外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

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  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784004203292

感想・レビュー・書評

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  • ただやみくもに外国語習得を開始するのではなく、戦略を立て、無駄のない努力をしたいところである。本書は、過去の自分の方法ではダメだったのだと気付かせてくれた。早速スマホで単語帳アプリをダウンロードし、1000語の暗記から始めている。また、友人にお金を払い、毎週一回一時間半の授業をしてもらうように依頼した。生涯をかけて、5カ国語を楽しめるようになるのが目標だ。

    以下、本書より抜粋。
    「言語の習得にぜひ必要なものはお金と時間であり、覚えなければ外国語が習得できない二つの項目は語彙と文法で、習得のための三つの大切な道具はよい教科書と、よい先生と、よい辞書ということになる。」

    「もし、辞書を引き引きその言語で書かれたテキストを読みたいというのであれば、二~三千語で足りる。ここまで覚えれば、その言語に関しては一応の”上がり”である。」

    「もし、あなたが学習しようとしている言語に語の頻度数を示す資料があったら、それは絶対に見る必要がある。」

    「外国語の習得に際して、語彙に関してはこれまであまり無視されていたので、もっと関心を持つ必要があり、語彙の習得にもっと計画的に時間をかけることが絶対に必要である。」

    「一冊の学習書の中の変化表を全部切り抜いてビッシリ貼り直すと、大体10頁内外になる。(言語により異なる)もし読者の方がモノにしようと思っている外国語の骨組みが、10頁を完璧にモノにすればできると分かれば、誰にでも勇気がわいてくるに違いない。」

    「先生は各人に小さなノートを用意させ、それを単語帳にする。毎時間の最初に、その時間で扱う文法事項の手短な説明があり、ごく少数の語彙が与えられてから授業が始まる。授業の圧倒的大部分の時間は、母語から外国語への翻訳にあてられる。まず語彙を覚えるための易しい短文が繰り返し当てられ、新出の語彙が覚えられたのが確認されると、その日の文法事項がその作文の中に組み込まれてくる。学生が単語でつっかえると、すぐ小さなノートにその単語を書き加えることを要求し、更に、その語が入ったいくつかの分を訳させる。そのノートの単語は学期が深まるについれて一人一人で違ってくるので、やがて学生を当てるとき一人一人からノートを提出させ、それを見ながら作文が要求される。」-ブラジミール・トグネル先生の授業方法

    「先生は授業の最初の日に葉書程度の大きさの紙に、氏名・専攻・住所・電話を書いて提出させ、これがその後の授業で重要な役割を果たした。まず出席をとって、欠席の人のカードを抜き、その裏面にその日付をつける。そして残りのカードをよく切り、裏返しにしてから、授業では順に当てていかれた。一巡するとよくカードを切り、学生に自分の順番を予測させないようにし、しかも皆が公平に当たるよう配慮して、質問の難易で学生にひいきのないように、裏にしたカードをめくるまで誰に当たるかわからないようにふせておき、そして質問に答えられない学生がいると、カードにどの変化ができなかったかを記入して、次の週には必ずそれを復習させるのである。」-ヨゼフ・クルツ先生の授業方法

    「繰り返しは忘却の特効薬である」

  • 【感想】
    別の本で佐藤優が称賛していたので購入。
    30年以上前に出版されたにも関わらず、非常に読みやすい本でした。
    まぁ30年も経って学習ツールは大きく変わったが、本質は今も昔も変わらないだろう。

    外国語の習得に必要なものは「目的と目標」「語彙」「文法」「学習書」「教師」「辞書」「発音」「会話」「文化や歴史」。
    とりわけ重要なのは「目的」で、次いで「語彙」と「発音」なのだろうと読んでいて思った。
    やっぱり、明確な必要性がないと切羽詰まって勉強しないから、なかなか習得できないでしょうねー。

    個人的に英語が必要不可欠な環境ではないし。今後そうなるかも明確ではない。
    習得するに越した事はないにしても、実践する場がなかったら時間と費用の無駄になりかねない。
    そもそも、こういった本を読んでいるだけでは画餅で終わるどころか、習得に大してそもそも高いハードルを感じてしまう・・・

    趣味程度で取り掛かるのは考えが甘すぎるのか?
    まぁ、そのあたりの費用対効果を考えた上で取り組もう。
    TOEIC高得点GETという目標を元に頑張ってみるか。


    【内容まとめ】
    1.「何故この外国語を習うのか」という意識が明白である事が絶対に必要である。
    外国語がモノにならない人は、目的意識の不足がその原因である。

    2.数多く外国語ができる人がいても、その中で読み書き話せると三拍子揃ってできる言語は1つか2つで、3つという人は少ない。

    3.覚えなければいけないのは、語彙と文法
    文法は骨と神経、語彙(単語)は血肉。
    血や肉がなければ、人間ではなく骸骨にすぎない。

    4.まず、よく使う千の単語を覚える。
    千の単語を覚えるのは、その言語を学ぶための入門許可証こようなものであり、これを手にしてようやく助走成功するようなものである。

    5.「発音」は、外国語を学ぶための重要な前提。
    外国人は文法上のミスのある文の方が、ひどい発音で話された文よりもむしろ理解ができる。


    【引用】
    外国語コンプレックスに悩む一学生は、どこようにして英・独・仏・チェコ語をはじめとする数々のことばをモノにしていったか。
    辞書・学習書の選び方、発音・語彙・会話の身につけ方、文法の面白さなど、習得のためのコツを著者の体験と達人達の知恵をちりばめて語る。


    ・目的と目標
    ・語彙
    ・文法
    ・学習書
    ・教師
    ・辞書
    ・発音
    ・会話
    ・文化や歴史


    p6
    才能の差は確かにある。
    しかし、ある言語を習得できるかどうかは、その習得の方法により多くの事が依存している。


    p20
    外国語を習うとき、なんでこの外国語を習うのかという意識が明白である事が絶対に必要である。
    外国語がモノにならない人は、目的意識の不足がその原因である。


    p26
    ごく稀にしか起こらないハイジャックのインタビューのために全スチュワーデスにその分野の応答ができるように英語教育するというのは全くと言っていいほど無駄である。
    人間の能力には限界があって、寿命も限られているのであるから、必要なだけの英語が出来ればよく、それで十分なのである。


    p29
    色々と数多く外国語ができる人がいても、その中で読み書き話せると三拍子揃ってできる言語は1つか2つで、3つという人は少ない。


    p38
    ・上達に必要なのは、お金と時間
    人間はそもそもケチなので、お金を払うとそれを無駄にすまいという気が起こり、その時間が無駄にならないようにと予習・復習をするものである。
    また、習得には繰り返しが必要なため、どうしても時間が必要になってくる。


    p41
    ・覚えなければいけないのは、語彙と文法
    まずは単語を覚えなければいけない。
    いい教科書、いい教師、いい辞書。

    文法は骨と神経、語彙(単語)は血肉。
    血や肉がなければ、人間ではなく骸骨にすぎない。

    単語を覚えるおいう作業は単純であり、ゴールがなく、面白くない。
    それにも関わらず、単語を覚えなくては習得に支障をきたす。
    この矛盾を解決しなければならないのが外国語の学習である。


    p51
    ・まず千の単語を覚える。
    千の単語を覚えるのは、その言語を学ぶための入門許可証こようなものであり、これを手にしてようやく助走成功するようなものである。
    この段階では、理屈なしにただ覚えるだけである。

    →まずは頻度の高い単語から。
    何年に一度しかお目にかからない語を覚えるなんて、記憶の負担になっても、得るところはほとんのない。


    p95
    ・語学書は薄くなければいけない。
    1冊読み終えればその言語が完璧に習得されるなんて本はない。
    また、ありあまる時間をすべて外国語習得にのみ捧げるというのも現実的ではない。
    従って、大きな本は駄目なのである。
    語学書は薄くなければならない。とりわけ、初歩の学習書はそうでなければならない。


    p108
    まず第一に、語学教師はその語学がよくできていなければならない。
    →語彙、文法、発音。知らない事ははっきりと「知らない」と明言できる。

    第二に、教え方が上手であるということ。
    限られた知識であっても、それを整然と教えられる人の方が役に立つ。

    第三は、教える事に対する熱意や、先生の個人的な魅力。
    この先生についていかないと損をするというような気持ちにさせる全人格。


    p144
    ・「発音」は、外国語を学ぶための重要な前提。
    外国人は文法上のミスのある文の方が、ひどい発音で話された文よりもむしろ理解ができる。


    p199
    ・繰り返しは忘却の特効薬
    外国語の習得は始めたら規則正しく、たとえ短い時間でも毎日することが大切。

  • 数えてみると購入してから今までに6回も読んでいるが、語学に関するエッセイでは最高の本。何度読み返しても新鮮でおもしろい。

  • 古い本なので辞書についてなど、内容が古い箇所もあるが、語学学習についての本なので現在でも問題なく通用する内容だった。
    特に最後の「レアリア」については大いに納得した。
    レアリアというのは、「現実的な知識や情報」のことである。それらを知らなければ、いくら語学が出来ても誤訳をしたり誤解をしたりし兼ねない。
    また、様々な知識(レアリア)の獲得が語学習得に有利だというのは、学生時代よりも記憶力は悪くなったけれど、レアリアが増えたおかげかある面では昔よりすんなりと英語を理解できるという実感を持っているので、目から鱗とともに大いに納得した。

  • 古い本だけどとても良かった!小手先のテクニックではなく、そもそもの心構えから文化・歴史を知らないと…といったことなど、外国語学習の根源が書かれている。進歩するのは「明確な学習意欲を持ち、学習の対象すなわちどの領域のことがどの程度できるようになればいいかが分かっている人」、上達するのに必要なのは「お金と時間」、覚えるのは「語彙と文法」。2年ほど英会話をやったが身にならず、他の書籍でも語学はコスパが悪いなどの評を見てぐらついていたが、本書を読んでキッパリあきらめがついた。語学は必要になったらやろう。

  • ラストの1/3がどうしても眠くなってしまって読み進められなかったので諦めました。
    最初の方の章では自分の経験や考え方とリンクするところがあって面白かったし、読みやすかったです。
    語学の勉強が好きなのですが、その一方で単語の暗記が生まれてこの方ずっと嫌いで、でも先生が作中でおっしゃっているようにそれをやらないことには語学はお話にならないので自分に鞭打ってボキャを増やしたいです。。はぁ。。

  • やみくもに語学を勉強せず、目的を持て。

    これが本書で最も大事な部分だと個人的には思う。

    何のためにその言語を学ぶのか?
    それが分からず勉強しているのは、弁護士を目指してるのに、保育士の専門学校に進学するみたいな話なわけで。

    語学に限らず、何事にも言えること。

    収穫としては、「音声学を学び、軽視しがちな語彙を重視し、惹きつけられる先生から学び、金を払え。学びはじめはまず1000語。そして何より継続。」といったところか。

    所々時代錯誤を感じる学習法は否めないが、版を重ねているだけある普遍的な内容だったなと思う。

  • <span style="color:#0033ff;">P38
     「先生、語学が上達するのに必要なものは何でしょうか」
     「それは2つ、お金と時間」

    P40
     「覚えなければいけないのは、たったの2つ。語彙と文法」

    P52
     まず、1000語を

     小説や詩を楽しみ、会話もでき、その言語で手紙も論文も書けるというようになるには最低4~5000の語が必要になり、その学習には3~4年は必要である。

    P56
     最初に1000語で平均60~70%の語がわかるようになり、
     (頻度数のデータはあった方がよい)

    P82
     黒枠に入っている変化表は覚えなければならない。
     一冊の学習所の中の変化表を全部切り抜いてびっしり貼り直すと、大体一〇頁内外になる。

    P91
     (著者の持つ学習書の名著は)両著とも、初めに少数の文法項目を習得し、その文法項目に関する例文をまず外国語から母語へ訳し、つぎに母語から習得中の外国語への作文をするようになっている。

    P115
     <b>単語と文法を少しづつ確実に</b>
     先生は各人に小さなノートを用意させ、それを単語帳にする。毎時間の最初に、その時間で扱う文法事項の手短な説明があり、ごく少数の語彙が与えられてから授業が始まる。授業の圧倒的大部分の時間は、母語から外国語への翻訳に充てられる。まず語彙を思えるためのやさしい短文が繰り返しあてられ、新出の語彙が覚えられたのが確認されると、その日の文法事項がその作文の中に組み込まれてくる。学生が単語でつっかえると、すぐ小さなノートにその単語を書きくわえることを要求し、さらに、その後が入ったいくつかの文を訳させる。そのノートの単語は学期が深まるにつれて一人一人で違ってくるので、やがて学生を当てるとき一人一人からノートを提出させ、それを見ながら作文が要求される。
     </span>

  • フランス語を学ぼうと思っているのでやる気がでた。春からも頑張りたい

  • 中学生や高校生に読んでもらいたい本。
    三単現のsより、なぜ語学を学んでいるか考えることが重要。その通りですよね。

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著者プロフィール

千野 栄一(ちの・えいいち):1932-2002年。東京大学言語学科、プラハ・カレル大学スラヴ語学科卒。東京教育大学助教授、東京外国語大学教授、和光大学教授・学長を歴任。主な編著書に『言語学大辞典』(全6巻、共編)『世界文字辞典』(共編)『言語学の散歩』『プラハの古本屋』『外国語上達法』、主な訳書にチャペック『ロボット』、クンデラ『存在の耐えられない軽さ』などがある。

「2022年 『言語学を学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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