- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004300137
作品紹介・あらすじ
1853年7月、巨大な黒船四隻が浦賀沖に現れた。噂は日本国中をかけめぐり、幕藩体制は大きな動揺をきたす。ペリー来航は日本社会にどのような衝撃を与えたのか、戦争に至らずに条約が結ばれた背景は何なのか。日本近代の開始を「異変」という概念でとらえ、開国へ向けての日米の情報の流れを解明し、幕末社会が変容する姿を描く。
感想・レビュー・書評
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新書文庫
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1853年7月、巨大な黒船4隻が浦賀沖に現れた。
噂は日本国中をかけめぐり、幕藩体制は大きな動揺を
きたす。ペリー来航は日本社会にどのような衝撃を与
えたのか、戦争に至らずに条約が結ばれた背景は何な
のか。日本近代の開始を「異変」という概念でとらえ、
開国に向けての日本の情報の流れを解明し、幕末社会
が変容する姿を描く。(1988年の刊)
1章 黒船来る
2章 日米の情報比較
3章 ペリー派遣と黒船
4章 幕府の対応
5章 新たな情報収集
6章 黒船見物と市中取締
7章 条約交渉の展開
8章 日米和親条約なる
9章 黒船異変とは何か
本書は黒船来航から日米和親条約締結までの日米交渉を
描いた本である。
「太平の眠りをさます上喜撰たったたった4杯で夜も眠
れず」という狂歌は、幕府がオランダからの事前情報を
活かせず右往左往する様を描いたものとして有名である
が、本書を読むと、限られた条件の中で最善の努力をお
こなっており「幕府無能説」にほとんど根拠が無いこと
がわかる。
幕末の開明派官僚というと川路聖謨や岩瀬忠震が思い浮
かぶが、本書では林大学頭、井戸覚弘、鵜殿長鋭、伊沢
政義などマイナーな人たちが頑張っている。
(昌平學関係者であるという共通点があり、突出した天
才がいたとい事では無く、幕府の官僚が全体的に優秀で
あったという事がわかる。)
先に2004年刊の「幕末外交と開国(ちくま新書)」
を読んでいたため、新鮮な驚きは少なかったが、この本
を刊行時に読んでいたらと思うと残念な気がする。 -
エピローグに展開される「幕府無能説には、ほとんど根拠がない」とする主張に納得。
幕府の交渉にあたった人たちの教養・国際情勢の認識の正しさなど、ものすごくおもしろかった。 -
エピローグ以外には特には面白い視点はないかな。日本人の黒船に対する好奇の目は印象的ですが。
そのエピローグは大変興味深かった。古い本で有りながら現在の国際人権との違いを作者が意識し理解している点に驚いた。
エピローグに展開される「幕府無能説には、ほとんど根拠がない」とする主張、その通りだと思う。
少し本から離れるが、幕末時の国際関係において個人は存在せず、あるのは国家だけである。また、不平等条約とは言っても、その時代の国際関係というのは耶蘇教を母体とする同レベルの近代文化を持った国々が作った国際法によるものであり、それ以外の文化を持つ国はその耶蘇教を基盤とする近代国家のレベルにあわせなければ同等となりえないのである。それをすっとばして不平等条約と言うのは、確かに不利を押しつけられた国としては矛盾する主張ではないが、歴史的時代背景的に無理を言えという感を持って当然である。‥‥小学校の頃に習った概念がどんどん嘘になっていくな。歴史は生物だとよく思います。
さて本に戻ると、黒船が発砲しないことがわかると市民的にも「恐怖」から「好奇」へ変化するという記述も納得します。
また中華思想からの急速な脱却、欧米型への転換に際する爆発的エネルギーなどなるほどと膝を打ちたくなります。すごいなあ。
引用は幕府が条約締結に付随して取った措置の一つです。