- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004202356
作品紹介・あらすじ
皇帝の権威の象徴である龍や麒麟などの聖獣から孫悟空に至るまで、古代中国には数多くの妖怪が登場する。これらにこめられた様々の宇宙論的イメージは中国人のいかなる思考様式から生まれたのであろうか。著者は『山海経』を始めとする中国の文献や美術史学、文化人類学などの成果を駆使し、妖怪の「存在の論理」を読み解いていく。
感想・レビュー・書評
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『おもちゃ箱をひっくり返したかのような』妖怪本かと思い手に取ったら、こっちが思わずひっくり返りそうになっちまったい。
龍の文字から始まる前半は、正直難しく、所どころ読み飛ばした。
が、後半、『霊獣と魑魅魍魎』以降の話は、面白いうえに分かりやすい。
日をおいて、しっかりと読み直したい一冊となった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
妖怪事典のようなものと思いきや、学術的・学際的内容に居住まいを正してしまう。
龍は聖獣化されたことで、権力者に飼い馴らされたような印象だ。
動物文様にせよ植物文様にせよ、最初に動植物ありきではなく、人の HORROR VACUI(空白の恐怖)が生んだウネウネ・グルグル模様が蛇などのモチーフに触発されて発展したという指摘はうなずける。
「山海経」が書かれた頃には人面獣身の妖怪がはびこっていたのに、後世、とりわけ「西遊記」では獣面人身の妖怪ばかりになる理由が明かされる。西洋とは逆に、中国では「異類から人への変身譚が圧倒的に多い」ことが鍵か。
本書では沙悟浄=ヨウスコウカワイルカ説に肩入れしている。後続の著書ではヨウスコウアリゲーター説を採っていたように思う。 -
参考文献リスト充実。
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中国の「妖怪」―と言っても、いわゆる魑魅魍魎の類だけではなくて、「龍」「麒麟」「四神」などの比較的メジャーな神獣から論考を進めていく一冊。文献学にとどまらず、図像や文様の分析や他文化との比較と様々な角度から「妖怪」を腑分けしていく、その過程がとってもスリリング。
中国文明の美術品などの展示会は好きでよく見に行くけれど、デザインがダイナミックで面白いのは大抵秦代くらいまでのごく初期の文明で、それ以降だとよい意味でも悪い意味でも「デザイン化」してしまうなぁ、という印象は以前から抱いていた。そのことはこの筆者の言を借りれば「龍が飼いならされてしまった」ということなのだろうと思う。
個人的には、饕餮(とうてつ)文に関する考察が印象的だった。この太い線画の文様、ネイティブアメリカの人達が描く摸様に言われてみたらよく似てるわ。 -
ビュフォン
1、過剰による妖怪
2、欠如による妖怪
3、諸部分の転倒もしくは誤れる配置による妖怪
現実の形態や生態を超えて、観念に現前するものすなわちイメージを結ぶもの
聖性のシンボル、ファリック・シンボルとしての角
一角獣と処女。
龍について
逆鱗がある。ナーガ、増殖シンボル
ウロロボス、永遠性、循環性、アンドロギュヌス、宇宙卵。
殷代のトウテツ文、シンメトリーと渦巻文様。
渦巻文様
副葬壷に限られる。非日常の。エリアーデ。
渦巻から雷文、巴文、卍文そして龍文が。
虹と蛇、龍
両頭龍である虹が水飲みに天から降りてくる。アボリジニの虹蛇。
漢の武帝に飼いならされ王権シンボルへ
ドラゴン、ナーガ、ガンガー、メリュジーヌ、エキドナ、女禍など
人面鳥セイレーンからアラビアを通じたジュゴンから人魚へ
イメージの好奇心輸入輸出
魑魅魍魎の住む山
と
聖なる場としての山
東に青龍、木、青はひだり
西に白虎、金、白はみぎ
南に朱雀、火、赤はまえ
北に玄武、水、黒はうしろ
風水思想における理想の地形は著名な山水画の基本構図とほぼ一致する。北を見る。
蛇とキジが交わって生んだ卵が雷に遇い土中深く潜り2、3百年経て孵ったものが蜃である。この蜃が燕を食べ息を吐くと、空中に楼閣をつくりだす。すなわち、蜃気楼である。 -
日本人から見ると、中国の妖怪ってということかと知りたいから、本を読み始めた。筆者は中国の文物から言い始めた。中国人と妖怪の出逢いから文化のつながれまで孔子や鲁讯の口を借りて、中国の妖怪の発展などを書いた。その中に中国人はよくわかる女娲から龍にかけて書いた。妖怪の発展史を紹介する時も、「山海経」や「説問解字」や「管子」などを引用した。一応妖怪だけではなく、中国で有名な星宿なども書いている。更に近年中国で大きい反論した「野人人件」も書き、妖怪と人の结びを深めった。この本を読むと、自分も知らないことはいっぱい知ってきた。例えば、孔子はキリンの子どもであることとか、大地の主人は亀とか、玄武は亀と蛇の総合体などだ。一番びっくりしたことは筆者があとがきを書く時、私の地元「福建省」にいることだった。