モゴール族探検記 (岩波新書 青版 F-60)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004150602

感想・レビュー・書評

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  • またまた梅棹先生。50年ほど前に書かれた本。古本屋で見つけて買ってきました。いやあ、何冊読んでもおもしろい。その秘密はなんなんだろう。確かに、内容的にも、文章の書き方もとても分かりやすい。しかし、いまはずいぶん変わってしまったであろう国々の探検記を読んで何が楽しいんだろう。自分でも不思議だ。確かに、いまはどうなっているのかなあ、ということも知りたい気はする。しかし、50年前の、まだまだいろんな面で不便だった時期に、何も分からない、地図にも載っていないような場所へ、よくも行ったものだなあと、感心させられる。と同時に、そこに起こる予想外のドラマは、そんじょそこらの小説よりもよっぽどおもしろいのだ。自分ではとても行けそうにないところに連れて行ってもらえる、それが探検記・旅行記の魅力になっているのだろう。

  • モゴール族。
    聞きなじみのない民族名。
    アフガニスタンのモンゴル族のことを、現地の呼び方に従ってモゴール族とよんでいるそうだ。

    多民族が狭い地域で近接して暮らすということは、紛争のもとになる。
    著者はなるたけ中立な立場で、争いごとには巻き込まれないようにとしていても、味方につけたい陣営に取り込まれそうになったり、敵と思われ冷淡に扱われたりと、中立を保つのは難しいらしい。

    アフガニスタンではモゴール族は少数なので、彼らの住んでいる地域を探すのも難しかったが、モゴール語(アフガンなまりのモンゴル語)を話す人が、既にほとんどいなくなっていて、言葉の収集が本当に大変そうだった。
    言葉は生きているとよく言うけれど、話す人がいなくなってしまえば、言葉は簡単に失われてしまうのだ。
    かろうじて単語の意味は分かるけれど、文章は話せない人すら、ようやく探し当てたのだった。
    言葉、大切にしないとな。

    ”風景は目で見るだけのものではない。からだで感じるものだ。絵はがき写真がつまらないのは、一つには、それができないからだとおもう。”
    風景も大切にしないとな。

    著者たちはモゴール族内部の政治的対立に巻き込まれながらも、彼らの中で生活し、彼らの文化や宗教的儀式を記録してきた。
    私が読んだ本は昭和31年発行の岩波新書で、定価は100円。

    戦後割とすぐにこのような学術調査を行えたのかという驚きと、カバーが無くなっても図書館の本として貸出されているという事実に、戦いてしまった。

  • 2011-3-5

  • アフガニスタンの地にモンゴル民族と同根と見られる部族を訪問し、モゴール語を採集する記録です。失われつつある言語のモンゴル語との共通点を見つけた瞬間は感動的です。1950年代のアフガンは平和でのんびりした雰囲気できっと内戦が起こるまではそのような国だったのでしょう。地元のイスラム僧正(ムラ―)との「神を信じるか」との神学論争、また年齢に関するやりとり。(彼らは自分の生まれた年を知らないので、年齢を知らない。なぜ日本人は自分の年齢を知っているのか。「あなたがたは、年齢と言うものに、異常な関心を持っているに違いない」と驚かれるというくだりは思わず笑ってしまいました。

  • (1995.02.04読了)(1989.03.17購入)
    *解説目録より*
    世界の地理的探検が終わろうとしている現代の次の課題は人類学的探検である。本書は京大カラコルム・ヒンズークシ探検隊人類学班の記録である。
    13世紀初頭ジンギスカンが樹立したモンゴール帝国の版図は、遠く東欧から南ロシアにまで及んだ。その末裔とおぼしき蒙古族の一部がアフガニスタン奥地のどこかにいる――。この地図にも記録にも残されていない民族を探し求めて、遂にこれをつきとめ、その風習、言語を調査した貴重な記録。

    ☆梅棹忠夫さんの本(既読)
    「人間にとって科学とはなにか」湯川秀樹・梅棹忠夫著、中公新書、1967.05.
    「文明の生態史観」梅棹忠夫著、中公文庫、1974.09.10
    「サバンナの記録」梅棹忠夫著、朝日選書、1976.01.20
    「狩猟と遊牧の世界」梅棹忠夫著、講談社学術文庫、1976.06.30
    「情報の文明学」梅棹忠夫著、中公叢書、1988.06.10
    「情報論ノート」梅棹忠夫著、中公叢書、1989.03.20

  • 元々は1950年代の本なのですね。
    つい昨日の話であるかのような活き活きとした描写、次々とチームに降りかかる困難。真面目に大変で、下手をすると命にも関わるような旅程なのだけれどもどこかおかしみもあり、人々の強かさと善良さ、そのないまぜになった様子が、しみじみと「旅だなぁ」と思わせる。
    常識、なんてものは土地土地で覆るものですものね。
    アフガンの奥地にひっそりと生き残っていたモンゴル一族の末裔モゴール族、今現在はどうなってしまっているのだろうか。

  • [ 内容 ]
    十三世紀初頭ジンギスカンが樹立したモンゴール帝国の版図は、遠く東欧から南ロシアにまで及んだ。
    その末裔とおぼしき蒙古族の一部がアフガニスタン奥地のどこかにいる――。
    この地図にも記録にも残されていない民族を探し求めて、遂にこれをつきとめ、その風習、言語を調査した京大カラコルム・ヒンズークシ探検隊人類学班の貴重な記録。

    [ 目次 ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 研究のための旅行(探検)で、いろんな情報収集をして移動しながらも、行き当たりばったりのような経路になっている。だからこそ探検なんだろうなぁ。最後の方で、モゴール語を知っている老人に対して、日本語の例文を示し、「これをモゴール語で何というのか?」と聞き出そうとした時に、想定外の苦労があったという場面がある。この辺も面白い。

  • アフガニスタンに暮らしているという、モゴール族を探す探検の記録。「たくさんの荷物をもって遠い国からはるばるここまでやって来て、まだ目的地も、そこへ行く道すじもわからない。むちゃな話のようだが、探検とはそういうものである。よくわかっているのなら、探検なんかする必要はない。探検という仕事の、むつかしさもおもしろさも、もっぱらこの、「わからぬもの」を料理しなければならぬという点にある。」(p.7)モゴール族というのは、その地方にいるモンゴル系の人たち。いつごろアフガニスタンに来たのかとか、他のモンゴル系の人たちとどう違うのかとかの説明がもっと欲しかったな。モンゴル人はかつてユーラシア大陸のかなりの部分を支配し、そのあともインドにムガール帝国なんてのがあったわけだから、あの辺にモンゴル系の人がいても別に珍しくないのではと思えてしまう。もうちょっと、いかにモゴールが特異なのか、なぜモゴールにこだわるのかの意義とかももう少し。モゴール語がアルタイ諸語に属するっていうのが日本人にとってポイントだというのは分かるけど。「もっとも、日本民族の起源という難問題を解くためには、モンゴル系諸民族にかぎらず、日本周辺にいる諸民族を、かたっぱしから、地道に、根気よく研究してゆくほか道はない。その意味では、今後もわれわれは、手のとどくかぎり、アジアの諸民族の人類学的探検をつづけてゆかなければならないのだ。」(p.12)第十章「村の将来」で、滞在していたジルニーという村のこれまでと、これからを推理するのが面白い。そしてこれらの後半の章は、言語や文化が失われていってる様子が伝わってきて、なんとなくもの悲しい。最終章の短い期間の方が、村に滞在した一ヶ月間よりも成果が多かったっていう。世の中そんなもんなんかな。梅棹さんの文章は、意外とユーモアが多いんだな、と思った。笑いを誘う箇所がいくつもあった。次のものは特に面白いわけではないけど、「わたしは、わたし自身を、多分にアニミスティックな傾向をもった不熱心なる仏教徒、と規定している。」(p.109)これは僕も同じなので、使わせていただこう(笑)地図があればいいのにと読みながらずっと思っていたら、最後にあった! 最初に載せろよ〜

  • 意外にも一気読みしました。私が生まれる前の本だって、信じられない。異文化体験はいつでも刺激に満ちています。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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