従軍する岡村氏。根深いヴェトナム人と山岳民族の間の対立を利用して、ホー・チ・ミンルートの制圧を図るアメリカ軍。現実のホー・チ・ミンルートとは、単なる南ヴェトナム・ラオス・カンボジアを結ぶ秘密裏の援助ルートなどではない。長年フランス植民地支配の重圧を逃れようと共に必死に抵抗してきた、民族の団結に裏付けられているのだ。

    九章:知り合いのラジオ局のプロデューサーさんが、「大きな石を放り込むと大きな波紋が起きる。」と語っていた。まさにそれがマスコミだと思う。彼の投じた石の大きさは、本書の末尾に添えられた“無名のひとびと”の手紙を読むことで、ありありと伝わってくる。

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