女と自由と愛 (岩波新書 黄版 74)

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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004200741

感想・レビュー・書評

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  • 教会の経営する幼稚園に務めている女性に宛てた12通の書簡という形式で、女性と結婚、仕事、自由などの問題について語った本です。

    本書の議論は、思想のレヴェルではなく、処世術のレヴェルで展開されているように感じました。思想の自由を圧殺しないための処世術という言い方ができるかもしれません。とくに、著者の松田さんの結婚観が示されているところなどに、そうした印象を強く持ちました。

    本書の「思想」には、今日では時代にそぐわなくなったものも含まれているように思いますが、「女性の自由とは何か」を大上段に語るのではなく、本書が刊行された当時の、現実の社会のあり方を踏まえながら、なるべく自由を殺してしまわないような生き方を探っていくという姿勢には、現在でも学ぶべきことがあるかもしれません。

  • 今日、3冊の松田道雄先生の本が手元に届きました。
    タイトルが気になったので、まずは『女と自由と愛』を読んでいます。

    松田先生の言葉に触れるのはこれが初めてのことです。
    だから、どのような感触がするものか、楽しみにしていました。

    答えは、とても安心する、です。

    女の一生は、たぶん、随分と変化のあるものなのだろうなぁ、
    ということを思うようになったのは、20代になってからのことです。
    特に、社会に出て働くようになってからそう感じるようになりました。

    学生の頃は、家にいる母を見ても、同居している祖母を見ても、
    女性の一生について、なんてことは露とも考えませんでした。
    私の興味はいつも家の外のことでいっぱいで、
    自分が家庭の一員だという認識などなく、
    家の中で起きていることの問題解決法は
    すべて親や、またその親にあると思っていました。

    もちろん、小学生のときも、中学生のときも、
    親が離婚してね、という友達の寂しそうな横顔に触れたこともあります。
    でも、やっぱり、受けとめている自分は子どもの感覚ですから、
    子どもが子どもとして対応しているだけで、
    大人にはいろいろあるようだということはわかるような気がしても、
    同じような経験をしない限り、自分ごとのようにはけしてなれないのです。

    子どもの時代に苦労を強いられたわけではない私にとって、
    本当の色々な家庭のかたちに触れるようになったのは、
    先ほども言いましたが、社会に出てからのことです。
    同じ条件や環境のもとで一緒に働きながら、
    結婚している女性や独身の女性、
    子どものいる家庭やいない家庭、親との同居や別居など、
    田舎の狭い土地の中にも、女性には色々な生き方があるのだなと思ったものです。

    同じ土地で暮らしていても、自分が子どもであった頃の視点と
    社会に出て働く一人の女性になってからの視点では
    こんなにも違うものかと思います。

    今や住み慣れた土地を離れ、十三年が経ち、離婚も再婚もし、
    今は夫の家族と三世代の家族で暮らしている私が
    子ども時代に育った家庭を振り返れば、
    思い返せば返すほど、学ぶことの多い、
    素敵な家庭環境に生まれ育ったものだなぁ、と思います。

    母も今の私と同じ、父方の祖父、祖母との共同生活の中で
    私たち姉弟が生まれ、様々な変化に困惑しながらも、
    どうにかやってきたのだなぁということが、よくわかるからです。

    今日、読み始めた松田先生の本に、こんな文面がありました。

    結婚して家庭を持つことは、それ自信が人生の目的といったものでありません。
    しかしいまの社会に生きていくためには、いちばん気持を落ちつかせる生活の様式だと思うのです。
    (中略)
    気持が落ちつくということを、年齢のわかいときはあまり大事だと思わないものです。
    落ちつこうと思っても、なかなか気持が落ちついてくれないのが、わかい時代の特徴です。私も青年の時代はおこってばかりいました。

    この自然でやわらかいお声に触れたとき、私は心から安心しました。
    落ちつきました。

    やっぱり、そうなんだな、これでいいんだな、
    まだ自分の中でときどき揺れ出てくる若さゆえの怒りのような感情も、
    どこかに落ちつきたいという純粋な心からの欲求も、
    すべてはありのままのことに感じられたからです。

    アーティスト活動には、たしかに怒りは必要です。
    でも、地味ではあっても落ちつくことを多いに表現していくことを
    もっと、してもいいのだなと思えました。
    今の家庭に支えられているからこそ、落ちついて物事にあたることができ、仕事も、さまざまな私生活も、思うようにうまくいく。

    共同生活には、この地球上で、みんなが共に生きていく
    小さなヒントがたくさん含まれています。

    かといって、みなが家庭を持って、できれば何世代もが
    一緒になって暮らそうということを私は言いたいわけではありません。
    今、私たちが生きているこの時代は、先生が本をお書きになられた時代とは少し違った様相をもっています。
    家の中だけが家庭ではなく、趣味や仕事などで作られる
    数えきれないほどのコミュニティが、私たちの家庭になり得る時代です。
    みんなが家族になれる時代です。

    思ったよりも、家庭は、それはそれは大きな庭なのかも知れません。

    松田先生のお言葉にほんの少し、触れただけの今日ですが、
    想像していたとおり、先生に出会えて良かったです。
    まだまだ松田先生の授業は始まったばかり。
    寝不足に気をつけて、読書を楽しんでまいります。

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著者プロフィール

著者 松田道雄(まつだみちお) 1961年生まれ、生まれも育ちも今も山形県山形市 
中学教師(社会科)、着想家、社会教育家、ポリネーター(ワークショップほか企画作りの相談請負人)
1993年「壁画—ニット」プロジェクトで、ロレックス国際賞受賞 
●著書 『駄菓子屋楽校』(新評論、2002)
『だがしや楽校のススメ』(共著、創童舎 2003年8月発売)              『だがしや楽校を開こう』(仮)(共著、新評論)
 ※「だがしや楽校」は全国に広がりつつある
ラヂオ社会教育講座「天分楽校」 VigoFM78.8MHzHP:http://www.vigofm.co.jp/

「2003年 『天分カフェ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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