日本語と外国語 (岩波新書 新赤版 101)

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  • / ISBN・EAN: 9784004301011

感想・レビュー・書評

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  • それぞれの国で関心がある分野のことは
    語彙が増えると読んだことがあります。
    農業が盛んだった国では
    気象に関する言葉が多かったりするように。
    ある言語で、ひとつにしか結びつかない語が
    別の言語ではいろいろな意味を含むとしたら
    そこに「齟齬」が生じることもある。
    うわ〜。翻訳が大変な仕事だってよくわかるなぁ。

    この本でも、そういう語彙のことや
    ひとつの言葉が与えるイメージも
    国や時代によって変わってしまうという話
    (太陽が赤くない国、虹が六色でも気にしない人)
    カタカナ英語が氾濫する事情など
    言語学習のためというより
    国際社会で外国語を使うための予備知識が
    たくさん載っている感じがします。

    後半は漢字の利便性のような言語学的な話もあり。
    1990年の新書ですが、今読んでもおもしろかった。

  •  岩波新書のなかでもロングセラーの一つ。
     読者はいつのまにか言語への関心が駆り立てられるので、『ことばと国家』級の浸透力がある。
     昨年、鈴木孝夫先生の伝記を読んだので、この本を読み返した。

     そういえば、「orange が日本で云う茶色に当たることもある」という話題が出てきた。
     ここを読んで私が思い出したのは、『ハリー・ポッター』(日本語訳version)に登場する〈オレンジ色の猫〉。本書を読んだあとに思い返すと、あれって、〈茶色の猫〉とする方が、日本語圏の年少読者にとっては自然なのでは……。


    【書誌情報+内容紹介】
    著者:鈴木孝夫
    本体860円+税
    通し番号:新赤版 11
    刊行日:1990/01/22
    ISBN:9784004301011
    版型:新書 並製 カバー

    辞書を頼りに小説や文献を読んでいるだけでは,他国や他民族の理解は難しいのではないか.六色の虹,黄色い太陽,恥部としての足など,興味深い例をあげながら,国による文化の違いを語るとともに,漢字の知られざる働きに光を当てて日本語の長所をも浮き彫りにする.真の国際理解を進める上で必読の,ことばについてのユニークな考察.
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b267920.html


    ※一頁以上の大きな図・表は、この目次に反映させています。

    【目次】
    カラー口絵 
    目次 [i-iii]

    第一章 ことばで世界をどう捉えるか 001
    序論――ことばによる環境認識 002
      ことばの伝達機能
      ことばの叙述機能
      赤い太陽 白い太陽
      靴と長靴
      自覚されぬ認識法の違い
      本書の構成
      教養主義的な効用
    一 orange はオレンジとは限らない 008
      茶色の車
      色見本を回覧して
      私の誤解
      「オレンジ色の猫」
      明るい茶色
      不可解な翻訳
      柿の実の色
      金魚の色
    二 フランス人は黄色の封筒が好き? 017
      《黄色い封筒》
      《黄色い靴》
      明るい茶色
      《黄色い》封筒は茶封筒
      本当に黄色か  
    三 色彩語の二つの用法 022
      日常言語の使われ方
      鯨は魚か
      弁別的用法と専門的用法
      赤砂糖は「茶色」
      基本色と専門色
    四 緑のリンゴ 028
      リンゴは赤
      リンゴは緑
      英語のリンゴ
      ドイツ語のリンゴ
      ロシア語のリンゴ
    五 comme une pomme(リンゴのような) 032
      色も形も
      丸い頬
      国語辞典から日本語辞典へ
      色は決めかねる
      赤とも結びつく
    六 太陽と月 038
      赤い太陽、黄色い太陽
      仏語・独語と露語
      ある宇宙物理学者の体験
      自然科学と人文・社会科学
      自覚と検証
      人の育った文化的背景
      文化を知らなければ…
      無視できない摩擦
      アラブ人と太陽
      月こそ美
    七 蝶と蛾 049
      「パピヨン」を見た驚き
      ドイツ語の場合
      ゲーテの詩
      ロシア語の蝶と蛾
      混乱の原因
    注 055

    第二章 虹は七色か 059
    一 世界認識の反映としての言語 060
      アメリカでは虹は六色
      世界共通語があれば…
      伸縮自在の構造
    二 英語の辞書・事典の中の虹 063
      日本語の虹
      文化人類学では
      英和辞典の虹
      英英辞典の虹
      [表1 英英辞典にみる‘rainbow’の語義] [069]
      百科事典は七色
    三 文学・童話・絵本の虹 071
      辞書のつくられ方
      英国の小説
      翻訳の段階で
      虹のすべて
      絵本など
    四 学校教育での虹 076
      科学教育では
      虹の色の記憶法
      直接質問してみると
      六色と七色
    五 フランス語・ドイツ語・ロシア語の虹 080
      フランス語の虹
      ドイツ語の虹
      ロシア語の虹
      六色の虹の切手
      ロシア語の辞典では
      ロシア人の暗記法
      なぜ七か
    六 科学者の虹、民衆の虹 091
      西洋古典語の虹
      七色はニュートンから?
      『光学』が出発点に
      科学の分野と民衆のレベル
      非西欧圏の虹
      トルコ語辞典では
      伝統文化の崩壊
    注 102

    第三章 日本人はイギリスを理解しているか 105
    一 文献依存の外国文化研究はなぜ生まれたのか 106
      日本人の孤立感
      文献万能主義
    二 国際交流の第一歩は何か 109
      国際化の時代
      イスラム教徒を招く時
      英語教育の目標
    三 英国人が絶対に食べないもの 111
      馬肉
      犬の肉
    四 運動会の賞品は現金 113
      日本とよく似ているが
      異文化の認識
    五 足は恥部の一つ 115
      靴屋に靴ベラがない!
      靴を脱ぎたがる日本人
      靴ベラの利用
      一日中脱がない英国人
      素足は恥部
      中国人と足
      文化の刻印
      問題意識が必要
    注 123

    第四章 漢字の知られざる働き(1)――音読みと訓読みの関係 127
    一 意味論的透明性と不透明性 128
      難しい単語
      日英両語の高級語彙
      聴いて分からなくても
      透明性と不透明性
      音読みと訓読み
    二 高級語彙と基本語彙の関係 135
      「水頭症」と「無影灯」
      英語の高級語彙の難しさ
      漢字の音と訓
    三 概念の二重音声化と表記の双面性 140
      二重音声化と双面性
      一般論と例外
    四 日本の漢字の双面神的二面性 143
      古代ローマのヤーヌス神
      漢字のヤーヌス的双面性
      錨と鎖
      英語・仏語の二重読み
      日本語の利点の理解を
      高級語彙の作りやすさ
      [表7 基本概念を表わす漢字とそれに対応する英語] [151-156]
    五 概念表記の不変・恒常性 157
      漢和辞典の部首索引
      意味領域の表示
      表記に《血》のある語彙
      英語の場合
      [表8 血に関する英語の高級語彙] [161]
    注 162

    第五章 漢字の知られざる働き(2)――視覚的弁別要素の必要性 165
    一 貧弱な音韻・音節構造を補う 166
      変わりにくい音声構造
      漢字の助け
      音素の数と単語の長さ
      語の長さと使用頻度
      「メ」「ハ」「ネ」…
      もう一つの理由
      子音+母音
      英語・ドイツ語の場合
      [表9 単音節の構造] [173-174]
    二 抽象的な意味構造を補う 176
      漢字のもつ個別具体性
      ドイツ語とフランス語
      帽子も手袋も靴も
      「時計」の場合
      英語と日本語
      「なく」という動詞
      「なる」の場合
      「かたい」
      表現の長さ
      [表10 英語の基本語の個別具体性を示す例] [186-191]
      同訓漢字の存在意義
    三 視覚利用の日本語にとっての必然性と利点 194
      漢字の知識がないと…
      耳と目の能力の差
      テレビ型言語
      同音衝突の原理
      同音語と漢字
      日本語の中の漢字
      国際化時代
    四 カナ書き外来語の評価 204
      外来語の氾濫
      草花の名とイメージ
      [表11 カタカナ表記の植物名] [206-207]
      日本語の植物名
      なぜデルフィニューム?
      厚生大臣の驚き
      当用漢字から常用漢字へ
      読めば理解できるか
      カタカナ語洪水の素地
      英語教育が普及して
      漢字制限の狙いと帰結
      縮約現象で符諜化
      さまざまな「コン」
    五 言語干渉による日本語の変容 222
      日本語はダサい?
      雑誌の名前
      [表13 英語名をもつ雑誌・定期刊行物の例] [224-225]
      音響機器の英語表示
      「日本語だと泥臭い」
      英語使用の理由
      タバコの名前
      自動車の名前
      自動車の部分名称
      日本語名の自動車
      日本人の心理
      揺れ戻し現象もあるが
    注 236

    あとがき(平成元年十二月 鈴木孝夫) [241-242]

  • その言葉が意味する範囲は、言語によって違う。
    例えば、「赤」でもどこからどこまで「赤」なのか。「赤」に対するイメージなど。
    辞書に載っていないことも多い。

    漢字の話が出てきたが、今でいうバーコード(英語やひらがな)とQRコード(漢字)の違いかなと思った。
    英語教育が普及しているので、外来語はカタカナにしないで、その国の言葉で綴るようにすればいいのかな。和製英語はカタカナで。

  • 2023年度【国際学部】入学前知トラ「課題図書」推薦作品

    OPAC(附属図書館蔵書検索)リンク
    https://opac.lib.hiroshima-cu.ac.jp/opac/volume/81824?locale=ja&target=l

  • 初版1990年?如何せん古すぎる。海外のステレオタイプを述べてる部分も現代では差別的にすら映る。

  • 読みやすいかったし、外国語の端々に出てくる外国文化、認識の違いが面白かった。
    言語に関心のある人ならば一度読むといいと思う。

  •  日本語を扱う人、必読の書。「漢字を駆使できるとカッコいいですよね」と話していたら、文章の達人から薦められたものです。Amazonのポイントはイマイチなのですが、個人的には★5つ。

     前半は、外国と日本との文化やものごとの捉え方の違いなどで、目からウロコが取れまくりです。海外との色の定義の違い、虹は七色か、イギリス人はなぜ靴を脱がないのか、難しい英語の表記はなぜそうなるのかなど「トリビアの泉」状態です(ついでながら、イスラム教の国旗に「月」が多い理由もわかりました)。さらに後半の「漢字の知られざる働き(1)(2)」は圧巻です。「日本語はテレビ型(聴覚と視覚を駆使)、英語はラジオ型(聴覚のみを使用)」という説明の箇所では、読みながら唸ってしまいました。

     1990年初版でもう店頭にはないかもしれませんが、図書館で借りられますので、ご興味のある方は是非読んでみていただければと思います。

  • 一体この文章は誰に向けて何のために書かれたものだろう。あまりに当たり前のことが延々と続く。そもそも外国語を学ぶのは、外国文化を学ぶ手段を獲得するためであり、外国語学習イコール外国文化学習ではない。英語を学ぶことと、イギリス文化を学ぶことは全く別物である。問題の立て方がずれているように思う。
    この本が書かれたのは1989年とのことだが、当時はこういう認識だったのかしらん。口絵の『茶色』も自分にはオレンジ色に見える。時代とともに色の見え方が変わるのかも。虹が英語圏で6色なのも常識だと思ってたから、ドヤ顔で解説しているのも不思議に感じた。

  • 英語のorangeは「オレンジ色」で日本人がイメージするのと同じ色とは限らない。「黄色の封筒」や「赤靴」も黄色、赤とは限らない。
    色の名前が持つ弁別的な用法、つまり「他のに比べて赤っぽい」から「赤」と呼ぶ、その物ズバリを表現しないこともある。
    りんご、太陽に対する文化的なイメージの差。また、「フランスではリンゴはこう」「英語では虹は◯色」と言い切ることも難しい。

    日本語が持つ多数の同音異義語。
    音声的に「ん」を除き、すべて「子音・母音」の組み合わせしか許容しない。だから、作れる言葉の種類が限られる。また、日常語は短くなる傾向があるので、ただただ長い語を作っていろんな種類の単語ができました、というわけにもいかない。
    日本語の動詞の抽象度の高さ。「なく」「鳴る」など。

    日本語は、漢字(視覚)情報も込みで成立している。筆者の言う「テレビ言語」
    確かに会話でも「それどういう漢字?」と尋ねることは多い。

    英語は「ラジオ言語」。音声のみでほぼ成立する。単に「言語学的には…」と言っても、ヨーロッパ言語を前提として発展した言語学に日本語を当てはめることは注意を要する。

    yellowが黄色だ、と覚えたところですべて理解できるとは限らない。自分にとって太陽は恵みだから誰にとってもそうだ、と思うとアラビア文化ではそうではない。
    トリビア的にも面白いが、自分の理解と相手の理解が同じか?自分に対して、言葉がどんな影響を与えているか?「絶対こうだ!」と言い切らず、謙虚であり、微妙な差異や違和感に気づくモニター力が必要。

  • 学生時代

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著者プロフィール

1943年岩手県生まれ。三菱系エレベーター会社を経て1967年に独立創業し、鈴木エレベーター工業(現在のSECエレベーター)を1970年に設立。独立系エレベーター保守会社という新しい業態を日本に誕生させる。エレベーターの構造を知り尽くす「技術屋」で、ビジネスの面でもエレベーター業界の風雲児として活躍する。

「2017年 『技術屋が語るユーザーとオーナーのためのエレベーター読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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