- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201434
感想・レビュー・書評
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元・茨城大学名誉教授 大江志乃夫(1928-2009)による近代軍事史における兵制の変遷と日本の徴兵制度の概説である。2013年3月にアンコール復刊。
【構成】
はじめに 現在の日本の徴兵制論
一 傭兵軍隊・国民軍隊・徴兵軍隊
1 傭兵軍隊から国民軍隊へ
2 国民軍隊から徴兵軍隊へ
3 帝国主義と軍隊
二 徴兵令
1 徴兵令の制定
2 徴兵逃れとその対策
3 徴兵制の確立
三 外征軍としての徴兵軍隊
1 外征戦争と徴兵軍隊
2 徴兵忌避・兵営内の暴力と差別
3 徴兵よけ祈願・弾丸よけ祈願
四 十五年戦争下の兵役
1 兵役法体制下の徴兵制
2 総動員戦争下の兵力動員
3 目的なき戦争と兵士
五 現代軍隊と徴兵制
1 国家と現代軍隊
2 日本の防衛力と徴兵制
3 民主主義と防衛問題
銃器の変化による歩兵隊形とその訓練に要する期間、戦略思想、君主から民主政権への主権者の交代と戦略的な要請によって歴史的に変化を重ねてきた軍隊における兵卒の編成。
その中で名では国民皆兵を謳いながら、その実は階級的差別的要素をもった運用がなされてきた近代日本の徴兵令。
西南戦争を最後として外征部隊へと変貌を遂げ、満洲事変以後の急激な動員計画の増大により、最終的には根こそぎの動員となったその様相を、現役・後備役・予備役の規定年限と免除される対象者、拡大された対象者の変化を切り口に整理する。
前半4章における議論の整理のされ方、語り口の切れ味は抜群である。最終章の政治的姿勢については好悪分かれるところがあるだろうが、それを除けば名著として推すことに疑問の余地はない。こういう著作をどんどん復刊してもらいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702477 -
小銃の発達が歩兵の有効性を高め、徴兵軍隊を生んだ。徴兵制の背景には技術的、戦略的な理由があるのだが、20世紀の徴兵制の背景には政治的な理由が見え隠れした。
欧米近代の戦史から書き起こして日本陸軍の徴兵を重点的に論じることで、民兵がない日本での徴兵が生んだ矛盾を露わにしている。
出典は不明だが「1970年のオランダ軍について、徴集兵の受け持つ軍隊の仕事の72%は初等教育以上の水準を必要とせず、大学卒業の水準にふさわしい仕事は2%しかない」ので、「国を守る気概」を維持できようか、という指摘は興味深い。
「現代の徴兵制とは、国家の強制力によって、軍務の名のもとに雑多な雑役に使役される強制労働従事者を安上がりに徴集する制度にほかならない。」 ちなみに1981年の本です。
ハーグ陸戦条約において、交戦者とは「公然と兵器を携帯している」民兵、義勇兵も該当するので、もしも「本土決戦」が行われていたら、手製の竹槍しか持たない国民義勇戦闘隊を交戦者として認めるかどうかでアメリカ軍の法務担当者を悩ませただろうという記述は、笑い事ではないですねー。 -
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