- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004150671
感想・レビュー・書評
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山口昌男
1931-2013年。東京大学文学部国史学科卒業後、東京都立大学大学院で文化人類学を専攻。東京外国語大学、静岡県立大学、札幌大学の教授を歴任。「中心と周縁」「スケープゴート」「道化」などの概念を駆使して独自の文化理論を展開した。『天皇制の文化人類学』 『文化と両義性』 『文化の詩学(I・II)』 『知の遠近法』 『「挫折」の昭和史(上・下)』 『「敗者」の精神史(上・下)』 『いじめの記号論』 『道化の民俗学』 『内田魯庵山脈(上・下)』(以上岩波現代文庫)、『アフリカの神話的世界』 『知の旅への誘い』 『文化人類学への招待』(以上岩波新書、『知の旅』は共著)など著書多数。
話に幾分説明不足のところがあるが、ここで、アフリカの昔話は活字になることを前提として語られていないということを記憶にとどめておく必要があるであろう。全く音声として昔話は存在するのである。従って話の進行も、筋の説明ではなく、対話に重点が置かれている。何よりも先ず、語り手は、我々の文化の中で落語の占めている話術的要素を満足させなくてはならないのである。私も採集の過程でよく経験したのであるが、書き下してしまえば何のことはない、たあいもなければ筋の一貫性もない話が、語り手によって生き生きとさせられ、聴き手をまき込む場合が多い。日本では『ジャングル放浪記』という作品で知られる、ナイジェリアの深沢七郎ともいうべきアモス・トゥトゥオラも、全くそういった伝統から出て来た作家であることを知っておくのも無駄なことではないだろう。特に最近は神話分析の流行により、神話といえば、なめらかに話が整理されて記号を付されるのを待っているような愛想のよい素材であると誤解されかけているので、地の肌ざわりと高度の抽象作用の結果を混同しないためにこの点を確かめておくことは必要であるともいえる。
ジュクン王国の最大の祝祭は、プジェという叢林の中で三年毎に行われる祭りであった。この祭りに際しては、王は平常王宮のビエ・コで執行する儀礼を町の東方のプジェという場所で執行する。ところでこのプジェは本来ジュクンの古語で「月経小屋」という意味を持っている。ある古老が私に語ったところでは、「現在プジェのある場所は、かつて王の后たちが月の忌みのために月ごとに籠もった小屋のあった場所である」という伝承があった。これは極めて異常な、ただならぬことである。というのは、ジュクン族では世界観の二元性も介入して、男と女の空間・時間的距離は極めて大きい。その点が最も顕著にあらわれるのは、女の血の忌みに対する男の怖れである。血の忌みのかかった女性の作った食事を男は一切食べないし、血の忌みのかかった女性の通る通用路は、それとわかれば男は通らない。もちろんこれは意識されたイデオロギーであるから、それによって彼らの生活が徹底して束縛されるかというと、決してそのようなことはない。従って経水に対する穢れの観念は、イデオロギー的には徹底しているといってよかろう。
さて、アフリカ的なトリックスター特にエシュの叙述の過程で、読者はギリシャ神話に出てくる神ヘルメス(幸運・富裕の神。商売、盗み、競技の保護神であり、同時に旅人の保護神でもあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者:山口昌男(1931-2013、北海道美幌町、文化人類学)
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[ 内容 ]
アフリカ各地での実地調査をもとに、文化人類学の神話研究の成果をとり入れて描き出されたアフリカの神話的世界。
異なった地域の原住民に伝わる神話を比較・分析し、神話の「伝播」と「変身」、さらに、その「構造」を考察する。
原住民の世界を内側から理解することを通して、私たちの世界との関係、「第三世界」の真の意味を明らかにする。
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