バナナと日本人: フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書 黄版 199)
- 岩波書店 (1982年8月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004201991
作品紹介・あらすじ
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。
感想・レビュー・書評
-
★2023年度貸出ランキング第16位★
【本学OPACへのリンク☟】
https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/188015詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古い本なのでデータも現状とは違っていると思いますが本が書かれた当時のフィリピンでのバナナ栽培の劣悪さに眩暈が起きそうでした。
バナナの産地では借金漬けにされた現地の人々と肥え太る米国資本があったのだと思うとスーパーでバナナを見ると複雑な気持ちになりそうです…。 -
「オンラインブックトーク紹介図書2021」
▼配架・貸出状況
https://opac.nittai.ac.jp/carinopaclink.htm?OAL=SB00540796 -
外国の大資本に地域経済の動きを支配されていると、交易量が増えれば増えるほど、末端で働く人々がどんどん貧しくなる。
植民地って、なんというか酷いとこだな。植民地だった過去はその地域の人達のせいではないけど。 -
1982年の本だが、今は中国がカンボジアで中国人向けのバナナ農園をつくって、中国向けのバナナをカンボジア人をつかってつくっている。歴史は繰り返している。
-
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702490 -
サプライチェーンが問題視される現在、考えさせられる一冊である。
どこで誰がどのように作ったかを消費者は考えないといけない。SDGsの12番responsible consumption and production 。 -
筆者は国連によるバナナ経済の調査研究に参加したとの由。フィリピン(ミンダナオ島)の話が主で、『怒りの葡萄』のような感じ。
-
だいぶ昔に書かれたものだけど、内容は歴史というか事実を追ったものなので、今読んでもそんなに変なことは書いてなかった。
当時学生だった私に教授たちがこぞって勧めてくれた本(周囲にも読んでいる人が多かった)。
当時でも出版時期からかなり年月が経っていたが、なるほどこれは確かに時期時代関係ないし、学生時代に読んでおけば学びに対するモチベーション爆上がりですな。ちょっと後悔。
陳腐な感想しか出てきませんが、ズル賢い輩はムナクソだし、庶民は賢くならなければならないなあ、と。
ゼロサムじゃなくてwin-winの世界ってくるのでしょうか。 -
著者が他に書いたものから、何となくフィールドワークに基づく社会学的なレポートかと思っていたのだが、戦前の日本の入植も含めた企業の歴史も含めて、土地制度から解き明かすかなり重厚な書物だった。
東南アジアの理解を深めるための一つの参照ケースとして。 -
私たちが食べるバナナがどこで作られているか考えたことはありますか?遠い地域の身近な話。
-
米政府が大企業と一体となって発展途上国に大規模投資し、現地民を搾取し借金漬けにしつつ大きな利益を上げてきたことは、「エコノミックヒットマン」で読んだが、この「バナナと日本人」を読んで、別の視点からそのからくりがよく理解できた。米企業には、自然とともに生きるとか、現地人を豊かにするといった考え方は全くなく、自分たちがいっそう豊かになることだけを追求してきた。こういった人種が、世界の秩序を乱してきたと言え、今のような金融不安で彼らが危機的状況となっても、同情する人は少ないであろう。
-
知らなかった、そんな陳腐な感想が最初に思い浮かんだ。フィリピンに住んでいたのに、ASEANで働くを推進しているのに、ミンダナオで麻やバナナを巡って多くの不幸が生まれていたなんて
-
20年以上前の卒論のネタ
-
読書HACKS! の原尻純一氏のお勧めで、手に取ってみる。「バナナと日本人」とは、何か象徴的な意味と思えば、そのままバナナの話。文章が凝っているとかではなく、そのままバナナの話。バナナ好きではなければ、バナナ本一冊って、しんどいと思うが何故推したんだ!的バナナの話。
まあ、バナナは好きだけどさ。。。 -
著者:鶴見良行(1926-1994)人類学者。
内容:プランテーションを経済学的に分析する。
バナナ生産と現地農家と流通販路を多国籍企業がどのように支配しているかを、著者の行なった現地での調査や各種の資料をもとに実証的に示している。また、安直なグローバル化・資本主義批判にも走っておらず、いたって冷静な本。
・『鶴見良行著作集』もある。
・鶴見俊輔は著者のいとこらしい。
【書誌情報】
著書:鶴見良行
通し番号:黄版 199
刊行日:1982/08/20
ISBN:9784004201991
版型:新書 並製 カバー
頁数:238
〈https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b267630.html〉
【簡易目次】
目次 [i-iii]
地図 [iv-v]
1 バナナはどこから?――知られざる日・米・比の構図 001
2 植民地ミンダナオで――土地を奪った者、奪われた者 027
3 ダバオ麻農園の姿――経営・労働・技術 057
4 バナナ農園の出発――多国籍企業進出の陰に 085
5 多国籍企業の戦略は?――フィリピン資本との結びつき方 109
6 契約農家の「見えざる鎖」――ふくらみ続ける借金 135
7 農園で働く人びと――フェンスの内側を見る 165
8 日本へ、そして食卓へ――流通ルートに何が起ったか 193
9 つくる人びとを思いながら――平等なつながりのために 215
あとがき(一九八二年六月 鶴見良行) [227-230]
バナナ Musa paradisiaca
アバカ麻 Musa textirio
【目次】
目次 [i-iii]
地図 [iv-v]
1 バナナはどこから?――知られざる日・米・比の構図 001
日露戦争の前年、台湾から
「これだけまけても買わねぇか」
台湾産からフィリピン産へ
植物としてのバナナ
刈り取られたバナナは…
人類最初の農業?
自らは食べない作物を栽培
なぜミンダナオか――四つの理由
麻からバナナへ――古川義三の予言
対日進出が始まるまで
一人ひとりの問題としての〈東南アジア〉
2 植民地ミンダナオで――土地を奪った者、奪われた者 027
少数民族、ムスリム、クリスチャン
ブキッドノン州に開かれた牧場
デルモンテのパイナップル農園
ダバオ日本人社会の始まり
バゴボ族らの住んでいた土地を…
頻発した米人、邦人の殺害
日本の資金と人間がどっと流入
帝国主義の影の下で
領事館・日本人会による自治
法網をくぐって農園拡大
土地論争に欠落するもの
3 ダバオ麻農園の姿――経営・労働・技術 057
「自営者」に委託する方式
麻という植物
自営者の暮しと労働
「動力ハゴタン」による生産力向上
軍艦のロープに、和紙や小間物に
麻農園のフィリピン人と日本人
経営と生産技術
サトウキビ農園のパキアオ制度
防波堤としての流刑地ダペコ
急増した北方からの開拓農民
日本軍占領とゲリラの抵抗
戦後、ダバオ麻農園は…
4 バナナ農園の出発――多国籍企業進出の陰に 085
ダバオ市の東北方に
一九六二年――神保信彦の報告
日比友好通商航海条約が凍結されて
ユナイテッド・ブランズ社とドール社の暗躍
民族派議員による暴露
ドール社のパイナップル農園づくり
「ミンダナオ全島を貸与する気か」
バナナを低コストで
四つの生産単位
賃貸契約と経営契約
箱詰め・輸送コストを抑えるために
5 多国籍企業の戦略は?――フィリピン資本との結びつき方 109
タデコ農園と結んだユナイテッド・ブランズ社
大地主フロイレンドの横顔
デルモンテ社と地場農園九社の契約
価格移転、融資制度
地場農園の命運――この一〇年
大財閥と手を組んだドール社
国際資本と地場資本が分かちがたく統合
南コタバト州へも進出
住友商事とダバオ・フルーツ
遅きに失した政策発表
一九七九年の割当て地拡大指令
6 契約農家の「見えざる鎖」――ふくらみ続ける借金 135
入植者たち
現金収入も魅力的だったが…
農家の借金はふくらむ一方
市場原理が働かず
借金の原因は生産性の低さに?
廃棄率と買上げ価格
借金という「見えざる鎖」
月収の九六%を引かれて
抗議か節約か
埠頭わきスラムの住人たち
コーヒーも外資に押さえられて
人びとの食事は…
買う自由、買わされることの残酷さ
ペディキュア紅を塗る少女たち
7 農園で働く人びと――フェンスの内側を見る 165
輸出は豊かさをもたらしたか
外からもちこまれた経済
耕作面積の半分は輸出作物
農園労働者の賃金
不安定な収入と身分
農園で、作業場で、港湾で
受刑者の労働条件
農園のなかに入る
こまかく分かれている仕事
自然のリズムが奪われて
農薬が空中散布されて
ざまざまな農薬
第三世界への有毒殺虫剤輸出は急増
私たちが安全であればよいのか
フェンスの内側と外側
さまざまな武装集団
8 日本へ、そして食卓へ――流通ルートに何が起ったか 193
輸入元から小売業者まで
「青もの」をむろで熟成させる
買い手が強気の契約
輸入価格を下回る浜値
生産は増えたが消費は減る
港から港までを国際資本が支配して
輸入問屋集団は解散
米系三社が激しく食い込むなかで
フィリピン・バナナの一九七〇年代
9 つくる人びとを思いながら――平等なつながりのために 215
バナナの多様な利用法
安くて栄養価が高ければよいのか
生産地ダバオ――麻からバナナへ
国際資本の支配が拡大して
生産者に思いをはせよ
あとがき(一九八二年六月 鶴見良行) [227-230] -
会社や地名などがゴロゴロ出てきて中盤以降はかなり読みづらかった。
-
安いものにはやっぱりそれなりに訳があるんだなあと
しかし難しい文というわけでもないのになぜかめちゃくちゃ読みづらかった。 -
フィリピンのバナナ農園の実態を通して、先進国の繁栄を支える虐げられた国という南北問題を浮き彫りにする。
1982年の作。最近はフィリピンも新興国の仲間入りをして、経済成長が続いている。かつての南の国々が成長する一方で先進国が停滞する。バナナ農園で苦労した農民たちも、これからは成長の恩恵に与れるのだろうか? -
常に青果コーナーに並ぶバナナの9割を生産しているフィリピン・ミンダナオ島。バナナという、たった1つの果物を通して世界全体を見るだけで、フィリピンに関わってきた日本やアメリカの歴史、多国籍企業の戦略、搾取する側とされる側、先進国と開発途上国との問題、そしてそれらが非常に複雑に絡み合っていることの深刻さが、客観的かつ詳細な記述を通して理解できる。学生時代に読んで衝撃を受け、社会や歴史を少し遠くから見つめていきたいと思ったきっかけとなった書である。
教育学部 M.O
越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000415090 -
(1991.12.06読了)(1991.05.08購入)
フィリピン農園と食卓のあいだ
(「BOOK」データベースより)
スーパーや八百屋の店頭に並ぶバナナの九割を生産するミンダナオ島。その大農園で何が起きているか。かつて王座にあった台湾、南米産に代わる比国産登場の裏で何が進行したのか。安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。 -
mixiコミュニティ「読書会◆アウトプット勉強会」内のトピック「BOOK BATON」にて、紹介されていた本。
日本人にとって、もっとも身近な果物の一つ、バナナを軸にして、日本と産地であるフィリピンの貿易史について書かれている本。
読んでみると、猛威を振るう多国籍企業と、支配、搾取、蹂躙されるフィリピン農業の実態が痛々しく描写されている。
最も、恐ろしいと思ったのは、以下の箇所。
「こうして、フィリピンと日本はつながった。だが、国家と国家ではなく国民と国民の関係として考えてみると、実際にバナナを作っているフィリピンの労働者と、これを食べている日本の消費者は分断されているといえないだろうか。私たち日本人のバナナへの関心が、『価格』や『栄養』や『安全性』にだけとどまっているのは、その端的な例である。」(p.223)
フェアトレードという考えがコーヒー等で近年では流行している。
バナナでも同じく、農家のことも思いやる取り組みが必要なのではないか。 -
コーヒーとかチョコとかiphoneと同じ
-
途中で断念。
-
今から30年以上前の本なので、内容は古臭いんだろうけど、ものすごく丹念に調べてるなーと感心した。
-
久々に再読した。
高校か大学の授業で「これ読め」と言われて読んだ記憶がある。なんとなく高校だったような気がする。
1982年の本なので、今と比べて時代背景も違うし問題意識も違うので昔話を読むようなものではある。
本書のテーマとしては、多国籍企業による発展途上国搾取の構図である。それも、もともとの地場産業を支配するということではなく、日本にバナナを輸出するという目的のもとにフィリピン政府に働きかけ不正に土地を確保し、地元農家を詐欺同然に騙して元々の米作などからバナナ生産に切り替えさせ、借金をさせて縛り付け搾取を続け、地元には金が落ちず上前は多国籍企業がはねるという。これは、地元の低賃金労働者を雇用してうんたらかんたらというレベルではなく、産業構造さえ自分たちの利益のために変えてしまうという徹底したやり方だ。
文章の端々からマルクス主義的な香りがするので、著者としては国際資本主義による搾取構造を抉り出してうんたらという趣旨なのであろう。その問題意識は現在では少しずれてしまうのだが、まぁ論旨は概ねその通りだなと感じる展開であった。
そして、思うのは「今のフィリピンとバナナはどうなったのか」だ。何か適切な本があれば読んでみたい。